第46話
「がぁ…!クッソ…なんだこれ…動きにく…」
「まぁそう言うなって恭弥。似合ってんぞ」
「あはは!恭弥も龍弥もなんかすげえ違和感!!」
教室に設置されたカーテンで隠しただけの超簡易更衣室で着替え終わり、俺らは誰もが居る教室に出た。
「うぉっ!?」
「すっげぇ…流石はウチのクラスのイケメン2強だぜ…恭弥も…まぁ体育祭補正でイケメンになってるぞ?」
「あ?」
それ元はあんまイケメンじゃ無いって事だよな?フォローにもなってないし、なんか無性に腹が立つんだが。
まぁ俺は凛花以外には別にモテなくて良いんだけどよ。
「ん?なんか…」
廊下が騒がしい様な気がする。
ドドドド!と音が聞こえ、その音はどんどん近づいてくる。
「恭弥が執事服着たってほん…っと…!?」
だんだんと声が小さくなり、別クラスから走って来たんだろう凛花と目が合わさる。
「よ、よぉ…凛花…その…なんだ。似合ってるか?」
「えぇ、とっても似合ってるわ」
ニッコリと表裏のない笑みを浮かべてそう言ってくれると、安堵の息を吐く。
よかった、凛花に褒められたのなら…。
「っておい、鼻血出てんぞ。やっぱ煩悩丸出ししてたなおい」
そう言ってポケットティッシュを手渡す。
「してないわ。ただ脳内で恭弥がどんな姿になってるかは教えられないけど」
「おい辞めろよ?それ想像の中だけにしとけよ?」
「え…?なんで?」
『はぁ?現実でもやるに決まってんでしょ?』みたいな顔すんじゃねぇ。
「いやダメだからね?倫理的にアウトだから」
「私と恭弥が倫理的にアウト…?」
小さく、俺以外の誰にも聞こえない様な小さな声で呟く。まるで『もうやる事全部やってんだから恥じらうんじゃねぇ』みたいな事を言ってる様だった。
「それにしても恭弥、その格好似合ってるわね。20万出すから私が店に居る間は私専属になりなさい。良いわね?」
「いや辞めてね?ホントに冗談に聞こえないから」
凛花が20万出す、というのはマジで冗談に聞こえない。以前俺が冗談で四十万くらいする筋トレ器具が欲しいと言って居たら、普通に買おうとしてたのを必死に止めた記憶があるからだ。
「あら、利益だけを考えたら他の客なんか相手にしてるより私だけのものになった方がいいじゃない」
「お客様は神様なんですよ?そんなこと言ったらダメじゃないっすか…」
「あら、それをいうなら私も神よ?それにより金を落としていくんだから私はより大きな神よ」
もう暴論だよ…酷いわウチの彼女。俺のためにそこまでしますかねぇ?
「それに私がフリフリのメイド姿で他の男の接客をしてる姿を想像してみなさい。恭弥だって嫌な筈よ?」
「100万出す。専属になってもらおう」
勿論それは凛花を堪能した…じゃなくて、他の男に接客する凛花の姿に嫉妬しただけであって、決してメイド姿の凛花を堪能したい訳じゃない。あくまで凛花を守るための手段なのだ。
「つまりそういうことよ」
「はっ…!」
はめられたことにようやく気づいた。
「じゃあ、私が恭弥を買う事になんの反論もないわよねぇ…?」
「待て!お前絶対ロクな事考えてないだろ!!」
目がそう言ってる。今のコイツはヤバイと、本能的に感じている。
クソッ…こうなったら。
「春馬!救助を…」
「いやぁ…工藤さんに買われるのなら本望じゃね?」
「俺は本望じゃない!!良いか!?コイツは俺の事になったら容赦な…!」
口を押さえつけられて喋れなくなる。コイツらは普段俺がどんな扱いをされているのか知らないのだ。
「ということよ、1年2組みんな。勿論その分のお金は払うから、この犬を私に買わせて…ね?」
凛花はそう言って笑みを浮かべる。その笑みに、複数の男子は心を射抜かれる。
彼氏持ちといえど学園一の美少女の笑み…そんなのに反論出来るわけがない。
「「「「ど、どうぞ…」」」」」
買収されてんじゃねぇよお前らぁぁあああ!!
「じゃあ、文化祭当日、よろしくね…?犬っころ」
「辞めろよ…?マジでお前…限度を…な?」
「ふふっ、分かってるわよ」
コイツがマジで限度を理解してるのかしてないのか、それは本人にしか分からない。
だが、その言葉を悪魔の様な笑みを浮かべながら言ったからか…とんでもなく嫌な予感がした。
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