第48話
???side
「うっわ…」
「背ぇたっけ…」
「イケメン…」
「ちょっ…アレって…」
「え…なんでここに?」
四方八方から俺の噂が聞こえてくる。どうやら俺も日本でもまぁまぁの有名人らしい。
しかし、この学校の女子のレベルたっけーなおい。まぁ恭弥の彼女が別格すぎるだけだと思ってたんだが、この学校ヤベェな。
(まぁいいや…さぁてと…何処にいんだぁ恭弥。わざわざイタリアからスーパースターが遊びにきましたよーっと)
軽くサプライズ気分で、俺は恭弥がいる1年2組のクラスに足を運ぼうとしていた…が…。
「キャーーーー!!!」
「大ファンです!!握手してください!!」
「フランスとの国際試合見ました!!カッコ良かったです!!」
俺の人気がやばすぎて辛い。今日は女の子と遊びに来たわけじゃねぇんだけどな…。
(クソッ…早く恭弥を見つけねぇと…!)
俺はそう願いながらも、握手やサインなどをしまくって時間が潰れてしまうのだった。
………
……
…
「なんか外騒がしいな…」
廊下のほうが騒がしいから、少しだけ疑問に思いながらも執事服を脱いで次に着る鬼林に手渡す。
これで俺の文化祭での仕事は全部終了したので、とっとと自分も私服に着替える。
「恭弥さんはこれから工藤さんとデートですかぁ?」
「ん?あぁ」
「かー!ラブラブカップルが!!爆発しろ!!」
鬼林は顔は悪く無い。つか普通に平均以上、つまり俺以上なのでモテるとは思うがなぜ彼女ができないんだろうか。やっぱり常日頃に下ネタを言ってるからだろうか。
「よし、じゃあ午後は頑張れよお前ら」
『うぃーっす』とやる気のあるのか無いか分からない返事を貰い、俺は更衣室を後にする。
すると、凛花が壁にもたれかかっていた。
「よっ、凛花。待たせた…って、アレなんの騒ぎだ?」
数メートル離れた廊下で、女子が固まりまくってる。男のアイドルでも来てるんだろうか。
「曰く、最近イタリアで爆発的に知名度を高めてる天才の某サッカー選手が来てるらしいわよ?」
ニヤリと笑ってそれを告げる。抽象的だが、それが当てはまる人物が1人脳内で過ぎる。それを経て俺が出した答えは…。
「よし凛花、じゃあ文化祭デート行くか」
「いいの?アレ」
「いやぁ俺そういうの興味ないし」
フル無視であった。だが頭の中で謝るつもりも無い。なぜなら俺の優先順位は凛花一択なのだから。
………
……
…
「ほら、口開けなさいよ」
「はむっ」
「なっ!」
人が多く、「バカ…人が多いからダメだ」という反応を期待したんだろう。凛花は俺をからかおうとニヤニヤしながらそう言って、唐揚げを刺した爪楊枝を向けてくる。
俺は遠慮なくそれにかぶりつき一口で食べる。
「うんっ…美味いな。ほら、凛花も食え」
「あ、あの…一応ここ…外よ…」
「先に仕掛けたのは凛花だろうに」
「ううっ…あむっ!」
髪を掻き上げてたこ焼きを食べる凛花は…なんというか…はい。
そしてとてつもない嫉妬の嵐の視線を受けながら、あらかじめ決めておいた回りたい場所に向かった。
「あっ!恭弥!やっと見つけ…ぐべぁっ!!」
後方から声が聞こえてくるが、大量の女子に揉まれたのでフル無視を決め込んだ。
………
……
…
「うるぉああああ!!!」
「ムゥゥゥッ!!」
1年3組、出し物『腕相撲大会』10人程度の腕自慢が参加者のイベントだ。
いろいろ省いて今は決勝戦。俺はアメリカとの留学生、バフォルとの熱戦を繰り広げていた。
「うぉぉおおお!すっげぇ!!」
「どっちも互角だ!!」
「これ…机壊れるんじゃね?」
「ねぇみんな突っ込まないの?恭弥って純粋な日本人だよ?なんで黒人とパワーで互角なの?おかしいでしょ?ねぇ」
「……大熊と龍の戦い…」
熱い歓声が飛び交う。俺も凛花の前で恥を晒すわけには行かず、歯を食いしばって必死に耐える。
ミシミシ、ギシッ、ギギギッ、と机から危ない音がするが、力は緩めない。いや寧ろ、余計に力を振り絞る。
「ウッ…ォォッ…!」
徐々にバフォルを押して行き、傾いてから凡そ30秒。漸く手の甲を机につける事に成功する。
「黒人に勝ちやがった…」
「キモい…」
「あぁ…なんか色々すっ飛ばしてキモいよな…」
勝ったのに…勝ったのに…この扱いは酷いんじゃなかろうか。
………
……
…
「ふぅうっ…楽しかったな」
「ふふっ、そうね」
近くの自販機のベンチで体を落ち着かせる。こう言うイベントを彼女と回るというのは初めてなので、やはりはしゃいでしまうものだ。
缶ジュースを喉に流し込む。
「凛花はバンドかぁ…何やんの?」
「結構有名な曲を選んだわ。例えばLemo〇とか、ピースサ〇ンだとか…後最後はゴッ〇ノウズってのをやるらしいわ」
「あーね…」
王道だな…そしてピー〇サインとゴッドノウ〇は特にアニメを見てきたような奴なら喜ぶだろう。俺も例外じゃなく。
「楽しみだな。凛花のバンドする姿見るの」
「ふふっ、期待しててね」
凛花が小さく微笑むと、俺も自然と笑う。その場をほんわりとした空気が包み込んだその時だ。
「み、見つけたぞぉ!!恭弥ぁ!!」
「あっ…やっべ…」
さりげなく逃げていたが、とうとう見つかってしまった。
「わざわざイタリアからご苦労なこった」
イタリアから来た某サッカー選手というのは間違いなくコイツだ。
身長は少しだけ伸びたんじゃないだろうか、鋭い目つきに白髪の頭は未だ健在のその男。
「久しぶりだな、ジルガ」
「おう!!久し振りだなぁこんにゃろぉ!!」
俺はめんどくさい男と再会してしまったようだ。
「出来れば会いたくなかった…」
「本音が漏れてるわ、恭弥」
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