第61話

「うっっっっま…ぁ…なんじゃこりゃぁ…」


びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛ぃ゛

やっぱり北海道のラーメンは、一味違いますねぇ。

ごめんなさい一回やってみたかったんだ…。


「コシがすごいわね…。本当に美しい…」


 クリスマスの日に家系ラーメン?などというツッコミはやめて欲しい。この店が良い匂いを漂わせ、俺と凛花の腹を同時に鳴らしたのが悪いのだ。


「お、いい食いっぷりだねぇお二人さん。今なら替え玉サービスしとくよ?」


 スキンヘッドで頭を丸め、いかにも店長です!というのを強調した人が、俺らに笑顔でそういってくる。


「マジですか、お願いします!」

「き、今日くらいは…良いわよね…」


 因みに替え玉を5杯くらいしたせいで、大食いファイターと間違えられたのはまた別の話である。


………

……


「にしても流石北海道…雪がこんなに降るのか…」

「そうね…」


 飯を食った後、近くにあった公園のベンチで一休みする。その際、昨日降ったであろう雪を使って雪合戦している小学校低学年程の少年少女達を見かけてほのぼのしていた。


「ふぅ…がっ!」


 缶コーヒーを一口飲もうと口に近づけようとした時だ。俺の視界が真っ白に染まる。


「あっ…やっ…べ…」

「お、おいどうすんだ…」

「あ、あの…大丈夫です…か…?」


 状況はすぐに理解できた。遊んでいたガキンチョ達の雪合戦に巻き込まれたのだと。

 顔についている雪を振り払って、立ち上がる。


「ひ、ひぃっ!」

「ご、ごめんなさいごめんなさい!」


 俺に雪をぶん投げたであろう小さな少年は、涙目になりながら必死に頭を下げる。

 その頭を…ポンポンと撫でる。


「大丈夫だ、兄ちゃんは全然気にしてないぞ〜。というかさっきのいい球だったな〜。俺にも投げ方教えてくれよ」


 怒ってるわけじゃない事をアピールすると、それが伝わった様で、子供達は笑顔になりながら俺の腕を引っ張ってくる。


「良いよ!!教えてあげる!!」

「こっちきてー!!」

「みんなぁあああ!このお兄ちゃんも参加するってぇえ!!」


 そして俺は、ガキンチョ達の雪合戦に参加するのだった。


………

……


何故こうなった?


「良いかお前ら!!まず俺が特攻する!!その後にお前達も続けぇぇええ!」

「「「サーー!イエッサー!!」」」

「突撃じゃあああ!!」

「「「うぉぉぉおぉお!!」」」


 いつのまにか仲良くなったガキンチョ達と共に、俺が先頭に立って、一緒に遊んでいる女子軍団に向かって特攻する。


だが…。


「ふぶぉあっ!」

「「「た、隊長ぉぉおお!!」」」


 とてつもない豪速球の球が俺の顔面を襲う。思わずぶっ倒れてしまう。


「ふふっ、特攻とはバカな真似をするわね恭弥」


 5メートル程先から1メートル近くの大きさで形成されている雪の壁の後ろから、余裕の笑みを浮かべて立ち上がるのは、ノリノリになってる凛花だ。


「お…こ、転ぶ事は恥ではない…そこから起き上がらぬ事こそはぶふっ!」


 またしても顔面に直撃。


「さぁみんな!あの倒れてる間抜けなお兄ちゃんに投げまくるのよ!」

「「「はい!!隊長!!」」」


 まだ小さな少女達は、悪魔の手によって小悪魔に変えられてしまった。マシンガンの如く、俺の体に雪玉が降り注ぐ。


「や、ヤベェ…」

「お、お前ら!隊長を守るんだ!」

「そうだ!!隊長をみんなで…!」


 お、お前らぁ…俺は嬉しいぞ…。俺の事を守ってくれ…


「ねぇみんな、恭弥につくんじゃなく、私の方につくなら後でジュースを奢ってあげるわ」

「「「わーい!」」」


 お前らぁあああ!!買収されてんじゃねぇぇぇぇぇえ!!


「ふふふっ、分かったかしら恭弥、これこそ上に立つ者のやり方よ。人というのは目に見える報酬を与えてこそ動くことをよく理解しておくことね」

「お、お前…そんなことに才能使って楽しいのか!」

「えぇ、凄く楽しいわよ」


 買収された元仲間により、マシンガンがもう一つ増え、俺の体に突き刺さりまくった。


………

……


「じゃあねぇ〜〜兄ちゃん〜!!」

「お姉ちゃーん!!また遊ぼーねー!!」

「おうそうだな…ひっきしっ!」

「えぇ、また遊びましょう」


 結局4時間ぐらい雪合戦をした結果、俺の体はかなり冷えてくしゃみを連発しまくっていた。

 日もそろそろ落ち始めて、ガキ共の門限ということもあって、俺らは解散した。


「ううっ…さみぃ…。お前ら容赦なさすぎだろ…」

「ふふっ、でも凄く楽しかったわ。いつもなら見れない恭弥が見れて」


 そういや、あんなに馬鹿笑いしたのは久々だな。凛花も終始笑顔だった事を考えると、ガキ共には感謝だな。


「ねぇ、これからどうする?」

「んっ…?あー…実は…ちょっと付き合ってもらいたいとこが…ある」

「ふふっ、了解」


 俺は凛花をエスコートし、とある場所に連れて行こうと歩き出すのだった。

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