第126話 事前偵察の重要性と作戦準備



「あ、あれ、亜蘭さん……?」


「姉さん、桃京に戻ったんじゃ……」


 亜里沙と彩音はそれぞれなぜ2人がまだここにいるのか質問した。その答えは以下のようなものであった。


「僕たちはマネージャーと交渉し、しばらく春花で活動することにしたのさ。力もある、参加させてくれ」


「私たちも、戦う力を手に入れたわ。お願い、参加させてください」


 亜蘭と初音はそれぞれそう言い、自分たちも活動に参加できる力はあると訴えるが、ハーネイトは2人がまだどのクラスに適正があるのか調べていなかったため、それが終わるまでは参加するのは難しいと伝える。


「まだ君たちはクラス評価試験が終わっていない」


「だったら現地で評価すればいいのではないか?」


「っ、仕方ない。伯爵とボルナレロ、すまないがそちらの支援はあまりできそうにないかも」


 亜蘭の提案にハーネイトはやれやれだと言わんばかりな顔を見せつつも、伯爵とボルナレロにそういい承諾を得たためそうすることに決めたのであった。


 確かに実のところ、各メンバーの適性クラスは実戦で初めて判明する場合が少なくないため、リスクは上がるがやむを得ず彼はそう判断したのであった。


「だろうな、まあ任せとけ」


「ということで3チームに分けて今ここでチーム編成を行うよ。ということでシャックス、ユミロ、ネムネムはおしまいだよ」


「んあ……むっ!マスター、何事か!」


「やれやれ、まだ寝ていたいのですがハーネイト様」


 ハーネイトは寝ていたユミロとシャックスを異界空間というか、例の修練の部屋から召喚し、仕事についてくるようにと命令する。2人は寝ぼけ眼をこすりながらもすぐにスイッチが入り雰囲気が変わる。


 普段少し気が抜けている彼らだが、やるときはやるという点でも主であるハーネイトと似ているところがある。


 流石お昼寝ネムネム同盟を組んでいる者だけあって、このでこぼこな3人の実力は霊量士の中でも別格だという。


 ユミロはアタッカーとシールダーのダブルクラス、シャックスはシューターとサーチャーのダブルクラスなため不足している部分を補う上でも重要な戦力である。


「んで、某も参加するわけだな?」


「頼む八紋堀。終わったら好きなだけ唐辛子食べていいから。あと死ぬほど辛いサボテンってのもこの世界にあるってさ」


「いいぞ、任せておけ、ニヒヒヒ。楽しみだのう」


「わしも出るぞ。久しぶりに戦場の風を感じたいのでなあ。それと、不吉な影が迫っておる。この世界にも、別の世界にもな」


 八紋堀とヴラディミールも作戦に参加することになり、ハーネイトは伯爵からもらったデータと合わせどの地点に誰を向かわせるか素早く頭の中を整理しながらチーム編成を考えた。


 今回、ロイやオフィーリアには事務所で留守番してもらいリリーの手伝いに回るようにメールで指示し、今いる人たちだけで作戦を行うつもりであった。


「では各方面のチーム編成に関して通達します。まず私は……」


 ヴラディミールの助言を受けハーネイトは、先にここで派遣メンバーを決めることにし、どう戦力を割り当て振るかを考えたのち3分で全員にどのナビゲーターの下で活動してもらうかを指示した。


「分かった、俺様は商店街の一角にある亀裂の中で見つけた、廃工場と倉庫だな」


「俺は国道沿いの亀裂A内にて、廃墟と化した街の中にある怪しい箇所の調査と敵のせん滅だな」


「それで、ビジネス街の古い空きビルにあった亀裂内にて、古戦場らしき異界化した空間の解除を私のチームで実行することになる」


「相棒、全部例の気運で汚染されている。奴らが何かを隠している可能性があるぜ……」


 事前偵察はやはりしておいた方がいい、ハーネイトと伯爵は特に思っていた。異界化をも引き起こす亀裂の中は敵の領域(テリトリー)でしかない。


 相手に地の利があるとみるなら、少しでも情報を稼ぎこちらが有利に振舞えるようにするまで、これが戦の基本。今回もこの情報収集が功を奏し的確に必要な戦力を亀裂ごとに派遣することができたのであった。


 ここでハーネイトたちは普段何をしているかについて説明すると、基本的に響たちは学生なため平日の昼間は動けない。


 それは他に職業を持っている人たちも同様であり、この間にハーネイトと伯爵、そして仲間たちが手分けして各地を周り、事前偵察という形で記録や情報収集を行ったうえで、誰を当て割るのが一番合理的で生存率が高いかを常に行っている。

 

 それをすべて考慮したうえで、ハーネイトは緻密かつ大胆な作戦戦略を立てているのであった。もちろん寝る間を惜しんでである。


「分かった。Aミッションが初めてという人は私たちがやりながら教える」


「私はどうしようかしら」


「リリーは各亀裂を繋ぐ連絡中継をお願いしようかと」


「分かったわ。ここで装置とにらめっこしておくわね」


 ハーネイトはリリーとオフィーリア、ロイに対しホテル地下の通信管制室を使い全体の状況把握と敵データなどの収集を依頼し、その代表をリリーが務めることを承諾、これをもって3方面同時攻略作戦の開始がハーネイトより発令されたのであった。

 

 その後各チームに分かれ、ホテルを出てから各リーダーの案内で各亀裂の入り口付近に向かう。


「では出撃だ。各自ポイントに着いたらナビゲーターはリリーに連絡し速やかに作戦行動に入ってくれ」


「分かったぜ相棒」


「では行こうか、君たち」


 こうして、初の大規模3方面同時攻略作戦を開始したのであった。


Aチーム ナビゲーター ハーネイト  響 彩音 星奈 八紋堀 スカーファ 亜蘭 初音


Bチーム ナビゲーター 伯爵     五丈厳 九龍 翼 ヴラディミール 韋車 ユミロ


Cチーム ナビゲーター ボルナレロ  間城 時枝 黒龍 亜里沙 シャックス ブラッド


 以上の3チーム合計22名が、今回の作戦に参加するメンバーである。


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