第51話
「えっ…えぇっ…?」
目の前に広がってる光景に、俺は唖然とする。
凛花達が盛り上げに盛り上げまくった文化祭は幕を閉じ、大成功を収めた。
クラス内で打ち上げの話があったが、大勢の生徒が居る前でイチャイチャできない事など考えなくてもわかるので、親が大阪に出張に行ってるから凛花の家で2人で存分に打ち上げをしようという話になったのだが…。
そこには高すぎるで有名な寿司屋の宅配寿司が並んでいた。これは…打ち上げにしてはやりすぎじゃなかろうか。学生のレベルを超えてる気がするんだが…。
「なぁ凛花…因みにこれ…いくらした?」
「恭弥の食べる量が5人前くらいだから…3万円くらいね」
「ぉっふっ…」
打ち上げにも3万は使いませんよ…しかもその大部分が俺のなんでしょ?心痛むわぁっ…。
「気にする事無いわ。これのお返しだから」
「っ…」
そう言って笑みを浮かべながら、大事そうに俺がイタリア旅行でプレゼントしたネックレスを見せる。
「私ばっかり幸せにしてもダメよ。恭弥にもたっぷり幸せになってもらうんだから」
「……了解しましたよ、お嬢様」
………
……
…
「ヒィッ…!!」
「いっ…痛いっす…凛花さん…」
「はっ、ご、ごめんなさい…!」
寿司はとても旨かった。あの量をあっという間に平らげてしまった胃袋に驚きつつ、食事を終えた俺たちはホラー番組を鑑賞していた。
天下の凛花様は幽霊が大の苦手らしく、こんな風に怯えきっていたけど。
『あなたの身の回りにも…居るかもしれません』
そんな声と共に、スタッフロールが流れて番組が終わろうとする。
「おっ…おわったぁ…」
ヘナヘナと力が抜けた凛花は、どさくさに紛れて俺の膝に頭を乗せる。膝枕と呼ばれる体制だ。
その凛花が可愛くて、頭を撫でる。
「そこまで怖いなら見なかったら良かったのに…」
「そんなのプライドが許さないわ…」
「なるほどね〜。つかお前…風呂入れる?」
「………一緒に入ることを許可してあげるわ」
相変わらずの遠回しの言い方。それでも良かったんだが…少しだけ俺の嗜虐心を刺激した。
「じゃあ俺一人で風呂入るわ」
「なっ!?お願いよ!!一緒に入ってよ!!絶対に無理!!無理だから!!」
立ち上がって風呂に入ろうとする俺の服を引っ張る。その顔は半分涙目で、捨てられた子犬の様な目をしていた。
「折れるの早…じゃあ風呂入るか」
「え、えぇっ…」
そして共に風呂に入った俺達であったが、そこでは何もなかったとさ。
………
……
…
「凛花さんや?情けないですよ?」
「嫌っ…離れないで…お願い…」
いつ来ても良い香りのする部屋のベッドで、凛花が俺の背中に抱きつく形になってから早30分が経過しようとしていた。
(今度からいじるネタに使おう)
この姿になった凛花は俺に正直になる。使わない手は無い。恐怖心を煽る様で悪いが、これも戦法の一つだ。
「というか…なんでアンタは平気なのよ…!」
「いやぁ…俺ホラーとか結構好きだし、エンタメとして楽しんでるし、そもそもテレビに映ってる奴って全部加工だからね」
小さく笑ってそう告げると、その数秒後に、恐怖を孕んだ様な声で質問される。
「ちょっと待って…?なんでアンタ…アレが全部加工だってわかるの?」
「え?だってさ
あん中に一切怨霊とかヤバい気配感じなかったし」
そう言うと、凛花はガタガタと震えだして、俺を抱きしめる力がより強くなる。
おっと…背中にマシュマロが…
「ちょっと待って…アンタ見えるの?初耳なんだけど…」
「いや見えはしないよ?だけど感じたりはする。テレビ越しでも伝わる」
確か俺の爺ちゃんがそういうのにズバ抜けてやばかったらしい。街中の人なんかはそういう除霊とかを霊媒師に頼むよりも爺ちゃんに頼んでたらしいし。
そういうのが遺伝したんかねぇ?
「待って…待って…。じゃあ…この部屋の中に居るのかどうかって…わかる?」
「安心せい。この部屋にはおらんよ」
「ほっ…よかった。ビビらせないでよ…」
まぁこの部屋には居ないってだけで
リビングには居るけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます