第3話 雑貨店での出会い
こんな所に雑貨店があるなんて初めて知った。わたしは髪を触り気分を落ち着かせる。それでも入るか迷っていた。わたしは窓に近づいてみた。中を見るとハートでピンクの髪飾りが見えた。
綺麗……。
わたしは勇気を出して雑貨店に入るのであった。
そして、雑貨店のドアをそーと開ける。 一歩、店の中に入るとそこは別世界であった。
わたしは奥に進むと店内にはブレスレット、ビアス、小物入れ、マグカップなどが置かれていた。 窓から見えたハートでピンク色の髪飾りもあった。
わたしが手に触れようとした瞬間に店の奥から声が聞こえる。
「それは本物のサンゴを加工して手作りで作った物だよ」
少し驚いたが優しい声なので直ぐに落ち着くのであった。白髪混じりの身長の低い初老のおばあさんがこちらにやってくる。 わたしは迷ったが勇気を出して素直な言葉を発すしてみる。
「髪に着けてもいいですか?」
「えぇ、もちろん」
わたしは慎重に髪飾りを手にすると前髪の左側に着けてみる。 近くに置いてある小さな鏡で自分の姿を確認する。 それはなんの取柄もないわたしが特別な存在になった気がした。 Gノートでは得られない特別な気持ちであった。
「お嬢さん、その髪飾りは本物のサンゴでできているから、お小遣いではキツイよ」
あぁ……。
物語の主人公になった気分から現実に引き戻された感じだ。 髪飾りを着けた胸がドキドキから、お金と言う現実をまの当たりされたのであった。
わたしはしょんぼりして髪飾りを外して静かに置く。 おばさんは笑顔で引き出しから何か取り出す。
「このハートはどうだい?」
小物入れからピンクのハートを見せてくれた。
「これは?」
「プラスチックが材料のハートさ、これを加工して髪飾りが作れるよ」
「つまり、わたしのお小遣いで買えるのね」
おばあさんはゆっくりと頷きわたしに笑顔を見せる。
「手作りだから、それでも安くはないけれどね」
なんだろう?また、胸がドキドキする。それは初めての気分であった。 わたしは再びサンゴのハートの髪飾りを手にする。
「おばあさん、わたしが大人になるまでこのサンゴの髪飾りも予約していい?」
ダメもとであったが、やはりサンゴの髪飾りが欲しい。
「もちろんさ、きっと今、以上に似合うよ」
笑顔のおばあさんはゆっくりとサンゴの髪飾り小箱にしまうのであった。
「これで予約済だよ」
「ありがとう、わたしこのお店の事が大好きになったよ」
その言葉に反応して、おばあさんは店のテーブルの上に手を伸ばすと小さな小箱を見せてくれる。
「ありがとうよ、これはおまけだよ」
それはオルゴールであった。 おばあさんはオルゴールのネジを巻くと音が流れ初める。
「カーペンターズですね」
「おや、カーペンターズを知っているのかい?」
おばあさんはとても驚いた表情をする。
「はい、母が子供の頃から料理しながらGノートから流していました」
「何がきっかけでカーペンターズを知ったか分かるかい?」
「ええ、ラジオから流れいた曲でカーペンターズを知ったそうです」
すると、おばあさんは鳴り終わるオルゴールを包みに入れて笑顔でわたしに手渡すのであった。
「きっと、このオルゴールも相応しい持ち主に出会えて幸せだろうね」
「はい」
わたしは凛とした返事を返すのであった。
それから、プラスチックの髪飾りの代金を払うと『数日後』と書かれた紙を渡される。わたしは胸が踊り店の外に飛び出して走りながら美容院に向かう。
わたしは風を感じていた。 Gノートが無くても今日という日が特別であった。
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