第146話 Tミッション臨時招集・前編
「なっ、菌探知が亀裂内で反応してやがる」
「っ、これは……てか伯爵たち、そこにいるの分かっているんだけど?」
「だよなあ……つーかこれ、魂食獣と合体した魔獣の群れだぜ。亀裂の外に向かって歩いてやがる」
実は補給拠点破壊後にも伯爵は独自に眷属を用いて、様々な亀裂の探索をしていた。
それはうまく使えば様々な場所への移動をさらに容易にするのではないかというハーネイトとの話を聞き、ならば探してみようと考えたのである。
その中で偶然、異様かつ反応の多い場所を見つけた伯爵は急いで現地に向かおうとしていた。
しかしそのせいで覗いているのがばれた伯爵は仕方ないと思いつつ、今何が起きているのか菌探知の力でハーネイトたちに教えたのであった。
「場所はここから東へ10分ほど離れたある廃墟の壁の亀裂だ。全員緊急招集!」
「もう、邪魔をする奴らはぎったんぎったんにしてあげるから!」
伯爵の話を聞き、すでに数体亀裂の外に出ていると考えたハーネイトは急いで招集をかける。
しかし多くの人は既にホテルを後にし帰宅したり用事を済ませており、一応Cデパイサーで通達したがどうなるかと不安であった。
「……確かにな。今出れるのは?」
「私とパピーはいつでもいいわ」
「私と星奈さん、それと韋車さんと田村先生、宗像さんもいけますわ」
しかしすぐに連絡が各員から届き、天糸文香及び文治郎、亜里沙と星奈、韋車と田村、宗像も参加できることをハーネイトと伯爵は把握し、場所を示すデータを彼女ら宛に転送したのであった。
「済まない先生、今から外せない用事があってな」
「俺たちもだ兄貴、すまねえ……」
「分かった、来れる人たちだけで現地に向かう。場所はデータ転送しておく。先に現場に向かうので各自ホテルの屋上ポータルを使ってくれ」
九龍や翼などは参加できないことを聞いたハーネイトは、至急屋上に向かいポータルでの移動準備を指示した。
ハーネイトは先行し現地調査を行うと伝え、自身のもとに跳んでくるように伝えると急いでエレベーターに乗り、ホテルの裏口から静かに、しかし素早く発生場所に向かい移動し始めたのであった。
幸い発見現場近くに、つい最近中継ポータルを設置していたため、そこから降りて向かうことになった。
「現場に到着したが、やはり嫌な予感が当たった。だが下手に仕留めて逃げられると問題だ」
伯爵が見つけた亀裂のある場所は、既に人のいないマンションとその公園の中にあった。どうもこの公園の中に数匹、魔獣が隠れており行方が分からなくなるまで時間の問題であった。
もしそれが血徒感染体だとすると大変なことになる。一刻も早く討伐しなければならない状況であった。
「先生、今到着しました」
「あの後だけに、来られたのは私たちだけです」
「仕方ない亜里沙。だが助かる。全員で外に出た魔獣を仕留めてくれ。伯爵は血徒感染個体がいないか調べて!」
「了解、しかし人手が欲しいな」
ハーネイトは、響と彩音、亜里沙と星奈、ジェニファー及び韋車、田村、宗像とスカーファ、黒龍とリシェル、ヨハンが来てくれたのを見て亀裂内では4人1組の3チームで行動するように指示をした。いわばTミッションの形式である。
「すでに数体外に出ているが、近くに反応がある。まずは2人1組で、確実に仕留めるんだ」
「あんなもののさばらせてはいけないっす兄貴!」
「全く、いつから我ら天糸一族は……ああ、わしらも退魔の家系だったな」
「パピー、行こう!」
「分かったぞ娘よ」
亀裂の中にも多数の反応があるが、勿論外に出ているほうのが優先なため、一旦指示を切り替えてバディによる連携により、動きを封じながら魔獣を仕留めるように通達する。
「貴方方はもう……でも、倒さないといけませんわ」
「俺の妹や生徒たちに手をかけたやつら……許すまじ!」
「反応は5体だ、敷地を出る前に倒せ!私もやる!」
文香と文治郎のやり取りに亜里沙は少し頭が痛くなったが、早速憑依武装を行い戦闘態勢に入る。
そのあとすぐハーネイトはアクションを起こし、紅蓮葬送を素早く展開し隠れていた魔獣を仕留めにかかる。
「紅蓮葬送・紅蓮棘刺!」
「ピギャアア!!」
「まず一体!彩音、響、そこに隠れているのを倒せ!」
的確かつ周りに被害を与えないようにしてハーネイトは一体仕留め、それと同時に響と彩音に、近くにいる草の茂みにいるのを倒せと命令する。
「そこかよ!憑依武装・言乃刃!」
「いっくわよ!音叉薙刀!っせーーーい!」
「ゴガアアッ!ッ……」
新たな戦闘技術を難なく使いこなし、響と彩音は息を合わせ跳びながら強襲を仕掛け、イノシシ型の魔獣一体をあっという間に倒す。
「ヴィラン・カーズ、力を貸してくれ!」
「良かろう、行くぞ!憑依武装・ダークライトディバイダー!」
「先代よ、行きますぞ!憑依武装、妖刀・鬼斬丸」
「あたしは、具現霊が群体形だから憑依武装ができないけれど、このコテブレードに霊量子を纏わせちゃえば?」
それを見た田村と文治郎もまた憑依武装でそれぞれ対抗できる武器を作り出し木々に隠れている鳥型の魔獣に向かい襲い掛かる。
一方文香は、自身の具現霊が抱える問題を理解しつつ、その分高い霊量子制御能力を生かした、家に代々伝わる暗殺用武器に霊量子をコーティングした方法で、偶然その付近にいた巨大ネズミ型の魂食獣に奇襲を仕掛ける。
「わしら大人も、見ていっぱなしではないのでな。こういう時にこそ」
「だよなあオッサン!レイオダス、憑依武装だ!バーンアッシュ!」
「秘剣・鬼絶(オニタチ)!」
「暗殺剣法・風車!」
韋車も焔噴き出すガントレットを憑依武装として装着し、仲間たちと連携し残りの魔獣を撃破した。これにより魔獣による被害を未然に防ぐことができ全員はひとまずハーネイトのもとに集まる。
「制圧はできたが、問題はこの中だ。恐らく巣になっているだろう」
「今のがたくさんいるってことっすか先生」
「そうだ響。全く面倒なことを。死霊騎士か敵幹部がいるかもしれん、気を付けて侵入するぞ」
「早く叩かぬと、また面倒なことになるのう」
突如発生した亀裂の中はどうなっているか全容がつかめていない。慎重に進めと言いハーネイトは先に入ると告げ、亀裂の中へ飛び込む。それを見て響たちも続々と亀裂の中に入っていったのであった。
「こいつはまじか、ひでえなおいおい。異界浸食も始まってやがるし、何より魔獣の数がよ」
伯爵らは目の前に広がる、所狭しと魔獣が闊歩しているその異界亀裂内に絶句せざるを得なかった、菌探知による観測よりもかなり多く、このまま放置は絶対にできない状況であった。
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