第15話
凛花様スパルタ指導付きの期末試験を終了し、残すところ全校生徒が行うビッグイベントは一つの行事しか無くなった。
「球技大会ねぇ…」
夏休みが始まる前日は、終業式とかじゃなくなんと球技大会だ。終業式は前々日で終わらせて球技大会とは、学校も中々粋な事をしてくれる。
そう思いながら、俺は四階にしか無いナタデココジュースを購入し、1年の階である三階に降りようとした時であった。
「ん?」
目の端で捉えたのは、体育館に繋がる、突っ立っていれば風が吹く開放された渡り廊下。
そこには凛花と、身長の高い男が立っていた。
「んっ…」
独占欲という黒いものが、俺の心を刺激する。流石に俺だって他の男と話すな、接触するなという様な束縛男では無い。
だけども、だけども気になってしまうのはしょうがないじゃないか。
俺は気がつけばそこに小走りで向かっていた。
………
……
…
「一体何の用ですか、橋本先輩。早くしないと休み時間が終わってしまいますよ」
俺は建物に隠れつつ、ギリギリ会話が聞こえる範囲で聞き耳を立てていた。橋本…どっかで効いたことある名前だ。それにあのデカイ身長…あぁ!!
(アレだ!!前に凛花にちょっかいかけてた先輩じゃねぇか!)
幾つか一位とったら本音を聞かせろなんて恥ずかしいこと言っておきながら俺に全部一位掻っ攫われた恥ずかしい先輩だ!!!
「ならここで俺とサボろうぜ」
「お断りします。授業が優先です」
その誘いを一刀両断。流石は凛花だ。俺の前だと見事なツンデレだが、この学校での凛花は高嶺の花、学園に咲く花、氷結の女帝なんて言われているからな。
(まぁ、俺の前だと普通のポンコツになるから本当に可愛い)
前に寝言で「恭弥ぁ…どこぉ…」なんて言ってたのはホントキュン死しかけたくらいだ。
ヤッベ、想像してきたら凛花とイチャつきたくなってきた。
「はぁ…お前さぁ、良い加減素直にならないとダメだぜ?俺と付き合いたいっていう女結構いるんだから」
幸せな気分が一転、気持ち悪さで吐き気がしてきた。
「何度も言ってますが、そういうの迷惑です。私にはその…彼氏いますから!」
その言葉を聞いた途端「っ!?」と驚いてしまった。だけど直ぐに俺が彼氏いるって前バラした事を思い出す。
結構学年内に浸透しているその噂、凛花がそれを正式に使おうとしたのは初めて見るかもしれない。
「あぁ、そう言えば男除けになるもんな。でも安心しろ凛花、これからは俺が守ってやる」
この人頭に花湧いてるか脳みそ腐ってんのかのどっちかだ。じゃないとこんな自意識過剰な人間は生まれない。
最早驚き通り越して冷静になってるんだけども。
「はい?」
ぷっ、はら凛花も訳わかんない、みたいな顔してるじゃん。そろそろ許してやれよ先輩。
そう思ってると、唐突にこっちを振り向いた凛花と視線が合わさる。
「あ…」
バレちゃった。となれば仕方ない。偶然を装って外に出るとしよう。
「工藤さーん!なんか先生が進路の事で職員室来て欲しいって!」
成績超優秀な凛花なら、そんなことをそんな事を言われてもなんら不思議じゃないだろう。もちろん嘘だけど。
「
「
心と外でそんな会話をしていると、唐突に俺の肩が掴まれた。
「お前さ、凛花から話しかけられる様になったからって調子のんじゃねぇぞ」
肩を突き飛ばして俺から離れていく。全く酷いことをする。
「大丈夫?」
「まぁ…というか凛花、お前またあの先輩に付き纏わられてたのかよ…」
「…ま…まぁ…」
若干申し訳なさそうに顔を俯かせながら言うが、凛花は何も悪くない。
でもこりゃ、早々に何か手を打っておかなければ問題になりそうだ。
「なぁ凛花、あの人って確かバレーボールやってたんだよな?」
「え…え、えぇ…」
バレーボールかぁ。あんまやった事ないけど、頑張れば何とかなるだろう。
「なぁ凛花、俺と球技大会でチーム組んでくれよ」
「え?とはいっても、私サッカーじゃ寧ろ足引っ張るわよ?」
「いやいや、サッカーじゃねぇよ」
頭に?マークを浮かべて考え込む。ここが学校じゃなかったから抱きつくほど可愛い。
「バレーボール」
「はぁ!?アンタ…や、やったこと…」
「ほぼねぇってばよ」
でも、好きな女と嫌いな男がペアを組んで、息ぴったりの連携技叩き込んでみろ。心が折れてきっと凛花を諦めてくれる事だろう。
というわけで、練習にいってみよー!
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