第2話 エッチな小説

自宅に着くと鍵を開けて中に入る。


「ただいま」


 玄関で簡単な言葉を言うが反応は無い、奥に母親の気配があったので問題無く入るのであった。そして、わたしは足早に自室に戻るとベッドに座り缶コーヒーを机の上に置くと、早速、借りてきた『突然のラブストーリー』を開く。


 最初のシーンは主人公の家の庭に隕石の様に死神兼天使のミーサが落ちてくるのであった。


『わたしはミーサといいます、あなたの命は死神の扱いですか?それとも天使としてご主人様としてお仕えする存在ですか?』


 なんだ、この両極端な設定は……。


 ミーサは紅い瞳に学校の制服を青いエナメル質にした様な格好であった。

大きなバストにミニスカートの格好は男性向けである。そして、主人公が大きなバストのミーサに照れるシーンなど、読んでいるこちらが赤くなり。簡単な風でミニスカートがめくれるシーンなど典型的なラッキースケベである。


『簡単な事の様ですね、ご主人様は天使としてお仕えするのがお望みとの判断をしました』


ほーっと感心しながら続きを読む。


「歌葉、ご飯よ……」


 下から母親の声がする。わたしは下に向かう為に本に紙を挟んでみる。しおりなどと言う物は無く、この前作った眼鏡の案内紙であった。


「歌葉!」


 母親の機嫌が悪い、Gノートを壊して連絡がつかないからか……。


 わたしは渋々、下に降りていく。


「さっき、メッセージを送ったけど返事がないのは何故ですか?」


 やはりそうだ、Gノートで返事を返さなかったから怒っているらしい。廃人ゲームにも疲れ果てていたのもあるが、さらに母親の相手をしなければならないのはキツイの一言であった。


 仕方ないので素直に壊したと言う事にした。


「あぁ、Gノートを壊してしまって……」

「なら、明日にでもショップに行きなさい」


 完全に母親はご機嫌ななめだ。


 わたしはGノートを蹴り壊すほどストレスが溜まっていたのに、そんなわたしの事は関係なくGノートを買い替えろと強く言われてしまうのであった。


わたしは少し迷ったが首を横に振るのであった。


「しばらく、Gノートなしの生活がしたい……」


 母親は困ったように「学校の授業はどうするの?」と怒るのであった。


「出席だけするわ」


 開き直ったわたしに母親は眉間にしわをよせて不機嫌そうにする。


「バスも電車も乗らないつもり?」

「わたし、読書がしたい」


 わたしの読書がしたいとの反論に母親は首を傾げながら「反抗期かしら」とブツブツと呟くのであった。


「とにかく、ご飯にしましょう」


 テーブルに置かれていたのは千切りのキャベツの上にタルタルソースのかかったエビフライが三本置かれたお皿とコンソメスープであった。


 父親は仕事が忙しいのでわたしが寝るころに帰ってくるので夕ご飯は母親と二人きりでの食事が多いのであった。


 母親はGノートを開くと会社に居る父親のウェブキャラクターが立体映像で現れる。


 『いただきます』だけは三人揃うことにしているからだ。揚げたてのエビフライは美味しく一日の疲れがとれるきがした。そのまま、お風呂に入り温まると二階にいくのであった。


 今日は休日で図書館での騒動から次の日の事でした。 Gノートがない初日であった。


 眠い目を擦りながら、周りを見回す。 缶コーヒーを飲んでも疲れていたのか早くに寝てしまったのです。 机の上に置かれた『突然のラブストーリー』だけが昨日の事を真実だと思えた。


  Gノートは無いのか……。


 朝、起きたらメッセージがないか確認作業をしなくてすむので寝起きはまったりとしていると親友の七瀬の事が気になる。 七瀬は元気であろうか?


 わたしは二度寝したいのであった。Gノートを蹴り壊すほどの疲れが溜まっていたからだ。うつろな夢を見てる気分であった。わたしは無意識にGノートを探していた。


……寂しい。


 わたしは布団をかぶると眠りにつくのであった。


 うん?母親が大声を出している。お昼まで数時間であった。二度寝から目が覚めてわたしは自室のカレンダーが先月のままであることに気づく。


2046年も12月か……。


 外の気温はどうだろう?窓を開けて冬の空気を浴びる。

少し冷えるな、わたしは開けてあった窓を閉めるのであった。

こんな暇な休日は久しぶりだ。


 机の上の『突然のラブストーリー』を手にしてベッドに横になり読み始める。相変わらず、微妙なシーン続くのであった。


 なる、なる、同い年くらいの男子はこんなにも少しの露出で感情的になるのか……。


『ご主人様、お風呂でお背中流しますね』


ふふふ、これは勘違いする表現だな。


『大丈夫、水着を用意しています』


 はー……。それでそれで。


 水着でも恥ずかしそうにしている主人公は絶対に女性なれしていませんなと思う。


『恥ずかしがり屋のご主人様の為に大事な場所に湯けむりの立つ魔法をかけました』


 わたしがドキドキしながらページをめくると、ふと鏡が気になる。


 だいぶ髪が伸びたな、切に行くか……。


 わたしの心はGノートが壊れて本を借りてから何かが変わっていた。


 しかし、美容院に電話をしたいがGノートがない。


 仕方がない、アポイントメントが無いが行く事にした。


 それから美容院に行くと。


「あれ?歌葉ちゃん、アポ無しですか?」


「えぇ、Gノートが壊れてしまって」


「少し待つから、丘の上の雑貨店に行っておいで」


 わたしは美容院のお姉さんに教えてもらった雑貨店に向かうのであった。

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