お出口は左側by海魚さん
夜になると方向感覚が狂う
右と左はわかっても
北と南はわからない
しかしながら
私は間違いなく未来に向かって進んでいる
過去ではなく未来に
動くこともなく
力を入れることもなく
只々この狭っ苦しいシートに座って
未来へと運ばれて
向かう先には家族の暖かな笑顔と
ささやかな夕飯が待っているのだ
(引用ここまで:https://kakuyomu.jp/works/1177354054891723325/episodes/1177354054892184417)
「夜になると方向感覚が狂う/右と左はわかっても/北と南はわからない」
この、事実の適示ともアレゴリーともつかない語句から、ごく自然に「未来」へと視点が移行するスムーズな跳躍が、構成上の勘所かなと思いました。
つまりこの作品においては「方向感覚」にふたつのレイヤーがあるということで、ひとつは単なる平面上の、二次元的な、「右と左/北と南」にまつわるもの、もうひとつは「未来」にまつわるもの、三次元的な(といっていいのかな?)ものかなと思います。ベルグソンとかハイデガーとかいう人名がぼんやり浮かぶわけですが、そういう文脈抜きでスッと入ってくるものがあり、やっぱりそこはこの作品のチカラかな~と感じます。
「只々この狭っ苦しいシートに座って」という着眼点もいい感じです。動かないことが、閉ざされていることがむしろ「未来」への「運ばれ」を示唆しているという、固有の洞察の手触りがあります。この手触りが、この短い作品をたびたび読み返す行為に堪えさせているのではないかと思います。ありがとうございました。
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