第132話 備蓄拠点破壊作戦・ボルナレロチーム2




「全員無事だな!結界はなくなったが、反応はあの30階建てのビルの中から確認されている。高層部にはいないようだが、入るときは罠や奇襲に用心してくれ」


 全ての反応消滅を確認したボルナレロはある建物の前に集まる様に指示し、速やかに間城たちは移動しつつ、彼の情報とアドバイスを聞いていた。


「了解だ」


「ええ、早く倒しましょう」


 6人は一気に大きなビルの一階に正面から入り、敵の反応がある場所まで突撃する。ドアをブラッドが蹴り破ると、そこに映っていたのは劇場らしきステージと観客席であった。


「これは、ホール?」


「ステージのお立ち台に、例の装置があるみてえだ」


「おやおや、ここまでくるとは。ククク」


「誰だ!」


 自信と余裕を含んだ若い男の声がホール全体に聞こえるな否や、ステージの中央に鎮座している異界化装置の目の前に、突然現れた背丈の高い細身の白スーツを着た美形の男が現れ、シャックスたちに対し手招きをしていた。


「フフフ、初めまして。私は魔界復興同盟第6位エフィスと申します。貴方方をここで待っていました」


「ほう、そいつはいいな」


「ええ、6人纏めて仕留めるにはこれがいいのです」


「余裕だな貴様。だが俺たちを舐めると大やけどじゃ済まねえぜ」


「その口、今に叩けなくして差し上げましょう。人間たちよ!」


 エフィスと言う男が手にしていたもの、それを見たシャックスは普段見せない表情を見せる。ブラッドの言葉を聞き、昔見たあるアイテムのことを思い出し、目を開きフルンディンガーを構える。


「なっ、おい、あれデモライズカードか?」


「そのようですね、全員早く建物から出るのです!」


「何でだシャックスさん」


「敵の変身により、このビルが崩壊するかもしれません。急ぐのです!!!」


 そう彼がいいエフィスが手にしたカードを矢で撃ち落とそうとしたその時、エフィスは突然苦しみながら見る見るうちに変身していくのであった。


「ゴガガアアアアアィ!」


「マジかよ、巨大なリザードになりやがった」


「元の方が美形でいいと思うのに」


「間城、のんきなこと言ってる場合じゃ」


「桁違いな迫力ですわね。これは、一筋縄ではいきませんわ」


 やはりあれはデモライズカードだった、ブラッドとシャックスは4人を連れて素早くビルの外に出る。


 シャックスの読みは当たり、先ほどいたビルがすさまじい音を立てて崩壊していくのを全員で見たのであった。


「あぶねえ、シャックス助かったぜ」


「フフフ、ですがどうしますかね」


「巨大なトカゲ如き、ウェルダンよ!」


「全員無事でよかった。今ので異界化装置もかなり損傷しているようだが」


 ブラッドもシャックスに感謝し、改めて瓦礫の中から現れた巨大リザードを相手に大見えを切って手から焔を生み出し構える。

 

 ボルナレロは少し遠くから観測し、異界化装置が破損しかかっている影響による復元現象に気づきながら、6人に対し連携で確実に立ち回れと指示した。


「時枝と間城、黒龍で具現霊と霊量超常現象による拘束と弱体を、残りは直接攻撃でラッシュをかけてくれ!」


「了解しましたボルナレロさん!さあ行くぞ!CPF装填…………発動!魔柱鉄杭(まちゅうてっくい)!」


「アイアス、防御は任せたわ!CPF発動!仙呪解念(せんじゅかいねん)!」


「これが不思議な魔法みたいなやつか。こう使えばいいのだな?行くぞ、CPF・無骸散針(むがいさんしん)!更にこれはどうだ、蛇龍暗黒炎魔撃(じゃりゅうあんこくえんまげき)!」


 時枝と間城はそれぞれ具現霊に攻撃命令を出しつつCデパイサーに入力し霊量超常現象(クォルツ・パラノーマルフェノメノン)の発動準備を行う。


 敵は周囲を尻尾や頑健な巨躯で薙ぎ払いつつ焔や衝撃波を口から吐き攻撃するも、アイアスの絶対七盾やミチザネの雷壁などに遮られ、霊量子による大魔法がCデパイサーから放たれエフィスの体を拘束していく。


 それに合わせ黒龍は黒龍王の火焔息吹で周囲諸共焼きつつ、呪いの魔針を手元から大量に放ち関節部を狙い機動力を削ぐ。 


「おうおう、すげえ弱ってんな」


「霊量超常現象……それに具現霊と合わせれば恐るべし相乗作用が」


「今のチャンスを逃さねえよ、止めと行くぜ!」


「グガガガガ!こんなところで、この私、がぁああ!」


 巨大ビルを一瞬で倒壊させるパワーを持つほどに変身したエフィスだったが、残念ながら頭数と彼らの能力の前には敵わずどんどん劣勢に追い込まれていく。


 シャックスは霊量子、そして大魔法の新たな可能性をまじまじと見せつけられるが隙を見てフルンディンガーから光の矢を放つ。


「余裕こいてたのが間違いなんだよこのド三流が!焔祭だぁ!!!」


「行きますよ、神弓技・ガーンデーヴァ!」


「兄様、新技行きますわ」


「ああ、兄妹の絆を見せるときだ!式神召喚・天魔夜叉!」


 亜里沙は碧銀孔雀と精神を共鳴させ、2人で巨大な式神の一体を召還することに成功した。


 天魔夜叉は、代々紅魔ヶ原家に仕える巨大な刀を持った夜叉である。召喚してすぐに、天魔夜叉は勢いよくとびかかり、手にした巨大刀「壊刃」でエフィスの頭部を豪快に切り裂いたのであった。


「おおぅ、こいつぁすげえな。亜里沙、すげえじゃん」


「お褒めに預かり光栄です。ですがまだ立つ意志がありそうです」


「しぶといな!」


「皆まとめて……な、カ、体が、がああああぁああああ!」


 怒涛の連撃で体力と精神力を削られたエフィスに限界が来ていた。光の亀裂が体を走り、そこから霊量子が噴出していく。


「いかん、奴の体が爆発する!」


「アイアス、みんなを守って!絶対七盾(ぜったいしちじゅん)!」


「言われなくてもな姉貴!」


 そう間城が指示し、シールドを全員に展開した瞬間、変身したエフィスの体が盛大に爆発し、周囲の建物も吹き飛ばしたのであった。


 もしシールドが無かったら大けがどころか時枝たちの命も危なかった可能性があった。


「な、っ……すげえ爆発だったな」


「それをも防ぎきるとは、間城さんと言ったね」


「え、ええ」


「君の力、恐ろしいが頼もしい。おかげでみんな無事だ。助かったぞ間城」


「お嬢さん、あんたもいい面構えしてんな。強くなるぜ、お前ら。俺が保証してやる」


「ブラッドバーンさん……はい!」


 間城がシールダーで本当に助かった、ボルナレロも含めた5人は間城に感謝していた。ブラッドもいい度胸のある女だと間城について評価しつつ、時枝たちも含め、伸びしろは未知数だと期待していた。


「すまんが、爆発に巻き込まれなかった部分の探索を少し続けてくれ。私は……」


「ぐぅ、こんなはず、では……」


「おい、まだ生きていやがる」


「それでよかった!はっ!」


 逃げるエフィスを、ボルナレロは練習した投擲ナイフを投げる動作であるものを飛ばし彼の体に知らぬ間に埋め込んだのであった。


 更に霊量機関(クォルツモーター)で動く小型ドローンも飛ばし、エフィスを追いかける形で追跡する。今の行動こそ、今後の作戦を左右する大事なものであった。


「ボルナレロさん、逃すなんて……」


「これが、作戦なんだ。地図を使う私ならではのな。探知をつけて敵の拠点をさらに探し出す」


 これが、魔法工学と地図を極めた男の戦い方である。代々測量や地形観測などに携わってきたジオノアローク一族の末裔である彼は、ハーネイトやロイとの出会いにより新たな境地に至り、今はこうして発信機や観測ドローンなどによる追跡や捜索などを友であるハーネイトよりほとんど任されているほどの役職についている。


 今回あえて敵を逃したのは、広大勝つ膨大な亀裂の中からどれが敵の総司令部に繋がるかを観測するための布石であり、まず第一段階が成功したことにボルナレロはほっとしていたのであった。


 最も、エフィスの使ったデモライズカードが融合式でなかったのは幸運であった。でなければ計画はうまくいかなかったとボルナレロはそう思っていた。


「ああ、それならわかるな。抜かりない人だなボルナレロは」


「そういうのはハーネイトの姿を見て学んだことだ。さあ、後は宝探しだ」


 そういうとボルナレロは指を鳴らし、上空に展開していた魔工機械の形状を変化させ、アイテム探索用の機械に組み替えたのであった。


 そこからは彼らの楽しい時間。Tミッションに切り替わりフィールド内に確認できたアイテムらしき反応めがけ各員走っていったのであった。


「まさかこれは、いや、まずはハーネイトと共に鑑定をしましょう」


「わぁ!これは霊量片?すごく大きいわね」


「これは、お土産にしたらハーネイト様もお喜びですわね」


「この装備、また先生のもとに運んでみよう」


「霊量子集めれや!あいつの封印を解くには大量にいるんだよ!」


 この後も少し時間を使い、ボルナレロ一行は建物の中を捜索し、いくつかの装備品と大きな霊量子の結晶5個、宝魔石(ジェムタイト)のルビー、サファイヤ、ヒスイなどの回収に成功し、亀裂の外に出たのであった。


 するとボルナレロはハーネイトからの通信を拾い、連絡をすぐに返した。全員無事に任務を終わらせ、作戦も首尾よくいったことを聞きハーネイトは全員にねぎらいの言葉を送った。


 この後彼らは一旦ホテル地下事務所に向かうため転送装置でホテル屋上のポータルまで移動、エレベーターで直接地下まで行き、会議室に全員集まったのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る