第18話

「ありがと恭弥。橋本先輩からの迷惑連絡とかはもうパッタリ止まったわ。相当効いたみたいね」


 俺の家のベッドに腰掛けて、相変わらず美しい笑顔を浮かべる凛花。


「そりゃあな〜。あんだけボコボコにされりゃ心折れるだろ。というか少しやりすぎたんじゃないか?」


 まさか俺がサポート役に回るとは思わなかった。いや、俺もまぁまぁ点は取ったんだが、それ以外は全部、本当に全部凛花が点を取ってしまい、橋川先輩の顔が本当に心が折れて絶望してた。


正直…ほんの少し同情した。


「あら、じゃあ恭弥は私があのままで、ストーカー紛いのことされて、襲われても良いって言ってるの?」

「それはダメだ」


 そうなる前に手を打っておいて正解だったな。うん。


「それより…」


 凛花はスマホをベッドに捨てて、椅子に座っている俺に座る。お互いに対面している状態だ。


「なんだよ…」

「夏休みになったのよ?」

「そうだな」


 学生の宝である夏休みに突入した。どうやら凛花にもかなり遊びの誘いが来てる様だが、全部断って俺の家に来ている。俺?俺は友達とかいないから。


「その…海に行く…というのは少し贅沢だけど、水着を見せるくらいならやってあげても良いのよ?」

「………別に俺はどっちでも」


 恋人に言ったら1番イラつかれるだろうセリフを平然と吐く。これは単なる会話じゃない。駆け引きだ。

 先ほど凛花は、俺がどうしてもと言うのなら見せてやろう、と言うつもりだったのだろう。だがそれを回避すればどうなるのか。


「え…ぁ…あぁ、そう…?」


 プライドの高い凛花は自ら見せに来るということを絶対にしない。最近俺が振り回されてばっかりだったから、今日は主導権を握らせてもらうとしよう。


「ほ、本当に良いの?もしかしたらもう二度と見れないかもしれないのよ?」

「なんだ?俺に見せたいならそう言えば良いじゃねぇか」


 そんな痴女の様な事、いつもの女王様凛花様なら絶対しない。するとしたら欲求の限界が来て現れる甘えん坊凛花だ。


「私の水着姿なんて、お金を払ってでも見たいという人は山ほど居るのよ?それを恭弥にだけ、特別に見せてあげようと言うのよ?」

「そうか〜」


 そうやって凛花の猛攻を何度も何度も受け流す。すると2分も経たずに、凛花の限界がやって来た。


「なによ!!なんなのよ!!折角恭弥の為に水着新調したのよ!?中に着込んでるの!!良いから黙って見なさい!!」


 計算通りに行きすぎて本当に吐き出しそうになる。ダヴィンチ再来とも言われた超万能型天才が、俺とのことになると途端にポンコツになる。


「ははっ、ほんと面白いな凛花。嘘だよ。ホントは超見たいよ、凛花の水着姿」

「ふふん!そうよ!それで良いのよ!全くしょうがないわね…」


 そう言って凛花は服を脱ぎ始める。当然の如く脱ぐから思わず「ん!?」って声に出してしまった。


「どう?」

「………」


 まさかの黒のビキニ。凛花の清楚な感じにぴったりな、大人の色気がより引き立てられる、ビーチに行けばナンパ待ったなしのものだ。


「あー…あれだな。凄い似合ってる」


予想の遥か上を凌ぐ破壊力。

言葉が出ない。

鼻血が出そう。


「つかさぁ、なに?両親も仕事の午前中にいきなり来て水着姿なんか見せて…誘ってんの?」

「……えぇ、誘ってるわよ?」


 断言しやがったこの野郎。と言う言葉と、据え膳食わぬは男の恥。ということわざが頭の中に過ぎる。


「夏休み初日はやっぱり…ね?」

「はいはい…」


 こんな事してたら、いつか誰かにバレてしまうんじゃないだろうか。

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