第131話 備蓄拠点破壊作戦・ボルナレロチーム1
Cチーム ボルナレロ 間城 時枝 黒龍 亜里沙 シャックス ブラッド
「確かに、廃墟だな」
「人っ子一人いそうにないわね」
「それと引き換え、おぞましい何かがいるな。分かるだろ間城」
「そうね時枝君。気を引き締めていかないと!」
「これら廃墟は、全部お化け屋敷か?」
「お化けどころじゃないのもいそうね黒龍さん」
「お前らあまり無駄口叩くなよ」
ボルナレロがナビゲーターを務めるCチームは、まるで映画に出てくるような、ボロボロに荒れ果てた人気の全くない近代都市の1区画に異界浸食されつつある場所の攻略担当を任されていた。
ついでにボルナレロには別の作戦も言い渡されており、いつも以上に彼は表情を険しくしていた。
「ナビゲーターか、久しぶりだな」
「そういえば、ボルナレロ様はハーネイト様と親しい仲、でしたわね」
「そうですよ亜里沙さん。彼が出資してくれたおかげで、俺や他の研究者は多くの人の役に立つ、発明を生み出せたのだからな。未だに頭が上がらん」
「それが、ハーネイト様の凄いところですよ。いいと思ったものは何でも取り込む、敵対していても人材を引き抜く。彼の既存に囚われない所は本当に恐ろしいものです」
ボルナレロが質問に対しそう話し、ハーネイトとどういう関係か話をした。
多額の投資を自身にしてくれ、なおかつ自身らジオノアローク一族が長年研究してきたテーマと技術を高く買ってくれた彼に対して頭が上がらず、親密な関係を築いていることを聞いた間城と時枝は真摯に話の続きを聞いていた。
「確かにな、ハーネイトと言う男は人一倍器の大きい男だと思うぞ。それが、色々支えとなってきたのかもな」
「そうですね。私が初めて出会った時は敵同士でした。しかし彼の雰囲気や言葉遣い、勧誘と条件の提示などから彼こそ霊量士の王として、皆を導くにふさわしい存在だと感じましたよ。彼は既に、優しく強き王だと私は思うのですが」
「へっ、甘ちゃんなところやオフの時のヘタレなところはいまだにあれだがな。だが、今まで多くの強敵と拳を交えてきた中であいつこそが一番強ええ。刀を持ってない時は特にな」
黒龍は自身の感想を述べ、シャックスとブラッドもハーネイトとの出会いについて思い出しながら話をした。
2人からその話を聞き、ハーネイトと言う存在がいかにすごいのか、若き霊量士たちは再認識せざるを得なかった。
その中でブラッドの言った、刀を持たない方がハーネイトは強いという点について高校生たちは疑問を抱かずにいられなかった。
「そら、話もほどほどにな。今魔工機械たちに探索を指せているが、奇襲攻撃には要注意だ」
「ならば私の近くにいれば、このフルンディンガーで迎撃しましょう」
ボルナレロはさり気に魔工機械を準備し、ドローンを数機展開し空に飛ばした。その間に遠距離用の武装も準備していく。
それを見たシャックスも背負った見るからに赤い三日月の様な剣弓、フルンディンガーを手にし戦闘態勢に入った。
「頼んだぞシャックス。ブラッドは全力でパネルの開放を頼む。残りで石の破壊とパネル開放を両立させて行うんだ」
ボルナレロは指示を出し、先にブラッドを先行させる。だが案の定、建物の窓から火炎弾や針などの攻撃がブラッドめがけ降り注ぐ。
けれどその攻撃も、ある男がいれば意味をなさない。恐ろしいまでの直感がシャックスの腕を脊髄反射的に動かし、彼に降りかかる全ての災いを矢で射抜き、次いでに放った矢の軌道を霊量術で変え、まとめて一撃で数体の魂食獣を撃破する。
「おっと、逃しませんよ!」
「ピギャアア!」
「おう、いっつも恐ろしい射撃だぜ」
「ありがとうございますシャックスさん」
「早くお行きなさい」
ブラッドに続き間城たちも前に進む。だがボルナレロの放ったドローンの観測結果を見て彼は、少し待つんだと制止する。
「む、これは少し面倒だ。ファイアウォールと言うあれか」
「パソコンのセキュリティ機能のあれ?」
「そうだ間城さん。あれを無理やり通ろうとすると、下手すれば強制排除だ。最も機構に関しては本来の用語のファイアウォールとは色々違うがな」
「どう解除すればいいの?」
以前ボルナレロらは故郷で任務中に同様のセキュリティ機構を目撃し対処している。そこで間城たちに指示をし、あるものを探せと伝える。
「ああ、どこかに解除キーが隠してあるはずだ。奴らが何を考えているのかいまいちわからんが、利用させてもらうぞ」
「そうですね、じゃあ時枝君も行くわよ」
「はいはい、俺のミチザネも反応射撃できるから、みんな範囲内に入りながら進んでいこう」
こうして、とりあえず汚染区域の除去を担当する係と鍵を探す係の2手に分かれ行動を開始した。
「させませんよ、フフフ」
「シャックスさんの射撃も嫌に正確だ」
「ああ、あいつはDGの中でも一番の変わり者で、一番恐ろしい奴だ」
「DG?」
「ああ、お前らは知るわけねえよな。ハーネイトからもあまり話聞いてねえだろ」
「ブラッド、その話はあとで私らが終わってからしましょう。今は装置の破壊を」
「お、そうだな。お前ら少し退きな!まとめて焼き畑農業だぜぇ!」
シャックスの話を聞いた上でブラッドは高く飛び上がり、地面に向かって拳を殴り突き立てる。
すると周囲の水分をすべて蒸発させうる程な火焔の風が吹き荒れつつ、汚染地帯を13マス分消し飛ばした。
「仕掛けるぜ!まとめてぶっ潰す!大火焔!!!」
「なんて男だ、本当に火力だけは人一倍!!!」
「残りは任せたぜ時枝、間城!」
「わかりましたよ」
「アイアス、あれ行くわよ!ってえええ?」
ブラッドの攻撃に合わせ間城はアイアスと共に戦技を発動しようとしたが、アイアスの左腕に装着してあるレーダーシールドがある反応をキャッチしたのであった。
「フシュルルル!」
「何だ!?」
「ありゃ、見たことねえなあ」
「周りを汚染しながら現れていますね。せっかくブラッドさんが切り開いた道を……」
突如現れた、口から気運を含んだ霧を吐き周囲を染め上げていく甲虫の様な霊殻虫に、時枝はむっとする。あれを抑えないといくら浄化しても鼬ごっこだと彼は思った矢先、黒龍が前に出る。
「けっ、悪趣味だな!」
「だったら俺がやる、力を貸してくれ、黒蛇(くろち)!」
「ああ、ようやく出番か」
「あのエリアを纏めて焼き払ってくれ!」
「良かろう、蛇龍黒炎(じゃりゅうこくえん)!!!」
黒龍は自身の背後に構える黒龍王・黒蛇に対し、戦技の使用を命じそれに彼も応える。
だが命令され慣れていないため少し龍の表情は厳しいものであったが、霊殻虫を見るとすぐに口から強烈な黒焔を息を吐くように吹き出し、周囲の汚染地域ごと霊殻虫を焼き消したのであった。
思ったよりも火力があることに黒龍は驚くが、頼もしいと思い次々と汚染を浄化していく。
「ほう、坊主おもしれえじゃねえか。そうだ、そのくらい熱くIKEA!」
「本当に、この男は暑苦しいな」
「一撃であの虫と汚染地帯を消し飛ばすなんて、すごいな黒龍さんは」
「フッ、援護もできる貴様の具現霊も頼りになるぞ、時枝」
ブラッドも同じ火を使う黒龍に対し妙な親近感を覚え乗ってくる。クールな彼と猛烈に熱いブラッドは対照的だが、どこか心根は同じなのかもしれない、時枝は二人のやり取りを見ていた。
「まだ同じような反応が2つはいるな。各自注意してあの奥にあるビルを目指せ!それとだが、建物の中に2つ石の反応も確認している」
「ええ、そうみたいですね。皆さん分かれて、あの石を破壊しに行きましょう」
「ファイアウォールってのは俺と時枝、黒龍で壊していくぜ」
「代わりに私は魔工機械による砲撃で支援しよう」
ボルナレロの指示を聞いた間城は戦力の割り振りを考え他の仲間に指示した。間城はそう言う作戦を立てるのがうまいようで、よく遊んでいるゲームの影響かもしれないがハーネイトからもナビゲーター適正の高さを認められていた。
「そこ、逃すか!」
「鴉のような化け物は、ボルナレロの操る機械で守ってくれるか。あの男、一見非力そうだがやるな」
「何でも、ハーネイトさんと付き合いの長い友人ですからね」
「ああ、只者ではないわけだな。じゃあ俺らも仕掛けるぜ!」
全員の動きに合わせボルナレロも戦闘偵察ドローンを動かし、空から接近する敵をレーザー攻撃で撃退する。
ボルナレロの機械を見た黒龍は、上空からの航空支援に感謝しつつ思いつつ、その上であの男は何者なんだと推測する。だが時枝の話を聞いて納得し、仕事に取り掛かる。
「さて……ああ、4体はいるな」
「何故わかるのですか?」
「勘だが、気配がするんでね」
「3人で一斉突撃しよう」
そう打ち合わせ、3人はすぐに建物の中に入り強襲を仕掛けた。ブラッドの言うとおり、中にはウサギ型や鹿型の魂食獣がおり、それらに合わせそれぞれ戦技を繰り出す。
「終わりだ、焔腕(ほむらかいな)!!!」
「雷刃(スパークエッジ)!」
「黒龍爪(こくりゅうそう)!」
それはまさに型にはまり、わずかな隙を見せた獣たちは次々と消滅していき、その余波で奥にあるドアも吹き飛ばし、ブラッドはファイアウォールを解除するカギを見つけた。
「っしゃ、ボルナレロ、こっちは壊したぜ。それとやはりカギはこの建物の中にあった」
「俺がすぐに解除しに行きます」
「時枝、援護頼むぜ」
この後3人はファイアウォール近くまで進軍し、道中襲い掛かる敵を倒しながらセキュリティ解除に成功、その先にある石の破壊に向かったのであった。
一方間城たちは屋外で敵の動きをひきつけつつも汚染区域の浄化を着々と進めていた。
「全く、こうも遮蔽があると大変ね」
「私の風も少し効果が薄そうです」
「ですが、ないよりはいいかと。亜里沙さん、貴方の具現霊もとても良いですね」
「兄さまのことですか、はい。風を操るなら誰にも負けません」
いつもより建物などが多く、なかなかまとめて浄化という選択肢が取りづらい状況でも間城、亜里沙、シャックスはガンガン敵を倒していた。
亜里沙の具現霊も風を起こしランダムに汚染区域を浄化できる希有な能力を持つが、全体の把握がCデパイサーを通じてでもまだ完全にできていない以上、できる選択肢は限られる。
だがその力を聞いたシャックスは素早く変形した剣弓から矢を放ち脅威を排除しつつ亜里沙の具現霊の性能を評価していた。
「ええ、纏めて浄化できる技を持つ人材は多くはないのです。アタッカーではないにしては優秀ですし、もっと能力開発ができれば……っ!来ますこれ!」
「アイアス!シールド飛ばし行くわよ!」
「兄さま行きますわ、戦技を!」
「ああ、行くぜ!災いなど、これで吹き飛ばす!薙風!」
間城がアイアスの力でみんなの盾となり、亜里沙が風を起こし敵を攻撃しつつ1区画に集めた。
「纏めて仕留めます。神弓技・イチイヴァル!」
「矢が数十本に分かれた?」
シャックスはそれを見てタイミングよく、フルンディンガーから少し大きな光の矢を放つ。それは着弾少し手前で炸裂し、散弾の如く襲い掛かり数体の魂食獣を討ち滅ぼしたのであった。
本当はこのイチイバルの矢については発射直後に分かれる代物ではあるが、シャックスは周囲との兼ね合いから効果発動タイミングを調整したのであった。これにより効率よく矢が拡散し、逃げ場を与えずにまとめて敵を撃破することに成功したのであった。
「全部直撃ですわね。あの距離をここまで正確に……居眠りシャックスというこの男、実力を隠している?」
「さあ、2人とも早くあれ壊しますよ」
いつも眠ってばかりの上、噂によるとよく次元亀裂の中に収めてある様々な世界の美術品を眺めながら、とても表現が憚られる顔をしているというこの糸目美形赤髪ロングの男、シャックス。
よく勘違いされるが仕事はきちっとこなす上に、かつて属していた組織でも強さに関しては上から数えた方が早いほどであり、思わず間城と亜里沙は彼の弓技に見とれていた。
そんな2人にシャックスは、見えている結界石を壊すように命じて、最後の結界石の破壊に3人は成功したのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます