第10話 闇属性魔法の練習

 人気の無くなった砂風呂屋はその暗さもあって、一層がらんとした雰囲気を漂わせている。

 俺は気を取り直すと、リコに見守られながら目を閉じ、意識を集中させる。


 すぐに、意識の中に現れる、六つの扉。


 ──光──水──風──地──無──闇


 それぞれが魔法属性を、ひいてはカーストを表す、六つ。


 しかし相変わらず、水属性の扉が僅かに開くだけで、他の扉はびくともしない。

 ただ、そうはいっても、それぞれの扉の堅さは均一ではない印象がある。


 特に堅いのは、光と闇。

 それぞれが最高位と、最下位をぶっちぎって穢れとまで呼ばれている二つ。

 この二つは、本当にピクリとも動く気配がない。

 逆に一番手応えを感じられるのは、地属性の扉。

 多分、レプリの両親が地属性で、レプリ自身も俺という横やりがなければ地属性だったのだろうと推測できる。


 そうは言っても開かないのは変わらないのだが。


 意識の中で、ガタガタと闇属性の扉を揺すってみる。

 なんの手応えもない。


 仕方なく、ジーと扉を見ながら、いつしか意識は水属性魔法を初めて使った時へと移っていた。


(あれは、もう極限まで喉が渇いてしかなかったのが、どう考えても扉が開いた要因、だよな。ただ、扉の開きぐらいが明らかに狭い。

 レプリの記憶では、水属性のカーストの人間はもっとドバドバ水を出していたはずだ。なんと言っても、光都に暮らす人達の水を賄うぐらいだからな。

 水属性カーストが順列二位で、順列が高いほど構成人数が少ないって言うレプリの記憶。それが正しければ、水属性カースト一人で十人以上の人間の水を負担していたはずだ。ざっとの計算だけど、まあだいたい合ってるだろう)


 俺は一度目を開けると、大きく伸びをする。


「と、すると、危機的状況で無理やり扉を開いたのは正規の方法じゃあ、無さそうなんだよな……」と思わず漏れる独り言。


「そうね、それは命の危険もあるのだけれど、それ以上に扉が『歪む』危険もある、危ないやり方よ」


 ──!


 思わず振り返った先には、興味深そうにこちらを見つめるセフィの姿があった。

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