第127話 備蓄拠点破壊作戦・ハーネイトチーム1
Aチーム ナビゲーター ハーネイト 響 彩音 星奈 八紋堀 スカーファ 亜蘭 初音
「報告通り、中は全くの別世界だ」
「確かに開けた場所だわ」
ハーネイトは伯爵からの報告と合わせ、今目の前に広がっている空間を見た感想を率直に述べた。
どこの世界なのかは分からないが、明らかに荒れ果てた平地。所々に武器など戦争で使われた物の残骸が落ちており、人こそ確認できなかったが明らかに誰かが戦っていたのは明白であった。
「その中に、無数の汚染されたパネル。でもハーネイトさん?あくまでこれは異界空間に別の世界を張り付けているだけでは?」
星奈は冷静に分析し、まだ完全に異界亀裂と異世界が融合していないことを見抜いた。
所々意地悪でよく分からない一面を持つ彼女だが、いつだって冷静に分析するその精神はハーネイトを感心させた。
「よくわかったな。そうだと見て間違いないが、放置しておくと完全にこの中は別世界のある場所と同化する。そこから、異界の化け物が侵入してくるな。世界と世界の境界が無くなる、それほど怖いことはない」
今はまだいい、それは魔獣の反応が周囲一帯ないからである。
けれど、もしここに異世界の生物が存在したら、亀裂を通じて響たちの住む世界に侵入し、街や国を破壊しかねないからである。
「私はそう言うものとバトルしまくりたいが」
「スカーファさん、数が多いのですよあまりにも。来るときは無数のイナゴの群れか何かの様にという場合がそこそこあるので、早いうちに叩くのです」
「有無、あの時も大変じゃったなハーネイト。だが拙者らが入ればノープログレムだがの」
「早速やべえ感じがするな。初音、気を抜くなよ」
「そちらこそよ亜蘭」
2人は既に具現霊を背後に召喚しいつでも戦えるように構えていた。
一通り自身の霊に何ができるかは話を聞いているため、亜蘭は敵の掃討と突撃、初音は後方支援を行おうと考えていた。
「では、ドローンを飛ばし状況確認と行く。少しだけ全員前に出て、彩音、今日はサーチャーとなって音で、何かアイテム及び罠がないか確認して」
「分かったわ先生、行くわよ弁天!」
「わかりました彩音。では、音響探知!」
ハーネイトの指示で早速彩音が前に一歩出て、具現霊弁天を召喚し、音叉薙刀を天に掲げるとそこから放たれる波動がフィールド全体に響き渡る。
「彩音、CデパイサーのGISグリッドレイヤーと合わせて、どの辺に何があるか入力して。すぐにドローンが地図データを持ってくる。それと合わせれば攻略の算段が整う」
「すげえな彩音。音を操るって、よく考えるとやべえな」
「響の言乃葉も、破壊力とデバフは大したものよ。ん……どうしよう、地雷?それとも」
ハーネイトは彩音に、Cデパイサーをうまく使うように指示した。
GISリアルタイムデータリンクシステムと呼ぶこの機能は、入手し反映した地図情報などを瞬時に他の人に伝達し共有を柔軟にする、ハーネイトとボルナレロを含む多くの研究者により生まれたものであった。
この機能を使えば地形の把握から罠、敵の位置まですぐにまるわかりであり、Cデパイサーを介して常に情報が更新されるいろんな意味で便利な代物である。
響は彩音の技を見て、きちんと修行しているなと思い驚いた。自身も秘密特訓はしているが、自身の能力をうまく使えている彩音がすごいと思っていたのであった。
そんな彼女を見ていた響は、顔色を変えたのを見て異変に気付いた。彩音は行く先々に何か罠の様なものがあると全員に伝えた。
「まずったか、罠の解除を効率よくやるならシューター……という感じのシューター、あるいは特殊クラスのトラッパーが必要だが、今の面子でそれをやれるのは、ん」
「ハーネイト所長、シューターとはどういうものなのだ?」
やや後ろにいた亜蘭はハーネイトに質問した。一応彼はCデパイサーのアプリでAミッションゲームをやっていたためそこそこは分かるが、まだクラスごとの役割まではすべて覚えていなかったのであった。
「亜蘭か、シューター、別名ガンナーは遠距離を攻撃するのを得意とした具現霊、あるいは霊量士がなるクラスでね、リシェルやシャックス、時枝などが該当するのだが」
「俺の具現霊、ゾロ・セラードはレイピアとハンドガンを武装として持っています。怒号のマズルカなら、罠ごと吹き飛ばせそうですがどうです?」
ハーネイトから説明を聞いた亜蘭は、一応自身の具現霊も遠距離攻撃ができる技を持っていることを話した。
「確かに、これなら連携で罠は対処できる。いいな、アタッカーとガンナーのダブルクラスはバランスが良い」
ハーネイト曰く、クラスに2つ以上適正がある人のうち、攻撃特化として重宝されるのはアタッカーとシューターであるという。
これは過去の経験から基づくものらしいが、前へ前へ攻める役割においてこの適正の組み合わせが一番効率が良かったためである。
「まあ拙者も文斬で斬撃飛ばせばな」
「遠距離か……槍を投げるのはだめなのか?」
それに八紋堀とスカーファも話を付け足すが、ハーネイトはシュータークラスが行うべき仕事について話をしたのであった。
「まあ、要は爆発範囲に巻き込まれず爆破とか解除できれば問題ないからいいけど、色々可能性を見させてもらうよ。敵自体は、川の中と空を飛ぶ鳥型の魂食獣が主だ、解除と並行し敵を倒すんだ」
「か、川の中?」
「ええ、魚、かしら。音波を使えば色々わかるわ。弁天と修業した甲斐はあったわね」
初音はハーネイトの説明に驚くも、彩音が感知した反応について話をしたのを聞いて納得していた。
相手が魚となると、地形的にそばを通ると不意打ちによる奇襲率の高さが厄介なため、ハーネイトも警告した。
「川の周囲に行く際は奇襲に要注意だ。それと空からいきなり襲い掛かってくるあれにもだ」
「先生、それ以外にも敵対勢力が出ると思います」
「ああ、だから用心はいつも以上にな。もう少しで観測結果がでる」
それから1分後、飛ばしたドローンから通信が入った。するとCデパイサーに大量の情報が流入し、地理データとしてまとまったのであった。
「浅い谷の中に異界化装置があるようだ。しかし行く手を阻むものが多い」
「地道にやるしかないのう」
「出てきた化け物は、片っ端から壊すまで、フフフ」
「解析結果出たぞ。主に平原だが、所々丘の様な起伏があり、先ほども言った北西に存在する渓谷のなかに装置がある。結界石は7、彩音の情報と合わせると、装置に近づくほど罠が多いうえに道中川を渡る必要がある。橋があるが、そこの汚染度がひどい」
まず異界化を引き起こしている装置のありかは奥地にある渓谷の入り口にあり、そこまでに橋を越えながら大量の汚染地帯を浄化し進まなければならないことをハーネイトは観測結果から見て話した。
「本当に便利だ。丸わかりだな」
「地図を制したものが、戦争を制すってよく言うじゃないか。ボルナレロも私も、そう信じているから」
「にしても面倒ねこれ。私のゲンナイは絵を描いて攻撃できるみたいだけど、こうなったらぶっつけ本番よ」
亜蘭と初音は自身のCデパイサーの画面を見つめながら、映し出される地図情報を見て感心していた。このシステムを作った目の前にいる男とその仲間たちは、本当に只者ではないと思っていた。
その後詳しい指示を受けたハーネイト以下6人は、指示通りに作戦を開始したのであった。
「姉さん、あまり近づくと」
「きゃあ!このぉ!」
「クキャアア!!!」
「姉さん……昔からそういうところは変わらないわね」
早速腕試しをしたいと初音は橋の近くまで近寄るも、いきなり水面から飛び出てきた魚型の魂食獣に驚き、タイミングを合わせ音波の衝撃を飛ばした彩音は姉を見て呆れていた。
「アプリで遊んだのとは、全く違う緊張感だ。だが、こうすれば倒せるのかな?爺様、手伝ってくれますか?」
「よかろう、行くぞ孫よ!」
亜蘭も早速具現霊のゾロ・セラードを呼び出し、近くの汚染領域の目の前に立つ。すると案の定敵の魂食獣が現れ牙をむくも、刹那の一刃が閃きあっというまに倒してしまう。
ゾロ・セラードはスピードで翻弄するアタッカーのようで、並々ならぬ剣捌きを見せていた。更に指示を受け、射撃で爆発系の罠を打ち抜き味方の支援も行う。
「これが、魔法こと霊量超常現象か。合わせて使うとよさそうだ」
亜蘭はゾロの攻撃をアシストするため、CデパイサーにCPFの詠唱予約をする。
<<光る空 走る亀裂 光の後に音となりて地を砕く 万雷神速の一撃を知れ>>
「これで撃てるわけか。覚悟しろ!CPF・唸鳴神(うなりなるがみ)!」
亜蘭は魔法の装填が完了すると、左腕を突き出す。すると前方に激しい稲妻が走りゾロを狙っていた獣数体を電撃で破壊することに成功する。
「これは、画期的すぎるな。ハーネイトという人物は優秀にもほどがあるぞ。さあ、行こう!」
亜蘭はハーネイトの発明を素直に褒め讃えつつ、ひたすら敵を倒し、汚染域を浄化していくのであった。
一方で別の場所にてスカーファは、不敵な笑みを浮かべつつもどこかで不満そうにしていた。
「全く、私の故郷にたまに出ていた化け物よりもぬるいな」
「何なのだ貴様は、涼しい顔してあれを倒しよる」
「お前こそ、実はまだ隠し玉などいくらでもあるのだろう?」
「ふん、確かにあるにはあるがな」
汚染パネルに近づく八紋堀とスカーファは、共に武器を手に取り現れる獣たちをばっさばっさと切り裂いていく。すると同時に汚染パネルも浄化され、安全地帯がどんどん確保されていく。
八紋堀は美しく、しかし恐ろしい彼女の戦いぶりに驚嘆しつつ彼女の生い立ちや過去が気になっていた。
歴戦の戦士でありハーネイトと共に巨大魔獣と戦い、13英雄の一人としてあげられる彼ですら、スカーファとクー・フーリンの連携の恐ろしさに目を奪われていた。
「フフ、ただの英語教師ですが」
「ほう……嘘は下手なようだが、腕は確かだな!」
「そちらこそな!ジャパニーズセイバーマン!」
彼女は優しく微笑みながらそう言い、八紋堀はまだ裏があるとにらむが、彼女がどうも本物の日本の侍と勘違いしていることに言葉を返せなかった八紋堀であった。
「えぇ……拙者異世界の」
「八紋堀、彼女にそれ以上言っても無駄そうなので、とりあえずぶった斬って!」
「仕方ないのう、では、我が剣技をご覧あれ!!!文斬流・二束三文斬りぃ!!!」
ハーネイトが八紋堀にそういいながら近くに敵が隠れていることを知らせ、それに応えるように彼は得意の剣技ですぐさま獣を切断した。
すでに橋の1つを制圧し、もう2つの橋も安全に通行できる、そうハーネイトは思い全員を前に進めようと指示したその時、前方にバッタの様な魂食獣のようでそうでない存在を確認した。
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