第6話 アニメ鑑賞


「先輩〜?私今日やっぱり行かないです」


勉強がひと段落し、千崎が1時間寝て起きたら開口一番ふざけたことを言ってきた。


「勉強教えた意味がなくなるから学校は行くぞ」


「だって〜。私は学校よりアニメが好きなんですよー」


目を擦りながら、まだ本調子じゃない千崎が言う。


「知ってるわ。俺だってアニメ見たいんだぞ」


「なら学校休んで私と一緒に見ませんか??」


上目遣いでそう言われてしまうと思わず誘惑に負けてしまいそうになるが、今日はテストということで思い留まる。


「テスト大丈夫か?」


「へーきですよ〜。テストぐらい休んだって、追試やれば留年しませんし」


「夏休みに学校行くことになるんだぞ?」


「このひと時が大事なので。後のことは私は知りません」


千崎は今を生きるようだった。そんな自分の意思を持って、後先考えない千崎を見ると俺が馬鹿らしくなる。真面目に学校行って、勉強して、その先に果たして何があるんだろうか。自由に生きる千崎はカッコよく写ってしまう。


「わかった。千崎が休むなら俺も付き合う。一緒に追試を受けようぜ」


「先輩...」


千崎が目を輝かして俺を見る。


「よし!休むと決まったことだし今期の溜まっているアニメを片付けるぞ!」


「ってもしかして先輩〜〜〜???」


俺の後輩、千崎は嘲笑う。


「な、なんだ?」


俺はリモコンの電源を入れる。千崎は俺の部屋のテレビで録画したアニメを見ることがよくある。


「私と一緒に居たいんですかーー??」


「仕方なく千崎に付き合ってあげるだけだ」


「本当ですか〜〜?私と2人だけの空間で一緒にアニメ見たいんじゃないですか〜〜??同じ空気をずっと吸っていたいんですよね??」


「ふざけていると学校行くぞ」


「あははっっっ。先輩冷たい〜〜。図星だったんですね〜」


「最初は今期俺が一番楽しみにしている俺好◯の10話を見るかー」


「流さないでくださいよーーーー。それに私はまだ9話見てないので、そこから見てもらいます!」


「わかった。そこから見るか」


「先輩...」


「どうした?」


「私幸せです」


「は?」


「だって〜」


ま、まさか俺と一緒にアニメ見れることが幸せだなんて、まさかそんなこと本当のまさか言うわけないよね?ね!?


「先輩の部屋でアニメ見られるんですもん」


「そ、それって...」


それは俺とアニメ見れるのが幸せって言ってると同じじゃ...。


「先輩のテレビ今期のアニメ全部録画してあるじゃないですかー。私も録画してあるんですけどついつい忘れてしまうことがあるんですよねー。先輩本当嬉しいです〜」


あ、そゆこと。


俺はいつものことのように硬直してしまった。顔に出やすいのが、俺の悪い所だ。


「え?せんぱーーーーぃ?もしかして勘違いしてませんか〜〜??」


千崎が俺の様子を見るや否や悪い顔をする。


「し、してないぞ?」


「あははっっーーー。先輩動揺してる〜〜面白いーー」


「...」


「また顔赤くなってますよ〜〜。可愛いー!!」


毎度同じやりとりをし、千崎は嬉しがる。早く治さねば!


「アニメ見るんだよね!?」


「今は先輩を見るんですよ〜〜」


体育座りをし、横顔を覗かせる千崎を見ると思わず見惚れてしまう。だから、あざといんだよ。

その後も千崎にからかわれ続け、アニメを見始めるのに1時間かかったのだった。

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