第32話◆蒼汰、北海道で本物の熊を見る その6
◆蒼汰、北海道で本物の熊を見る その6
釧路市山花○園オートキャンプ場は、釧路湿原の西に広がる東京ドーム120個分の広さの山花公園の中にある。
「山花温泉リ○レ」という温泉施設もあり、キャンパーにとってはとても嬉しいキャンプ場だ。
キャンピングカーサイトは10サイトだけどAC電源、水道蛇口、汚物用マンホールまで付いている。
(ちなみに、スタンダードカーサイト(電源付)は44サイトもある)
今回は事前予約していないけれど異世界のキャンプ場は、いつも空いているので心配はしていない。
さっそく、センターハウス(受付)前の駐車場にクルマを止め、中に入ると事務室からカバが出て来た。
ついに「けもの化」の範囲もアフリカまで広がったのか・・
俺は驚くと同時に、これからライオンとかサイとか象とかにも会う日が来るかも知れないという複雑な気持ちになった。
なんというか見たいという気持ちと見たくない気持ちが半々ぐらいだ。
カバといっても体の大きさは、人間サイズなのでカバの着ぐるみを人が着ているという感じなのだが、全体のバランスが悪い。
「あのー 予約してないのですが、今日大丈夫でしょうか?」
「コテージですカバ? それともフリーテントサイトカバ?」
「えーっと あのクルマなんで出来れば、キャンピングカーサイトがいいのですが」
俺は出入口の真正面に止まっている、俺たちのクルマを指さす。
「あーー 本格的なやつですねー。 料金は、3730円になりますが、よろしいでしょうカバ?」
「あ、はい。 大丈夫です」 (やっぱり語尾にカバがつくのか・・)
「お一人ですカバ?」
「いいえ、妻と二人です」
「大人はひとり、750円になりますカバ」
利用料を支払ってクルマに戻ると、サキさんが洗濯物をまとめていた。
流石にこのキャンピングカーにも洗濯機だけは付いていないのだ。
洗う気になればクルマのシャワーボックスかシンクで洗えないことはないけど狭くて苦行になる。
「蒼汰さん。 ここのセンターハウスには、コインランドリーがあるんですよ。
あたし、この洗濯物を洗いに行ってきますから、先にサイトの方に行っててください」
「分かりました。 それじゃあ、クルマを止めたら迎えに来ますね」
いったんサキさんと分かれ、クルマをキャンピングカーサイトに置きに行く。
と言っても、キャンピングカーサイトはセンターハウスのすぐ先だ。
ついでにサイドタープを引き出してから、洗濯ロープを張っておこう。
このクルマのサイドタープにはフックを引っかける金具がついている。
なので付属のフックが付いている伸縮棒を使ってタープを引き出して、両端の金属製の穴にポールを刺してロープを張ればあっという間に完成だ。
ついでに洗濯ロープも張って所要時間は全部で20分ほどだった。
洗濯はもう少しかかるだろうけど、待っている間にサキさんとカツゲンでも飲もうかと自販機コーナーに寄る。
だが何台か見て回ったがお目当ての品物は無く、北海道マイルドコーヒーとハスカップソーダを買った。
飲み物を持ってコインランドリーに行くとサキさんの姿が見えない。
運転中の洗濯機を確認すると残り時間が12分なので、きっとトイレにでも行っているのだろう。
しばらくの間、ランドリーのベンチに座って待っていたが洗濯機が止まっても戻ってこないので、乾燥が終わった洗濯物をカゴに入れてから、センターハウス内を探してみることにした。
売店コーナーはお店の人も自分たち以外のお客もいない。 受付のカバ男も姿が見えない。 結局、センターハウスの中には誰もいなかった。
俺はだんだん不安になって、センターハウスを出てサキさんの姿を探しまわった。 もちろんクルマに戻っていないか何度も確認しに行った。
探し始めてから1時間、俺はまだサキさんを見つけることができないでいた。
もしかしたら親父さんがここまでやって来たのだろうか? それとも何か事件に巻き込まれたのか・・
もしあの時、自分が自販機コーナーなどに寄らず、サキさんのところに真っすぐ向かっていれば、こんなことにならなかったかも知れない。
こっちの世界はキャンプ場しかないのだから、向こうの世界の警察に連絡しても探してもらえないし、それよりもまず信じてもらえないだろう。
俺はもうどうしたらいいか分からなくなって、頭を抱えてベンチに座りこんでしまった。
第33話「蒼汰、北海道で本物の熊を見る その7」に続く。
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