第5話 勉強会


「こ、ここか?」


「ち、違いますよ...」


「なら、こっちか?」


「もっと下です...」


「これか?」


「はっ、はい。そっ、あっ、先輩、そ、そこでーーーーーーーーす!!」


「って分からない問題はここだよね!?」


「そうですよ〜」


「えっ!せんぱーーーーぃ?もしかして何かと勘違いしたんですか〜??」


千崎は口に手を当て、嘲笑ってくる。


「し、してねぇ〜し」


俺は苦し紛れの否定を入れる。


「嘘が下手ですよ先輩ー。あははっっ顔赤くて面白い〜」


「先輩をからかうんじゃねーよ」


「だって、先輩の反応が可愛いんですもん!」


「はー、これはなxをyに代入して...って聞いてるのか千崎?」


俺は呆れつつ、千崎の方から問題の方へ向き、教えようとするが、横に座っている千崎から視線の圧が凄い。


「聞いてますよ〜先輩が真面目に教えてる所を見ていたんじゃないですか〜?」


「そんなに見つめられると説明しにくいんだよ。頼むから問題を見てくれ」


「嫌でーす。あははっっ。嘘ですよ。ちゃんと聞きます」


「そうしてくれ」


俺は軽くあしらうと、再度問題に顔を向ける。


「『先輩...。教えるの上手ですね...』」


千崎が耳元で囁いてくる。息がかかり、むず痒い。甘く溶けそうな声で囁かれたらドキってなるのも仕方ない。


「うっっっ、、、お、お前なー」


「『先輩?もしかして照れてます??』」


「照れてねーよ」


「『ふぅーー。私の吐息です。これは照れましたか?』」


照れないわけがない。俺は平常心を保ち、これ以上やらせないようにするために隣の千崎の方へ向く。千崎は俺と目が合うとニヤリと笑みを浮かべ、少し頬を赤らめる。


「やっぱり先輩。顔赤い」


「これ以上からかったら教えないからなー」


「わかりましたよ。教えて下さーい。先輩、誤魔化すの下手ですね」


「なにか言ったか?」


「いいえ。なんでもないです〜」


その後の千崎は上機嫌だった。

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