第133話 D(デモライズ)カードの脅威



 3リーダーとも、目的は果たせたと言い互いによくやったなという。だが新たな問題が彼らを悩ませていた。そう、あの化け物に変身するアイテムのことである。


「全員無事か?こちらは首尾よくうまくいった」


「そうか、こちらも敵を敢えて撤退させ発信機を付けた。後は追跡と追撃だ」


「俺様も改めてやってみたぜ。ただ亀裂の中は今まで以上に複雑な迷宮だぜこれ。それと、デモライズカードに類似したアイテムを敵が使ってきた」

 

「その話は本当か?伯爵」


「ああ、全員見ている。だがどこか違うんだよなあれ。だがあれは巨大な爆発を起こす可能性もあるぜ」


「また頭の痛い話が入ってきたなあ」


「でも対応するしかねえよ相棒」


 自分たちが故郷で対応に当たったのと質や外見に若干の際があるものの、およそ効果はオリジナルと変わらず、使用者の限界を迎えると体内エネルギーが暴走し爆発するという非道な点も全く同じであった。


 それに関して話をしているとリリーたちも会議室に入り、全員の無事を確認してからねぎらいの言葉を贈る。


「お疲れ様みんな!こちらもすべて記録はとってあるわ」


「そこまでしてくれたのか、ありがとうリリー」


「まあ、ハーネイトの頼みならね」


「しかしよ、1つ思うんだが」


 伯爵は疑問に思っていたことを口に出す。そう、それはハーネイトにとっても同じ疑問でもあった。


「デモライズカードは人を悪魔とか魔獣に変えてしまうアイテムだが、魔界の住民が使っても意味あるんかいな」


「……そこまではまだ。だが、強化や変身による戦術のバリエーションという名目でってのなら。だけど2人とも爆発したのを見たのでしょ?」


「ああ、あれはまさにそうだ。力に耐えきれなかったんだろう」


 2人はそう話したうえで、他の人たちに対しデモライズカードに関する注意勧告を改めて行う。


「君たちも、もしもカードを見つけたら回収し絶対に使用しないでくれ。といっても霊量士はデモライズカードの影響をほぼ受けないんだけど。一番の問題は、敵である魔界復興同盟の連中がどうやってあれを作ったのか、あるいは回収したかで話が違ってくる。直で触るなよ、あのカードに」


「了解です先生!」


「敵が使うと予想外の被害を生み出しそうですね先生」


「そうだ時枝。もし亀裂の外で使われてみるとぞっとする。あの爆発は、物によっては街1つ消し飛ばすからな」


 間近であの大爆発を見た霊量士たちは、いまだにそれが焼き付いて離れず恐怖を抱いていた。


 シールダーであるユミロや間城がいなかったら危なかった。作戦に当たった人たちはそう思いつつ、あのカードは恐ろしい代物だということも認識できていた。


「今まで以上に、そういう存在にも気を配って任務に当たらないといけませんわ」


「悪魔のカードか、危険なアイテムを使ってまで、その魔界復興同盟とやらはソロンと言う存在を呼び出したいのか」


「実は魔界出身の悪魔数名とも親交があるのだが、とてつもなく不毛な地だという。魔界大戦争の影響だというが、ヴィダールの力ならば遥か昔の美しい世界を蘇らせることができると思っているのだろうね」


 魔界復興同盟、以前霊界出身の仮面騎士ゼノンが言っていたもう一つの勢力にして、霊界の騎士を手下にした恐ろしい組織。


 だがこの同盟も、動機としては魔界の劣悪な環境が起因であるという見方で意見は一致していた。


 それは、そこに住んでいた異形の存在から魔界に関する様々な話をハーネイトたちは聞いていたからであった。


「マジっすか兄貴。でも魔界の奴らも、全員悪い奴ではないのか?」


「自分を導こうとした連中は、どれも自身の行いを恥じ世界を守るために奮闘した者ばかりだが、どうもその気高き神柱の魂を汚す連中も少なくないようだ。ましてや、他の世界の住民を洗脳し利用する。生贄に仕立てようとするなど同情の余地はない。しかし、ソロンの復活と赤い災星の関連性が未だ分からん」


「荒れ果てた故郷を戻したいのはわかるけど、やり方が……無茶苦茶だわ」


 翼はそう質問し、ハーネイトが答える。それを聞いた彩音は、同情しそうにもなるもやり方の卑劣さに怒りを覚えていた。

 

「向こうも必死なのだろう。だが、こちらの世界を侵略してくる以上手加減はするな。最も、彼らも操られていたとか脅されていたのなら黒幕を潰すだけだが。実はルべオラからある報告が届いている」


 ハーネイトは魔界復興同盟の裏に、もしかすると血徒が深く関わっている可能性があるのではないかと言及する。それは今から少し前にルべオラたちからある報告を聞いたのが理由であった。


 その内容は、魔界復興同盟の幹部たちに血徒刻印がある可能性についてであった。


 現在様々な村を周って状態を確かめているため幹部たちの調査が完全でないが、性格変化や目の充血などの症状から血徒の手駒、つまり子になっているかもしれないという話をメールで確認したハーネイトは、早急に感染防御用の装置の完成を急がねばと考えていた。


「ああ、伝えるの忘れてたぜ。ゼシルバルフって言う第7位の魔界なんたら同盟の奴、血徒の刻印があったぞ」


「おい、何故早く伝えない」


「済まねえ、色々ごたごたしていてさ。ルべオラの話は確かだろうな」


「ザジバルナを治療して調査に同行させていると言うが、魔界全体での血徒の活動も細心の注意を払う必要がある」


「分かったぜ兄貴。しかし、住むところが荒れ果てていなければあんなことしなくていいはずなのにな。残念だよな」


「確かにな翼。まあ、君たちと行動を共にしたおかげで、その魔界の環境を改善する装置も作れそうでね、それを送れば住みやすくなるはずだ」


 彩音を見たハーネイトは、改めて降りかかる火の粉は振り払えと言いながら、過酷な魔界の環境を変えられる装置の開発がもうすぐ済むため、親交のあるフューゲルという元人間の悪魔にそれを持って行ってもらおうと考えていた。


「そうなるといいわね。ハーネイトさん、今日はもう解散でいいのかしら?」


「ああ、そうだったな。皆さん本当にお疲れ様です。この調子で敵の拠点も見つけ、これ以上事態が悪化しないように活動を続けないといけません」


「そうだなハーネイトさん。んじゃホテルに戻るか」


「気を付けて帰ってくれよ」


 こうして、無事に作戦を成功させたレヴェネイターズは、ホテルに帰還すると回収品の整理などを行った後各員解散し、それぞれ自宅に帰ったのであった。


 各自貴重なアイテムを回収してきてくれたことにハーネイトは感謝しつつ、伯爵たちと共に分類ごとに整理を手早く行い倉庫に収める。

 

 ハーネイトとその部下たちはその後、温泉に入り汗を流したのち事務所に戻った。するとそこにはリリーがソファーで眠たそうに横になっていたが、彼らが戻ってくるな否や飛び起きる。



「本当によくやったわね。様々な情報もしっかりとれたわ。……だけどデモライズカード、なぜあの魔界の人たちが?」


「なんでも異界転移で飛んでいったのを拾って研究したらしいぞリリー。それで自身らをさらに強化しようとしていたと俺は見ている」


「リスク高すぎぃ!なのになにやってんだかな。危険性については今回の交戦で分かってもらえりゃいいんだがな」


「でもある意味どこでも人爆弾になるのは確実だから、何がなんでも亀裂の外では使わせないようにね」


「勿論よ!あの紙切れ1枚で途轍もない大爆発とか、テロにでも使われたら大変すぎるわ」


「まさかと思うが、DGが絡んでいないか調べないといけないぞ」


 もしもデモライズカード使用者が亀裂の外で大爆発を起こそうものなら、その被害は甚大である。さながら小型核爆弾級の破壊力ともいえるそれは、目前で体験したハーネイトやユミロにとって今でも忘れられない光景である。だからこそそれも含め敵の行動を阻止する。場にいた全員はそれを確認した。


 その後解散となり、ハーネイトはロイ首領と共に携行用補助アイテムの開発、伯爵はリリーと話しながらテレビを見つつ、今の情勢を確かめていたのであった。

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