第11話
「すっげぇ…!金閣寺!」
確か世界遺産に登録されていたはずの金閣寺。間近で見るとここまで神々しいものなのかと驚き、俺は少しだけ興奮する。
「ふふっ、じゃあ写真撮りましょうか?」
「うおっ…出たよ…」
凛花が誕生日に貰ったという何十万もするデジカメ。その中には殆ど、というか全部俺の写真が入ってた。
「ほら、こっち寄りなさい」
チョイチョイと手招きする。とは言っても十分近づいている。そして、凛花がシャッターを切ろうとした時。
「むごっ!」
顔面に感じる柔らかい感触。強引に胸に頭を押し付けられ、そのままシャッターが切られると、凛花は笑いながら俺を解放する。
「お前…」
「気に入らなかったならもっかいとるけど?」
「………じゃあ頼むわ」
まさか言うとは思わなかったのか、凛花は意外そうな顔をしながらもう一度カメラを構えた。
「じゃあ取るわよ?3・2・ぃっ!?」
やられたらやり返す。倍返しだ!
凛花の頬に軽くキスをすると、真っ赤になってシャッターを切るのを忘れたように体が膠着する。
すかさず俺がシャッターを切り、無事その姿を写真に収めた。
「おあいこ様だな?」
「え…え…えぇ…!そうね!あいこね!?」
どう考えてもダメージ的に凛花の方が重傷だ。だけど…まぁここでおあいこって言っておいた方が余計に凛花も傷つくだろう。
「じゃあ次に移るか」
「あ…あぅっ…」
………
……
…
その後の観光地巡りも酷いものであった。隙を突こうとした凛花を、神聖な場所だからと軽くいなしてみたら、少し涙目になってしまった。
流石にかわいそうだったので抱きしめてみたら、ケロっと機嫌が治って猫の様に擦り寄ってきた。
「ふふふッ…恭弥…」
そして場所は変わり、俺らが気兼ねなくイチャつける旅館に到着した。もう完全な発情状態になってしまって居る凛花は、まだ7時だというのにそのつもりだった様だ。
「凛花、まず飯にしよう。お楽しみはその後風呂に入ってからだ」
「ダメよ、今やるの。もう我慢出来ない」
ちょっとずつちょっとずつエサを与えて徐々に満腹にさせていこうとする作戦は、失敗に終わってしまった。どうやら俺は凛花が俺に対する感情を甘くみていたらしい。
「…凛花さん…アンタ俺の事好き過ぎないか?」
まさか一日中愛されるとは思っていなかった。どんなに飯を食ってても腹いっぱいになれば一度は見たくなくなるはずなのだが。
「えぇ、好きよ。これ以上無いほどに、壊れてしまうほどに。いえ、もうこれは愛情と呼べるのかしらね。これはもう依存に近いものだと思ってるわ」
「だいぶヤバイな」
それが凛花が俺に抱いて居る感情。好きという気持ちは揺らがない、だがその好きが行き過ぎて居る状態だった。
「そう、だから私は恭弥が私を愛して居る以上に愛してるの」
「はぁ…?」
流石にその言葉には、俺もカチンと来た。良いだろう。もう晩飯も風呂も入らない。
凛花の両腕を拘束し、布団に押し倒す。
「それは譲れねぇよ。お前に見捨てられたくねぇ一心で血反吐吐いた俺の方がよっぽどイカれてんだよ」
「じゃあ、それを証明してみなさいよ」
凛花は俺の舌に強引に絡める様なキスをして、部屋の電気を消した。
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