第16話
「良い恭弥。まずバレーで1番重要なのがサーブよ。これを入れないとまず点にはならないからね」
球技大会はバレーに参加すると決めたあの日から数日、場所は土曜日の市民体育館。ここでは俺の凛花の2人だけしか存在していない。数百円程度で貸し切りは可能だ。2人でネットを張って、今は指導を受けている。
「まずはお手本見せるわね」
「おう」
フッ、とバレーボールを上に上げて、ラインギリギリのところで飛び上がる。ジャストのタイミングでボールを叩き、見事コートの中に落ちる。
「あら、やっぱり久々だから威力ないわね」
「いや普通に凄すぎるだろ…」
「ふふっ、そうでしょ。そうでしょう?」
自慢げに腕を組んでふふんっ、と笑うが、ニヤケる顔を必死に堪えている凛花。どうやら俺に凄いと言われるのがよほど嬉しいらしい。
「でも恭弥はかなり身長も高いしパワーも動体視力も身体能力も私より上よ。見様見真似で真似してる私が出来てるんですもの。恭弥にもできるわ」
ん?ちょっと待て。さっき聞き捨てならない事が聞こえた様な気がする。
「見様見真似…って…マジ?」
「マジよ。私見たモノは大体再現できるもの。まぁあくまで大体ってだけで、男子の様にパワーのあるプレイとかは無理だけど」
「それでもお前…十分怪物だよ」
………
……
…
俺と凛花の練習は思ったよりも順調だった。コーチとしても超一流の凛花は、俺に色んなやり方を教えてくれた。
そのお陰でスパイクやらレシーブやらサーブやらブロックやら、結構色んな事を出来る様になっていった。
「やっぱり恭弥、アンタ元々の運動能力が化け物ね。ブロックとかスパイクの時胸がネットから出るっておかしすぎでしょ…。スパイクも…どうすんのよあれ」
天井に挟まってしまったボールを眺める。あれはもうどうしようもなくないか?後で管理者に謝るしかない。
「仕方ないって。後でちゃんと謝ろう。わざとじゃないんだしさ」
「まぁそうだけど…ってか…何気に私らがこうやってスポーツするのって、初めてじゃない?」
確かにそうだ。中学の時は球技大会なんて無かったし、こうやって凛花と共にスポーツをする、なんてのは初めてだ。
「だけどすげぇ息合ってるよな。俺ら」
まだ息があってるのかは分からない。だがそれでも、速攻の練習でも俺は一回もミスらなかった。
「それはそうでしょ。私と恭弥なんだから」
恥ずかしい台詞を吐いた凛花を、数秒間放置しておく。すると次第に顔が赤くなり、俺の胸倉を掴んで羞恥心を押し殺そうとする。
「何よ!!間違ってないでしょ!?なのになんで沈黙するのよ!!」
「いやぁ…やっぱ俺の恋人可愛いすぎるわ。その通りだよ」
そう言って凛花をハグすると、「ふにゃ!?」と猫の様な高い声を上げる。
「もう…」
ゆっくりと俺の背中に腕を回し、凛花も俺のことを抱きしめるのだった。
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