第6話【腕づくでは愛は捥ぎ取れない】

「ほらーよしよし良い子でしゅねー」

「・・・・・」


乳母車の中に居るピーマン。

如何やら今回は赤ん坊の時まで時間を遡ってしまった様だ。


「・・・・・」

「如何したのかなー?」


自分をあやす乳母を後目にしながらピーマンは考えた。

押し潰されたのは自分に力が無かったからだ。

自分にもっと力があればカラシナを守れた筈だ。

そう思ったピーマンは体を鍛える事にした。

幸いにも今回は赤ん坊からの再スタートなので体を鍛える時間は沢山有った。

ピーマンは騎士団長のワインの手ほどきを受けて

体を鍛えまくった。

筋肉モリモリマッチョマンになりボディビル大会でも優勝を飾る程だった。

そんな彼が王立学院に入学するのをワインは本当に残念に思っていた。


「貴方ならば騎士学園に入り、 もっと筋肉を鍛えれば騎士王と呼ばれていたでしょうに」

「残念ですが私には守るべき女性が居るのです、 その女性は王立学院に居ます」

「そうですか・・・ならば私には何も言う事は有りません

頑張って下さい!!」

「ああ!!」


150kg、 体脂肪率7%の体を揺らしながら王立学院の入学式の日に

校門までやって来た。


「さて・・・この辺に居る筈だが・・・」


周囲を見渡すピーマン。

そしてカラシナを見つけた。


「見つけた・・・」


前々回未来の出来事を話して失敗した経験が有る。

初対面を装って話しかけるピーマン。


「もしそこの御嬢さん、 私が案内しましょうか?」

「え・・・」


見上げるカラシナ。


「い、 いえ大丈夫です」

「遠慮せずに」

「い、 いえ!! 本当に大丈夫ですから!!」


何故か拒むカラシナ。


「良いから任せるんだ!!」


力を込めて制服を突き破り半裸になるピーマン。


「いえ・・・ほんとに・・・無理なんで・・・」


顔を下に向けるカラシナ。


「ピーマン殿下、 その子女は如何やら貴方に離れて欲しいそうです

不敬かもしれませんが貴方の体躯で迫られると

子女は怯えてしまいます、 ここは如何か・・・」


後ろから現れたミンチ侯爵令嬢が諭す。


「・・・・・この体がカラシナに拒絶されるなら

俺は今まで何の為に筋トレして来たんだああアアアアアアアアア!!」


叫んで狂乱したピーマンは車道に出て馬車に激突して死んだのだった。


【死因:馬車には勝てなかったよ】

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