第16話◆サキさん猫になる(その2)
◆サキさん猫になる(その2)
二日目の朝食を簡単に済ませて、食後の紅茶を飲みながらキャンプメインの本日の予定を二人で事前に確認する。
俺たちがサキさんの家で立てた二日目の計画は・・
平尾温泉み〇らしの湯→昼はお洒落なレストラン→夕飯用食材の買い出し→夕飯→キャンプ場の大浴場→焚火でまったり星空観賞→就寝 である。
人生バラ色、きゃっきゃうふふである。 (この時点では帰った時のサキさんの親父さんのことは、俺の脳内細胞が拒絶全削除している)
そして俺たちは今クルマで最初の目的地である、「みは〇しの湯」に向かっている。
当然のことだけど、キャンプ場から出るときは霧の中を少しだけ走行しなければならない。
俺はこの霧の中を走ったのはまだ数回だけど、この中を走るときには、なぜだかすごく不安な気持ちになる。
霧で視界が悪いということからくる不安な気持ちではなく、なんというか胸騒ぎ的な感じなやつだ。
「みはら〇の湯」は平尾山公園にあって、天然温泉の露天風呂は、西に北アルプス連峰、南に霧ヶ峰高原・蓼科山、八ヶ岳連峰、東に秩父山脈までが一望できる、その名のとおりの素晴らしい眺望だ。
そしてここは、なんと高速道路からも直接行ける「ハイウェイオアシス」なのだ。
もちろんサキさんも俺も、ここの施設は初めて行く。
今回はキャンプ場からなので、一般道からだけれど時間はそれほどかからなかった。
さっそく入浴料金(大人800円)を払って、お風呂に向かう。
待ち合わせの時間を決めて、ここから先はサキさんと別行動である。
昨晩は、あの親父さんのせいでお風呂に入れなかったので、露天風呂にゆったりと浸かり、出張疲れをリフレッシュする。
ちゃぽん・・ ざざーーっ 遠くの山々と白く浮かぶ雲を眺めながらの露天風呂はまさに極楽気分だ。
ふぅ~ とろける~ぅ 夜に来れば夜景とか星空がきれいなんだろうな・・
サキさんも今ごろは・・・ ムフフ
***
湯上りの女性は、浴衣でなくても色っぽいのは何故だろう。 せっけんの香りもほのかにして、何だかドキドキする。
でも男はなんで、せっけんの香りがしないんだ? もしかして野郎成分と相殺されてしまうってか?
俺が無意識に鼻をスンスンしていたので、サキさんが俺の顔を「んっ?」ってな感じで見ている。
「あっ お、温泉なのにあまり硫黄の臭いがしないなって・・」 ←咄嗟の言い訳にしてはナイス?
せっかくなのでついでに館内をくるっと見て回る。
おおっ トレーニングジムやお食事所なんかもあるじゃないですか。
信州十割蕎麦、蓼科麦豚のロースカツ、信州プレミアム牛・・ あああ、レストランじゃなくて此処でもいいかなぁ・・
いやいや、初志貫徹だ。 これが俺の座右の銘じゃないか! ←もう、美味しそうなものを見て脳をやられてしまっている。
ちょっとだけ未練があったが、次の予定の「レストランで昼食」を着実に実行に移すのだ。
ここからは、サキさんに代わり俺の運転で、助手席のサキさんがレストランを見つけることにした。
なんたって、お洒落なレストラン探しは、俺には難易度が高すぎる。
しばらく走ると・・
「あっ、蒼汰さん。 みつけましたよ。 あそこなんかどうですか?」
小諸方面に向かう途中に、サキさんがピザとパスタの美味しそうなお店を見つけてクルマを止める。
キャンプ場からは、あまり遠くまで行かないつもりだったので、そのまま店内に入る。
店内は山小屋風で、なかなかいい雰囲気のよいお店だ。
メニューを見れば、美味しそうなピザがいろいろ並んでいて大いに迷う。
たくさん頼むと夕飯が食べられなくなるし、そもそも俺はサキさん作った料理が食べたい。
メニューを見ながら散々迷って、マルゲリータとチーズが大好きなサキさんのために、クワトロフォルマッジ(4種類のチーズピッツァ)を頼んだ。
「うまい! こんなに美味しいピザは初めて食べましたよ」
俺がはしゃいでいるのを嬉しそうにサキさんが見ている。
サキさんは猫舌だそうで、ゆっくり食べる。 片手で髪を押さえて食べる姿も超かわいい。
大満足でお店を後にし、夕食の食材を買うためスーパーを探しながら、小諸方面へ更にクルマを走しらせる。
ここで、俺は少し前から疑問に思っていたことをサキさんに聞いてみた。
「サキさん、前から不思議に思っていたんですけど、異世界に行くことができるのってクルマにその能力があるんですか? それとも俺とかサキさんとか人が持っているんでしょうか?」
するとサキさんは、キョトンとした顔で・・
「言われてみれば・・そうですね。 今までそんなこと考えたことがなかったです」
「このクルマってまだ新しそうですけど、前に乗っていたクルマでもキャンプは行ってらしたんですよね」
「ええ、でも自分のクルマとして買ったのは、このクルマが初めてなんです。 前は父のクルマに乗ってましたし・・」
「う~ん すると・・ クルマじゃなさそうですね」
「蒼汰さん、それで何か困ることとかありますか」
「あっ いや。 クルマだった場合、もし買い換えたとしたら、もう異世界に行けなくなるとかあるのかなぁって、ちょっと思って」
「あーーー そうですねーーー でも、あたしの母は、ひとりでは異世界には行けないんですけど、父が忘れ物をしたときにこのクルマで届けたことがありましたよ」
「ええっ そうなんですか?」
「はい。 母は確かに届けてましたから、クルマなのかもしれませんね」
俺は何だか分からなくなってしまったが、ちょうどスーパがあったので、ハンドルを切ってクルマを駐車場へと入れた。
第17話「サキさん猫になる(その3)」に続く
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