第58話

「うっげ…100位切っとる…」


 四宮恭弥 103位 総合点390点。


 中間テストの総合点が張り出された掲示板の前は、多くの人で賑わっていた。

 俺は凛花との勉強で赤点こそ無かったものの、一学期と比べて大きく成績を落としていた。390点は、5教科ならそこそこ良いかと思われるが、今回は7教科あった為全然良くない。結構アウトである。


「まぁ、これはまたスパルタ勉強合宿が必要ね」


 隣にいる凛花は、微笑みかけながらそう言う。因みに凛花の点数はこれだ。


 工藤凛花 1位 700点


「スパルタとは…」


 凛花が俺に勉強を教えてくれる時、本当に優しいしわかりやすい。そんな中でスパルタとはなんなのかと考えてしまう。


「つか…お前全教科満点かよ…」

「えぇ、今回は難しい問題が多かったからゾロ目で揃えて遊べなかったわ。数学の最後の証明問題は少し難しくて、全教科ゾロ目で揃えられるか分からなかったから」


 中学時代から行ってる、凛花のとんでもない暇つぶし。それは、1つの教科の点数を88点、99点などで揃えたり、5教科で総合444点をとってゾロ目で揃えて暇つぶしをするという、神にしか出来ないような遊びをしているのだ。


 つかゾロ目で揃えられる自信がないから満点をとるって…ちょっとカッコ良すぎないか?


「そりゃそうだろうが…あのラスト問題確かT大の二次試験問題らしいから…」


 さっき数学のテストが返却された際に、教師がそう言っていたのだ。そんなもん普通の高校生である俺らに出題すんなよ…。


「あら、道理で難しかった筈だわ」


 高1で日本のトップ大学の問題を少し難しかった、と片付けるウチの彼女は何者なんだろうか。いやただの天才でしたね。


「まぁ、俺は勉強は分野じゃないんで」


 そう、俺の分野は運動だ。それなら凛花に負けやしない。


「負け惜しみね」

「うるへぇ!」


 負け惜しみなのは間違いじゃ無かった為、俺はそう吠えた。


………

……


「恭弥!!モテる秘訣を教えてください!」

「あ?」


 放課後、俺はいつものように帰宅しようとすると、鬼林にそんなことを言われた。

 どうやら野郎達で固まって、どうやったらモテるのかどとういうのを話し合っていた。

 そこで、学年一の美少女である凛花と付き合ってる俺にアドバイスをもらおうという事らしい。


「いや…お前は俺と違って黙ってたらイケメンなんだからよ、まず下ネタ系の事を話すの辞めたらどうだ?」


 強制的に椅子に座らされ、桐原、鬼林、橋本の3人の友人の前でそんな事を話させられる。


「ふっ、そうかそうか。イケメンか」


 腹立つが、3人ともの顔面偏差値はかなり高いのは事実だ。少なくとも俺よりは。


「その辺どうにかすりゃ彼女とか出来るんじゃね?まぁ俺凛花が初の彼女だからそこら辺よくわかんねぇけどな」


 中学の時にもモテる奴というのは一定数居たが、そいつらの口から下ネタが飛び交うことはあまり無かったので間違ってないと思う。


「え…!?お前工藤さんが初カノなの!?



あ、因みにさ、お前工藤さんのどんなとこに惚れたの?」


 3人とも突如、何故かニヤニヤしながらその答えを待っている。


「そうだなぁ…まず俺が惚れた第一の理由が、尊敬出来るってとこだな。凛花って何でもかんでもできる天才で、すげぇ憧れたんだ。んで、それが好意に変わってった感じだな」


 少し懐かしく、恥ずかしい気分になってくる。


「ほー、じゃあ今はどうだ?」

「今は本当になぁ…可愛いよなぁ本当。惚気みたいになるけど、俺の事を心底信頼してるし、優しいし、ツンデレ要素とかあるけど殆どデレだし、普通に俺みたいなやつの彼女でもいいのかって思うくらい超可愛いのよ…」


 半分暴走しかけたが、なんとかこれ以上凛花の事を言うのを止める。頭撫でるとニヤニヤしそうになるのを必死に抑えたり、子猫みたいな言動することとかも、それは俺だけの秘密だからだ。


「ほほほほほぉ…恭弥さん、後ろ振り返ってご覧なさいな」


 やたらめったらニヤニヤしてる鬼林がそう告げる。


「ん?」


 言われた通り後ろを振り返る。そこには、顔を真っ赤にしてプルプル震えている凛花。


「んなっ…!ちょ…何処から…聞いてた?」

「……何処に惚れたの…辺りから…」


 震えた声でそんな事を言う。俺は恥ずかしさの頂点に達し、思わず動揺しまくった声を上げる。


「あぁいや!違う…ことはねぇんだけどさ…!その…なんだ…!凛花はすごいかわいい!」


 別に悪い事言ってるわけじゃ無い。怒られる言われはない。そもそも凛花が可愛いのが悪いのだ。俺は何も間違っちゃいない!!


「あぁもう分かったから!!早く帰るわよ!」

「おう!悪いなお前ら!また明日!」


 俺と凛花は逃げるように学校から帰宅した。


………

……


鬼林side


「何アレ?付き合いたてのカップル?」

「青春だねぇ…」

「恭弥が凛花さん惚れさせたのって、ああいう一途なとこだと思うんだな…」


 俺らはそんな事を口に出す。でもアレだけ一途なのは多分俺も真似できないわな。


「あっ…やっべ。俺糖尿病になったかもしれん」

「さてと…砂糖吐いてきますか」

「あ、待って俺も行くわ」

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