第57話

 俺の噂から1ヶ月。やっと噂も収縮し始めて安心感が訪れた。

 体育祭、文化祭が終わり、やっと一息つけるかと思いきや…俺にはまだ、重大なイベントが残っていた。


「数学14点か…随分重症ね」

「うぐっ…面目ない…」


 凛花の家で正座させられ、今日返された数学の小テストをマジマジと見られる。

 7日後にある、中間テスト。このままでは間違いなく赤点だ。


「中間テストまで後7日。死ぬ気で勉強するわよ」

「お、おうよ」


 こうして、俺のテスト対策が始まるのであった。


………

……


「で、この式は先にXに置き換えて計算してその後に答えに付け足すのよ」

「あーなるほどな」

「数学なんて容量良くやれば簡単よ。はい正解。じゃあ次の問題ね」


 凛花の家のリビングにて床に座って勉強する。

 その…教えてもらうのはすげぇありがたいし、分かりやすいんだけどさ…。

 なんで服装が白シャツに超絶短いスカートなんだよ!しかも黒タイツとか…何!?誘ってんの!?誘ってんのか凛花さんよぉ!!


「この問題は少しめんどくさいわね…。まず公式が…」

「っ…!」


 前屈みになりながら長い黒髪を耳にかけ、胸を押し付けながら教科書を指差す。


(コイツ確信犯だ…!間違いなく誘ってる…。だが…我慢だ。我慢しろ四宮恭弥。お前は勉強しなきゃならないんだろ…)


 頭の中の煩悩を焼き払う為に、俺は問題に取り掛かった。


………

……


凛花side


「残念間違いよ」

「え…あ!マイナスだわ…これ」

「そういうことよ。じゃあこれと同じ問題を…」


 今私は、側からみればただ彼氏に問題を教えている良い彼女に見えるだろう。だけどそれは私が断言する。否と。

 本当は…。


(早く襲わないかなぁ…)


 そんなことを考えている煩悩まみれの状態であった。おっと、勝手に私を変態扱いするのは辞めてもらうわ。

 まず、こうなったのは全部恭弥のせいなのよ。いつもの恭弥だったらこんな顔はしない。だけどこの勉強特有の時に見せる苦い顔と、問題が解けた時の嬉しそうな顔は、小さな少年の様なの。


もうね、これホンットに…心臓に悪いの。


 だけど教師役の私が勉強を中断して恭弥を襲うなんてことは出来ない。やるとすれば恭弥からだ。だからそれが出来る様に、恭弥が欲情しそうな服装で、スキンシップなどをしながら教えてる。

 私の脳内シュミレーションではこれだ。


『な、なぁ凛花…』

『ん?何?』

『そ、その…服装が服装だから集中が出来ねぇんだけど…』

『ふふっ、恭弥は変態さんね。いいわ、少し休憩しましょうか』


 恭弥の腰に軽く手を添えて、そのまま一緒にお風呂場に…という完璧な流れを想定していた…んだけど…。


「よし、これであってるか?」

「っ…え、えぇ。正解よ」

「よっしゃ」


 全く手を出されない!!なんで!?私に魅力が無いから…いや!そんな事はないわね。恭弥の目を見れば明らかに我慢してる事が分かる。

 ふふっ、我慢しなくてもいいのにね。さぁ恭弥、私はいつでもウェルカムよ。我慢せず飛び込んできなさい!!



1時間後


(な、なんで…!?ありえないわ…!恭弥が1時間もの間私に手を出さないなんて…!!)


 そんなの天変地異が起こる前触れとしか言いようが無い。人間の集中力は約1時間が限界と聞くからそろそろ集中力が切れて私の服装について問いかけると思ってた。


だけどそれは間違いだった。


(なんでより集中してるのよ!!)


 もう範囲の公式とかを覚えて、今では私が教える事なく演習に取り掛かっている。その集中力は前より上がっている。


(まずいわ…このまま恭弥が私を襲わなかったら…私がただの痴女で終わるじゃない! いや実際恭弥を誘ってる時点で痴女なのは否定でき…っ!!)


 脳内の中で落雷が落ちる。エジソンの電球しかり、ニュートンの万有引力しかり、世紀の考えが脳裏に過ぎったのだ。


(私から恭弥を襲えばいいんじゃないかしら…)


 私は恭弥に襲われることばかり考えていた。つまりは逆転の発想だ。私から襲えば、満更でも無い恭弥は我慢できなくなるという方法だ。


え?そうなったら教師役がどうなるのかって?


私が痴女になるって?


そんなの前からじゃない。(開き直り)


(というわけで…作戦変更よ!!)


 勉強している恭弥の首筋に手を置く。ここが敏感な恭弥は一瞬ビクッ!と跳ねて手を止めてこちらに目を向ける。


「凛花…?」

「コンを詰めすぎると良く無いわ。少し休憩しましょう。問題は途中で終わらせておくともう一回集中しやすくなるから」


 嘘は言ってない。だが明らかにそれは口実の良い誘い文句だ。


「そう…だな…」

「ん?どうしたの?そんなに目線を逸らして」

「いや…あの…言おうか迷ってたんだけどさ、その服装って誘ってんの…?男子高校生には刺激が強すぎるんだが…」


 勝利を確信した。


「うん、じゃあ話は後で聞くわ」


 私達はいつでもお互いがお互いの家に泊まれる様に、パジャマ一式をお互いの家に置いている為、そういうのは万全だ。

 まぁ、脱ぎたての恭弥の服で何をしてるかは言えないけど。


 そんなことを思いながら、私は恭弥をお風呂場に連れ込んだ。

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