第129話 備蓄拠点破壊作戦・伯爵チーム1
Bチーム 伯爵 五丈厳 九龍 翼 ヴラディミール 韋車 ユミロ
「聞いたとおり、倉庫と既に使われていない工場が多いぜ」
「どこの世界のもんだよ。なんら俺たちの住む世界と変わらねえぜ」
「いや五丈厳、こんな文字見たことねえぜ」
「確かにな……ここはどこか別の世界ってことか。呼吸はできているがよ、用心した方がいいかもな」
伯爵は事前に入手した情報を口にし、聞いた翼と五丈厳が話をする。
確かに風景自体はよくある港町と倉庫のように見えるが、倉庫の看板や建物のペイントなどで描かれた文字はとても彼らに読めるものではなかった。
「わし等でもわからぬとはな。ただ生存には問題ない場所ではあるぞ」
「空気、悪くない、だけど敵、潜んでいる」
「ああ、わかるぜ。なんかあの中に色々いるってか?レイオダスも感じ取ってやがる」
ヴラディミール、ユミロ、韋車は既に異様な気配をいち早く感じており、自然と身構えていた。
「俺がナビゲーターとして、今回お前らを率いる。だが前線の統括はどうするか」
「わしがやろうか、伯爵君よ?」
「ったく、なんで相棒はこのおっさんを……まあええや、任せたぞヴラディミール」
「良かろう、早急に敵を排除せねばな」
伯爵にとって、この老人はどこか苦手な存在であった。それもそのはず、2人とも能力がかなり似ているため同族嫌悪という感じで伯爵はこの男を避けていた。
実際にはできること自体に違いがかなりあるが、目にほぼ見えないものを操り攻撃するという面はこの2人、恐ろしく強いのである。ハーネイトもこれらの能力を有する人物は警戒している。それが答えであった。
「んで、俺は菌を使ってサーチをする。少し時間がかかるが、敵の詳細もよくわかるんでまっとけや」
「もうその程度では驚かねえ……」
「慣れって怖えなあ、ハハハ」
「最初聞いた時、目ん玉ひっくり返ったがな俺は。だが、頼りになる男なのは間違いないぜ」
ドローンなどを使わず地形情報をどう手に入れるかの質問に対し伯爵は、にこにこと笑いながら自身の能力で集めると言い、五丈厳と九龍はそれぞれ率直な感想を述べた。
確かに明らかに人間の能力を超えた力を持つこの男だが、味方でいて本当に良かったと思える局面は前にもあったため、かなりの人が頼りにしている状態であった。
伯爵も含む微生界人は、種族ごとに能力差はあれど周囲の微生物、もとい眷属を使用した探索能力に長ける一面がある。
その中でも彼は、圧倒的な探索能力を持つが彼のやる気次第で影響範囲が大きく変わるため、彼のやる気をどう引き出すかが周りに求められる面である。
「うひゃあ、こりゃ大当たりというか、やはりまずいな」
そうこうしているうちに、伯爵は菌での探知を終え、笑顔と困惑した表情が入り交ざった状態で全員を見ていた。
「多いんすか伯爵ニキ?」
「倉庫の中に、お宝もあるが化け物もいやがる」
「いいじゃないか、ハーネイトの土産にしてやろうかのう」
「あまり変なものは持って帰んなよ」
「そういう五丈厳に限って何か持って帰りそうだなおい」
伯爵が菌を使って探知をした結果、物陰や建物内にそこそこ敵がおり、迂闊に攻めるとカウンターを喰らうと説明した。
しかしその中には利用できる資源や装備が眠っているようで、それも回収したいという旨を全員に伝え、倉庫に向かい中にある物を奪取しながら内陸にある装置を破壊するよう指示を出し、全員がその通りに動き出した。
「嫌に静かなのが……ってうわ!」
「どうした九龍!」
「いきなり湧いて出やがった!マスラオ、行くぜ!」
九龍はアタッカーとして安全な陣地を広げるため倉庫周辺の汚染区域を攻略しようと、五丈厳とペアを組み作戦に当たっていたが、コンテナの物陰から大きなネズミ型の魂食獣が飛び掛かり、思わず驚く九龍だがすぐに立て直し、逆に自身から前に飛び込みネズミを捕まえるな否や、海の方へ強引に放り投げたのであった。
「倉庫に入るまでに汚染域を吹き飛ばさねえとな」
「そんなもん、俺たちの専売特許だろ?」
「ああ、スサノオ。やるしかねえよな」
「伯爵ニキ、俺はこっちから攻めるぜ」
「待ちな、その先に罠がある。追加で時間をくれ、全員のCデパイサーにすべて反映させてやる」
そういい速やかに伯爵は菌探知をさらに強化し、全員のCデパイサーに罠などの情報をすべて転送したのであった。ハーネイトよりも彼が優れる点、それは桁違いな探索能力にあった。
「おう、んじゃ、そこに隠れてやがるやつを!」
「翼、あれを使うぞ」
「ああロナウ!ソウルスターシュート!」
伯爵の能力は本当に強力であり、物陰にいくら隠れようと探知から逃れることはできない。秘かに指示を出し、翼はそれに従い指定された場所に光の弾丸を蹴り放った。すると潜んでいた蟹型の魂食獣は跡形もなく吹き飛んだ。
「港か……海に近づけば恐らく」
「キシャアアア!!」
「やはりのう、お前ら水に近づくな。鮫型の奴がうようよいるぞい」
「面倒だなおい!」
そんな中ヴラディミールは自由に動き回っており、他に何か落ちていないかを探していたがその矢先、港の船着き場に足を運んだとたん勢いよく海面から大きな鮫型の獣が飛び出し食らいつこうとしてきた。だがそれを彼は展開したナノマシンを集めた盾で受け止めた。
「だが、儂の前では只の刺身じゃな。軍大剣・霞霧斬(かすみきりぎり)」
「グギャ、ギャア。ガアァ……」
ミロクと同期で、600年も戦い続けている超歴戦の戦士、ヴラディミールの前に勝てる存在などほとんどいない。
瞬時に彼は受け止めていたナノマシンの集合体による盾の結合を解除し、同時に霞霧が鮫の肉体に覆い纏わるな否や、無数の切り傷が発生し鮫は断末魔を上げて霊量子を大量に放出しながら消えていったのであった。
「おいおい瞬殺かよ、あのオッサンすげえな」
「そういう貴様も、筋はいいな」
その光景を見ていた韋車は、何が起きているのか全てを把握はできなかったものの、この男が段違いに強いことを察した。
しかし彼を見たヴラディミールもまた、韋車が比較的早期に具現霊を呼び出し心通わせていることを見抜き評価を思わず口に出した。
「へへ、あれから練習したんでな!行くぜレイオダス!マグナ・ダイナミックヒートダイヴ!」
韋車は獣形態のレイオダスと意思を合わせ、命令を出し気運で汚染された場所が集中する場所に飛び込ませ強烈な火焔を生み出し、纏めてパネル15枚分を焼き払ったのであった。
このパネルとはCデパイサーで表示されたグリッドレイヤー1マスのことであり、5m×5mで1マスを基本としていると言う。
「やるじゃねえか韋車!纏めて気運を吹き飛ばしやがった」
「うおおお!邪魔するな!」
「ユミロの兄貴もすげえな、襲い掛かるやつら全てをギタギタに引き裂いてやがる」
ユミロのクラスはアタッカーとシールダー。だからこそできる戦い方がある。
あえて敵の注目を引き、強烈なカウンターで葬るその豪快かつ確実に敵を倒す戦術は伯爵をも唸らせる。
「ユミロはああいう戦いが得意だからな。相棒も認める、恐ろしい奴だ」
「俺、道切り開く!引け……!」
「任せたぜユミロ、やれ、永断の斬撃かましたれ!」
伯爵はユミロに、奥の倉庫への道を切り開くように指示した。するとユミロはジャンプしながら頭上で武器を回転させ、着地と共に豪快に叩きつけた。
するとまるで地震かの如く地響きが轟き、次の瞬間強烈な衝撃波が前方直線10マス分を一気に浄化したのであった。
「残りの結界石は2つだ、んで、装置の場所は一番奥の小さな倉庫だ!」
「了解……行こう」
「ああ、早く片付けようぜ」
「ぬっ!危ないお前ら!」
伯爵がいち早く気付き、膨大なエネルギー反応を倉庫から確認、ユミロと五丈厳、九龍を急いで引かせると突然倉庫が轟音とともに崩れ落ち、その土煙の中から人影が見えていた。
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