第36話

「どういうことかなぁ恭弥くぅぅぅん!?」

「その辺ちゃんと説明してもらおうかぁぁ!?」


 あの公開キスから数分後、俺はクラス内で監禁されていた。

 まるで囚人のようにして教室の隅の椅子に座らされ、目の前には凛花を狙っていた野郎達だ。


「まぁアレだな…あの噂は、俺がお前らを凛花に近づけさせたくなかったから流した噂だ。別に嘘は言ってないだろ?」


 俺は何も詳しくは言ってない。ただ凛花に彼氏が居ると言っただけだ。


「確かに嘘は言っとらんな」

「んだんだ」

「正直…お前が彼氏なら俺らは文句は言わんよ」


 おっと、思ったよりもみんな話がわかるやつだった。


「すまん、絶対凛花を不幸せにはしないと約束する」


 こいつらの中には、真剣に凛花に恋をしていた奴も居たはずだ。だけどこいつらは笑ってそれを受け入れた。


「おうよ!不幸せになんかしたらぶっ飛ばすからな!」

「ちゃんと工藤さんを養えよこん畜生!」

「あーあ、やってらんねぇよバーカ!爆発しろ!」


 そんな声が俺にかけられるのとほぼタイミングは同じくして、始業のチャイムの音が鳴り響いた。


………

……


「割と大丈夫だったな…」

「私もよ。案外男子から反感買うと思ってたけど、やっぱりスポーツテストで全部の一位を掻っ攫った恭弥だったし、ぐうの音も出なかったわ」


 昼休みの屋上で、俺と凛花は共に弁当を開いてお揃いの弁当を食べながら、お互い朝にあったことを話していた。


「まぁあくまでこの学年の中の話だけど」

「バレー部パイセンの話があるからな」


 あの人は元気にしてるだろうか。あの日以来顔を合わせない。まぁ学年が違うし当たり前なんだろうけど。


「にしても…相変わらず凛花さんモテすぎだわ。彼氏の俺の身にもなってもらいたいもんだねぇ」


 自分の彼女が異性に告白されるというのは、やはり何度聞かされても心臓に悪い話なのだ。


「怖いの?私が他の男の方に行くかもしれないって」

「俺以外好きになるつもりもねぇ癖に何抜かしてんだ」


 もう疑わない。凛花は俺の事が大好きなんだから、絶対に他のやつに靡くことは無い事を断言する。


「バレちゃった?じゃあお詫びとして、あーん」


 舌を軽く出して悪戯じみた笑みを浮かべて、ミートボールを箸で掴んでそれを口元に持ってくる。


「……んぐっ」


 ありがたく間接キスを貰い受け、甘口のミートボールを噛んで飲み込んだ。


………

……


凛花side


(ぁぁああああぁぁあああ!!ヤバイ!!ヤバイ!!どうしたら良いのこれ!!!)


 頭の中で波の様に押し寄せてくる煩悩を振り払い続けるがそれも時間の問題。既にダムには亀裂が入っていた。


「すぅっ…すぅ…」


 私の肩に頭を乗せて眠っているのは、私の愛しい恋人だ。風が心地よかったのか壁にもたれかかったまま眠ってしまった。

 だけど、ズルズルと体制を崩してやがて私に頭を乗せる様な体制になっている。


(良い匂いする!カッコいい!!抱きしめたい!!でもここ学校だもの!!我慢しなさい!!)


 そう、ここは学校。いつもみたいなR18指定ギリギリな事は出来ない。だけど…だけど…。


『ふふふっ、良いじゃない。もう林間合宿でやっちゃったんだし、学校でやるのも良くない?』


 頭の中で悪魔の私が語りかけてくる。


『ダメよ凛花!匂いを堪能して抱きついてキスするくらいにしておきなさい!』


 天使…?の私がそう語りかける。

 それも十分ヤバイ様な気がするけれど、それの方が良い気がしてきた。だってこの状態の恭弥を放置するなんて事は出来ない。今だって襲いたいのを必死に我慢してる。


『悪魔の私、それなら納得でしょ?』

『そうね…。私の案は家でも出来るもの。よくやったわ、天使の私』

『ふふっ、貴方の案も魅力的だったわ』


 脳内で結論が出た。匂いを嗅ぎまくって撫で回してキスをするという結論に。


(うん、そうしましょう。大体こんな無防備で寝る恭弥が悪いんだから…)


 そして私は、欲望のままに恭弥を貪った。


………

……


「んっ…?なんか…唇がしっとりしてるし…髪がぼさぼさになってるんだが…」

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