告白

 私と兄は、同じ公立高校に通っています。

 そして知ったのですが、兄は寡黙で面倒臭がりな人間なのに、意外と女の子からモテるようです。確かに外見はなかなかですが、あれだけ学校でも寡黙なのに、どうして好意を寄せられるのでしょうか。


 兄の事が好きだから橋渡しをしてほしいと頼んできた、委員会の上級生さんに訊いてみました。なんでも、寡黙で何を考えているのかわからないけど、そこがミステリアスで良いそうです。物言わずとも、窓の外を眺めているだけで絵になるとかなんとか。


 断るのも気が引けたので、結果を予想しつつも私は兄を空き教室へと呼びだしました。


「以前から気になってました!付き合ってください!!」


 直球で放られた告白のボールに対して兄は、


「付き合うとか、そういうの興味ないから」


 グローブで弾きました。受け止める事すらしません。妹の私から見ても、あんまりな断り様でした。

 そこは、「気持ちは嬉しいけど」とかやんわりと断るところでしょう。そういう気遣いを一切しない兄が、私は嫌いです。


「それじゃ」

 短く言い捨てて、兄は廊下へと消えていきました。先輩を慰めようかとも思いましたが、瞳に涙を滲ませていたので、そっとしておくほうがいいかなと判断して扉だけを閉めて兄を追います。




「兄さん、あの断り方はあんまりじゃない?」

 義憤に駆られていた私は、帰り道で兄に食ってかかりました。

「そうか?」

 ですが、やはりというか、兄は全く心を動かしません。

 仕方ないので、切り口を変えてみました。

「本当に恋愛に興味ないの?」

「今のところ、告白を受ける気は全くない」

「どうしてよ!?せっかく、いろんな女の子から好意を向けてもらってるのに!」

 振り向きもせず淡々という兄の背中に、私は問いを浴びせかけます。すると、兄は突如として立ち止まると、振り返って答えました。


「だって、俺が女の子と付き合って遊びに行ったりしたら、お前は家で独りぼっちだろ?」


 うっすらと笑みを浮かべて、不意打ちの危険球を放ってくる兄に、私は咄嗟に応えることができませんでした。


 それを肯定と取ったらしき兄は、

「お前は寂しがり屋だからなぁ」

 と勝手に決めつけて、また歩き始めました。

 どうせ、家にいるといっても、自室に籠ってパソコンとにらめっこしてることがほとんどなのに。・・・なんて反論は口に出せず。


 結局、私は黙ったままついていく事しかできませんでした。

 一人合点して得意げに歩くその背中が、少し憎たらしくはありましたが、それ以上に大好きです。

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