第20話

「愛してるゲームってのをやってみましょう」


 俺が慰めものにされた翌日、凛花はそんなことを言い出した。愛してるゲーム、それは相手に愛してる、とかの愛の言葉を囁いて照れた方が負けという単純なゲームだ。


「別にいいけど、お前耐えられんの?俺お前の事すっげぇ愛してるけど」

「っ…!」


 凛花は顔を赤くして仰け反る。


「い、今のなし!!そもそもゲームが始まってない中でやるなんて卑怯だわ!!」

「へいへい…」


 もうこれ完全に俺が勝利する未来しか見えないな。まぁいい。スポーツ以外で凛花に完膚なきまでに勝つなんて、滅多にないチャンスだ。

 俺は欲望8割勝利への渇望2割でそのゲームを受けることにした。

 お互いが何故か正座で対面する。


「じゃあ俺から行くぞ」

「ふん。来なさいよ、恭弥なんかの貧弱な攻撃なんて屁でもないんだから」


 くいくいっ、も人差し指を曲げて挑発する。確か愛してるゲームは、言葉を改良させて相手を照れさせたらいいんだよな?


「好きだ。凛花」

「っ!」


 少しだけびくっ、と肩が震えるが、まだ照れては居ない様子であった。不意打ちが通用しなかったか。


「好きだ、凛花。好きだ、好きだ、好きだ。愛してる。ずっと、これからも」

「あ、あわ…あわわわっ…!」


 凛花と目を合わせて、顔を近づけながらそれを言う。凛花は顔を真っ赤にしてあわあわ言ってるので、これはもう俺の勝ちということでいいだろう。


「よっし、俺の勝ちだな」

「あ、アレは卑怯よ!!あんなに畳みかけられたら耐えられるわけないじゃない!!」

「はっ!俺は本心を言ったのによ、それが卑怯だと?」


 俺が凛花を愛してるのは言うまでもない。本心を言って何が悪い。


「くっ…くぅうっ…!なら次は私の番よ!恭弥!そこに座りなさい!!」

「はいはい」


 大人しく凛花のベッドの上に座る。勝者の余裕という奴だろうか。今更凛花が何を仕掛けようとしても平気でいられる自信がある。


「じゃあ…行くわよ?」

「ほいほーい」


 自信たっぷりの顔でそれを告げると、突如唇に柔らかい感触。


「っ!?」


 俺の顔は赤く紅葉し、目線の先には同じく顔を赤くしている凛花。

 そのキスは数秒で終わり、凛花は俺をベッドの上に押し倒す。


「好き、好き、好き。本当に大好きよ恭弥」

「あっ、やっぱごめんほんと待って…」


 ヤバイヤバイヤバイヤバイ!! さっきのキスで普通に理性がぶっ飛びそう!!!

 落ち着け、落ち着くんだ俺!!


「本当に愛してる。大好き。そんな言葉じゃ足りないくらい…」


 時々凛花は暴走する時がある。それを俺は暴走状態と呼んでるんだが、こんな時みたいに、愛が強すぎて起こる状態をヤンデレモードと呼んでいるんだが、それが発動しちゃったっぽい。


「ねぇ恭弥…良いでしょ?もうゲームなんて関係なしで。求めていいでしょ?」

「…‥了解しましたよ」


 時刻は午後14時だというのに、俺らは部屋のカーテンを閉める事になるのだった。

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