第41話◆蒼汰、上田の地に骨を埋める覚悟をする

◆蒼汰、上田の地に骨を埋める覚悟をする



長野県上田市と言えば、真田氏の居城である上田城が有名だ。


と言っても俺もサキさんと付き合ってから初めて行ったのだけど・・・


そして先日、結婚式の打ち合わせのためにサキさんの実家がある上田に行ったのだけれど、そこで俺はまんまと須藤建設のために生涯を捧げる宣言をさせられてしまった。


どういうことかと言うと、俺が今の仕事を辞めて須藤建設で働く気など微塵もないことを知って、クマ親父とお義母さんが一芝居うったのだ。


まあ、サキさんも一緒に嵌められたわけで、とても芝居には見えなかったことは言うまでもない。


もちろん策士は、あのお義母さまである。 



で、今俺はたいへん悩んでいる。 いったいどうやって退職届を提出すればいいのかを・・


何しろ、俺の所属している部署は、ある大型機械の保全や保守を行っている。


この機械は単体ではなくシステム全体として機能しているため、製品だけの知識では仕事ができない。


そして、稼働している地域ごとに、システム構成が全く異なっているのだ。



従って、俺のやっている仕事を誰かに引き継ぐには、すごく時間がかかる。


「あの~ 嫁の実家の仕事を手伝うことになったので、今月末で辞めさせていただきます」なんてとても言えない。


それに、宮下課長や一緒に仕事をしてきた田口に迷惑をかけたくない。


でも、いずれにしても結婚式(披露宴)では、どうせあのクマ親父が跡継ぎとして俺たちのことを紹介するだろうし、タイムリミットはすぐそこに迫ってきていた。



***


俺が上田から帰って来てから、毎日暗い顔をして悩んでいたので、サキさんが「蒼汰さん、気分転換にキャンプに行きましょう」と提案してくれた。


北海道から帰って来てから、まだ2週間しか経っていなかったけれど、キャンプと聞いてなんだかホッとした気分になる。




「で、どこに行こうか?  サキさんは、行きたいところあるの?」


「えへへ、そうですね。  富士山なんてどうですか。 もちろん西湖じゃないところですよ」


「富士山かぁ・・  うん、いいね!   キャンプ場もいっぱいあるし」


「あっ、そうです。  あのですね・・  この前父から聞いたんですけど、全てのキャンプ場が異世界側に存在しているわけではないそうなんです」


「えっ そうなの?」


「はい。 特に富士山周辺みたいにキャンプ場が多いところだと管理人さんの手配が難しいそうです。


場所や建物自体はあるらしいんですけど、開放されていないというか・・」


「そうなんだ。  でも、異世界のキャンプ場に拘ってるわけじゃないし、普通にこっちのキャンプ場でもいいよね?」


「はい♪  それでは、霧が出るか出ないかは当日のお楽しみですね」



富士山の周辺は、ほんとうにキャンプ場が多い。


俺が前に買ったガイドブックにも、オートキャンプができるサイトだけで40サイトほどが載っている。


リビングのテーブルにそのガイドブックを広げると、さっそくサキさんが俺の隣に腰かけて覗き込んでくる。


なんだかそ姿勢が不安定そうなので、サキさんの肩に腕を回して抱き寄せる。


や・・やわらかい。



これで膝の上に座らせでもしたら、ただの変態だなと思いながらガイドブックのページをめくって行く。


もしかしたら、今回はこっちの世界のキャンプ場になるかも知れないので、区画数が多いキャンプ場を中心に見て行く。


ニューブリッ○キャンプ場(144区画)、本栖レー○サイドキャンプ場(100区画)、小田○山中湖フォレストコテージ(45区画)・・


河○湖オートキャンプ場(50区画)、朝霧ジャ○ボオートキャンプ場(350区画)、ふも○っぱら(1500区画)・・



「見てみて、ここすごいです!  蒼汰さん、1500区画ですよ!」


「ほんとだ、どんだけ広いんだろう?」


「あたし、此処に行ってみたいです! 」  サキさんがくるっと振り向き、キラキラする目で俺を見つめて来る。


あーー 近い、近い。  そんなに接近すると・・・  肩に回していた俺の腕がサキさんの腰へスルスルとおりていく。


んっ・・ んーーー 


可愛すぎて思わずKISSしちゃいました。



***


と、いう事で今回のキャンプは、ふもと○ぱらキャンプ場に決定。


週末に向け、ひさしぶりに軽ワゴンにキャンプ道具を積んでいく。


ボディが少し汚れているし、出かける前に洗車もしてあげよう。




第42話「蒼汰、富士の麓でイチャラブする」に続く。

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