独唱‐アリア‐by金魚姫さん

 銀色の弾が 筒を飛び出した

 こだまする 友の絶叫

 彼らは歓喜の雄叫びを上げ 狂乱の花火を上げる


 あるものは友を

 あるものは妻を

 あるものは子を


 多くの血が流れ たくさんの生命が主の下に帰る

 残されたものたちは 恐怖に震え

 怒りに燃え上がる けれど成す術がない



 銀色の弾が 筒を飛び出した

 かつての王は もういない

 強かったものたちも 等しく絶叫を上げ

 今は弱かったものたちとともにある


 友は壁に飾られた

 かつての好敵手は床に敷かれ

 かつての賢者は牙を抜かれた


 銀色の弾が 筒を飛び出した

 彼らの去ったサバンナに

 わたしはひとり

(引用ここまで:https://kakuyomu.jp/works/1177354054890363412/episodes/1177354054890363426


 読んでる人間の教養の問題上、「アリア 意味」で検索するところから始めさせていただきました。オペラなどの中に含まれる独唱(ソロパートってこと?)ということなのですが、オペラに行ったことないのでますます想像がつかない……いきなり読み手としての資格を問われている感じもありますが、ひとまず読解に取り組ませていただきます。

 結論からいうと、構成上の美学がとても効いている作品かなと思いました。

「銀色の弾が 筒を飛び出した」という語句は、とくにひねった見方をするまでもなく、明らかに発砲の描写で、つまり人工物に関連するものです。

 ここから自分は、「これは人工的な空間で起きている出来事なのだなあ」と、ぼんやり考え始めました。人為的に装飾された空間の中に予期せず持ち込まれた蛮性、というイメージです。

「残されたものたちは 恐怖に震え/怒りに燃え上がる けれど成す術がない」といった語句も、ぼんやりとした考えに掉さすものとして感受されます。予期せず持ち込まれた蛮性に「震え」たり「怒りに燃え上がる」のは当然だろうと。

 そして「強かったものたちも 等しく絶叫を上げ/今は弱かったものたちとともにある」、強者と弱者が境目をなくし、融け合うような感覚……その背後には生と死の境目の融解がほの見える……なるほどなあと思いながら、自分は読み進めていきます。

「友は壁に飾られた/かつての好敵手は床に敷かれ/かつての賢者は牙を抜かれた」

 ここに来て自分は「んん??」と思いました。何か超現実的な描写なのかな?

「サバンナ」

 サバンナ!?

 となってもういちど頭から読み返し、そういうことか、となりました。「銀色の弾が 筒を飛び出した」のリフレインも、じつに巧妙なタイミングで挿入されていると思います。

 語り手の輪郭がゆらぐことで、凄絶なイメージの中へ置き去りにされる彼あるいは彼女の孤独感が、深く強調されているように思いました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る