第4話◆ここは異世界なんですか?
◆ここは異世界なんですか?
「あの~ もしかしてお困りの事とかありますか?」
突然、後ろから声をかけられ、驚いて振り向くとそこには綺麗なお姉さんが笑顔で立っていた。
「いや~ 恥ずかしながら、お肉は買ってきたのですが焼肉のタレや着火剤とかライターとかいろいろ忘れてきてしまって、今日はここでのバーベキューは諦めて帰ろうとしてたところです」
「あらあら、それはたいへんでしたね。 せっかくここまで来られたのですし、もしよろしければ、あたしたちと合流しませんか」
お姉さんが指をさした方を見れば、若い男女がタープを張ってバーベキューをしている。
「せっかくお誘いいただいたのですが、ひとり部外者と言うのもちょっとハードルが高いので、すみませんがご遠慮させていただきます」
「そうですか。 そうですよね。 あたしったらごめんなさい」
「いえ・・・ こちらこそ、なんかすみません」
「では、着火剤とライターをお貸しするので、こちらで予定どおりバーベキューをされて行かれるのはどうですか? 焼肉のタレも余分に持って来てるので」
「えっ あっ、はい。 そうしていただけるのでしたら嬉しいです」
お姉さんの突然の申し出にちょっと驚いたが、目の前のお肉が俺の腹ペコ状態を再び呼び起こす。
「よかった。 それじゃ直ぐに取ってきますね」
そう言うとお姉さんは、走って着火剤などを取りに行ってくれた。
お姉さんのバーベキュー仲間が手を振って、お姉さんを呼んでいる。
なんだか自分のために手間を取らせてしまって、申し訳ない気持ちになる。
お姉さんは途中、石に躓いて転びそうになっていたけど、運動神経は良さそうで無事に戻って来た。
「はい♪ これ。 着火剤は多めに使った方が失敗がなくていいですよ」
「どうもありがとうございます」
「いいえ。 あと何か困ったことがあったら遠慮なく声をかけてくださいね。 もうしばらくは、ここにいますから」
「あの、着火剤はおいくらでしたか?」
「ああ、お金は結構ですよ。 ライターも使い捨てですし、もう少しで空っぽになりそうだから差し上げます。 タレも半分しか入ってませんし、どうぞ使ってください」
「すみません。 いろいろとありがとうございます」
俺が深々と90度でお辞儀をしたのが可笑しかったのか、お姉さんはコロコロと笑った。
まるで絶望の淵で女神さまに救われたかのようだ。
「あの、お友達の方たちにも、ご迷惑をおかけしすみませんでしたとお伝えください」
「あら、そんな。 なにも気になさらないでください」
「ところで皆さん、暑いのに着ぐるみとかでバーベキューって大丈夫なんですか?」
「えっ? 着ぐるみ?」
「ええ。 まあ、猫耳とか可愛いですけどね」 ふふっ
お姉さんが戻って行ってから、俺は着火剤に火をつけ、勢いよく燃え始めたところでその上に炭を並べた。
火が熾きるまでの間、ワゴン車の荷室にどんなものがあるか見てみる。
いろいろな物が収納袋に入れられて整理されているので、じっくり確認していく。
テント、タープ、寝袋、エアマット、焚火台、クッカー、バーナー・・・
みんなコンパクトで使いやすそうな物ばかりだ。
そういえば親父の部屋に、カセットボンベや固形燃料、小さな消火器とかがあったな。
そうか。 クルマだから危険物を使うとき用に積んでたのか・・・
いろいろ見ているうちに炭が真っ赤になって来たので、いよいよ待望のバーベキュー開始だ。
ベリベリッ
俺はバーベキューセットのラップを勢いよく剥がした。
あっ ・・
第5話「もう一度会いたいな」に続く
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