第4話
「お、
部室にいたのは部長の斎藤だ。おれたちより一学年上なだけなのだが、小指を立てて「コレ」とか言ってしまう昭和的な言語感覚、ガタイの良さとおよそ10代には見えない老けた顔、制服さえ着ていなければ新入生は10人中10人が斎藤のことを教師だと思うだろう。制服を着ていたとしても10人中8人は学生のコスプレをしたおっさんだと思うだろう。
「おとなしいやつだと思ってたが隅に置けねえな。まあせっかくできた彼女を部長に紹介しようなんて殊勝じゃねえか。クラスメートか?それとも新入生でもつかまえたのか?」
「違うんですよ部長」
「なんだ、まだAも済ませてないから付き合ってる自信が持てないのか?初々しいなあ、おい」
「いやだからそうじゃなくてですね」
「おいおいまさかもうB?いやCだと?羨ましいじゃねえか…」
「ちょっとなに言ってるかわかんないんですけど、わたしと要くんはそういう関係じゃないんです!だいたいわたしには彼氏が…」
「表さん、その件はヒミツなんじゃ」
「おいおいちょっと待てよ。略奪愛なのか?おめえらおとなしそうな割にドロドロした生き方してやがるな」
「いやいやいやいや、ぼくと
斎藤の誤解、というかウザ絡みを振りほどくのに時間と体力を消耗したが、どうにか表の得意なエクセルがうちの部活の助けになるのではないかと言うことを説明した。
「なんだよ勘違いさせやがって。まあいいや、手伝ってくれるのはありがてえよ。こっちも80年の伝統ある部活を守っていかねえといけないからな」
「まかせてください!えっく…エクセルでできることだったらなんだって手伝いますよ」
「そいつは頼もしい。困ってることってのは単純でな。最近客足が遠のいている気がしてるんだよ。なんかこうスパッと原因の分析みたいなことができるといいと思っているんだが、どうやってそういうことをしていいのやらさっぱりわかんなくてな。そもそも売上が減ってるのかすりゃわかりゃしねえんだ」
「ちょ、ちょっとまってください。きゃくあし?なに言ってるんですか?」
「お客さんの数が多いか少ないかのことだよ」
「いや、それはわかるんですけど…。部活にお客さんとかいないですよね。いったいここなんの部活なんですか?」
「そうかそうか、すまねえ。要から聞いてなかったんだな。おれたち、うどん部なんだよ」
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この小説はSpreadsheets/Excel Advent Calendar 2019を埋めるために書いてきましたが、ありがたいことに結構埋まってきたので特に関係なく書きすすめることにしました。登録してくださった方本当にありがとうございます。
https://adventar.org/calendars/4085
「おれ、うどん部だったんだ」というのは町田康氏の『河原のアパラ』を読んで以来いつか言ってみたかった嘘だったのですが、ここにきて小説で書くことができて感無量です。
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