第123話 魔法秘密結社首領と魔剣侍
「彩音たちか、どうした」
「先生、この人たちは?」
「そこの女性陣と青い着物の侍……は誰なんだ?まさか兄貴の仲間か?」
時枝と翼は、ハーネイトに対してソファーに座っている、一度も見たことがない人たちが誰なのか説明を求めた。
「ああ、彼女たちはバイザーカーニアの幹部でね。霊量超常現象の件について話が聞きたいといって」
「おおう、君たちがハーネイトの目にかなった若造たちかい」
「若造って、あんた俺たちと見た目さほどに……ぐああああっ!」
「何と、口の利き方がなっておらんなあ!こう見えてもわしは300歳は生きておるのじゃぞ?」
「首領、それは酷ではないですか。初見殺しに近いです」
「うぬぬ、私も妹のようなスタイルのいい肉体が欲しいのう」
ハーネイトはロイ首領について話をし、容姿にあまり似合わないようなしゃべり方をする彼女に時枝は思っていたことを口にしたが、それを一番気にしていた彼女の怒りを買ってしまった。
「ね、年齢詐欺?」
「恐らく古代人という奴か。にしてもこれは、幼女おばさんというべきかふぐぉお!」
ロイは時枝に対し、早速霊量超常現象を使いこなしCデパイサーから素早く拘束系の魔技、円気縛を放ち光の輪で締め上げた。
彼女は見た目に対してああだこうだと言われるのを気にしているためお仕置きしたのであった。
「そこのひょろ眼鏡君、言い方にも種類があるじゃろ?」
「ロイ首領、そこまでにしてください。ただでさえ貴女が来ることは想定していないのに」
「甘いのうハーネイト、甘いのう。まだ若いのう。まあ、みんなこちらに来たまえ。自己紹介をしようと思ってなあ」
そうしてロイは強引に響たちを近くに集め、にこにこしながら自己紹介を始めた。
「わしはロイ・レイフォード・ヴェネトナシアという。新たなる魔法の境地、機械と魔法の融合を目指した魔法秘密結社ことバイザーカーニアのリーダーじゃ。よろしくなあ」
「この人が、Cデパイサーの製作に協力した魔女……?」
「ふん、所詮俺様の敵じゃねえ」
ロイは自信満々な様子で最後まで高らかに自己紹介し、今までの業績について話をした。間城は見た目と話し方の差に戸惑いつつも只者ではないと警戒し、五丈厳は何故か彼女に喧嘩を売るような感じの態度を見せていた。
「私は、ハーネイト様及びロイ御姉様に仕える、オフィーリア・ペルテイシレス・ヴェネトナシアと申します。Aミッションではシールダーを主に担当させていただきます」
「兄貴はメイドさんが好きなのか?しかし美人さんだな!」
「そう言っていただけると嬉しいですわ」
「髪がきれいですね。薄青くてきれいな青空のようだわ」
「ありがとうございます。ロイ御姉様だけこの髪の色を受け継がなかったようで」
次にオフィーリアが一礼し、丁寧に自己紹介を行い笑顔で対応する。
小柄な体形である姉と、スタイルの良い長身の彼女のどこが似ているのか全員分からなかったが、眼付きや耳の形などで理解しつつ、亜里沙は彼女の髪の色がきれいだという。
また、翼も上品でおしとやかな彼女の姿に見惚れているようであった。それにオフィーリアは嬉しそうにそれぞれ答える。
その場にいた彼女を良く知らない人たちは全員、穏やかで接しやすい人だと思い緊張が解けていた。だがヴェネトナシア家の血を引く彼女もまた、恐るべき戦闘能力を持つ存在であった。
「わしのは父親似じゃ。妹と仲良くしてくれたまえよ」
「なあ兄貴、前に言ったミレイシアっていうおっかないメイドさんって、まさか」
「ああ、ロイ首領の妹で、オフィーリアの姉だ」
「どの程度怖いのかイメージ湧かねえんだけど」
ロイは髪の色についてそう説明し、翼は以前聞いたハーネイト四天王の一人、ミレイシアとロイとの関係についてハーネイトに問うが、実際どのくらい危険な人物かまだ彼には理解できていなかった。
「そうじゃなあ、1人で数千万人が住む大国を滅ぼせるくらいには強いの。もともと大量虐殺を専門とする魔法人形師じゃからな」
「さ、大量虐殺……!?先生……よくそんな恐ろしい人を仲間にしましたね」
「オフィーリアも結構どっこいどっこいだぞ。ミレイシアは、私と同じ血徒を倒すために、汚染された都市と感染者を倒していただけなんだ。その縁で知り合って、死闘の果てに彼女が俺に王の素質があると言って、ついてきたんだ」
恐ろしいワードを聞いて彩音たちは体が固まるが、そういう人でさえ配下に置き支配できるハーネイトが改めて色んな意味で頼もしいとも思っていた。
「おほん、そろそろ名を名乗っても構わんかな?」
にぎわっている中で一人ぽつんと放置されていた八紋堀はわざと咳をし、注目を引いてから全員に声をかけた。
ヴラディミールは既に温泉に行ったため少し心細かったのか、いい加減彼は話の輪に入りたかったように見える。
「なんすか、このどう見ても武士みたいなおじさんは」
「いかにも、儂は武士じゃ。そんでこの若き魔剣士のライバルと言えよう」
「な、なんだって?」
翼はこの30過ぎのどう見ても戦国、あるいは江戸時代から来たような雰囲気や服装の男が何者か気になったので質問したが、それに彼は嬉しそうに答えた。
「おほん、儂は八紋堀影宗と申す。王に仕えし家臣であり、また一人の侍でもある」
「八紋堀、まさか夜之一王に無断で……」
この八紋堀という男は実力はあるが性格や言動がハーネイトとどっこいどっこいの変人であり、突拍子もないことをしでかしたり閃いたり、奇行に時折走る点は先述する通り変わらないほどであった。
今回来た理由についてハーネイトは訪ね、八紋堀が使える国の王に黙ってきたのかと質問したのだが、
「ちゃうわ、王の命令で行くように言われたのじゃぞ。貴様がくたばっていないかを確認しに来いと。それと言っていたじゃろ、優秀な素質を持つ若い剣士がいるとな」
と八紋堀はきっぱり否定した。それを聞いたハーネイトは彼と王に呆れる。
思わず素の砕けた口調が出てしまうほどであったが、響に新たな技を教えようと思い呼ぼうとしたのは事実であるため、ハーネイトは八紋堀に、若き戦士である響を紹介したのであった。
「はあ……なにやってんのよ夜之一王は。私は無事だっての。ああ、それとそこにいる銀髪で目つきが鋭い、いい面構えをした男の子がいるでしょ、彼が文斬流に興味がありなおかつ剣の素質がある新入りだ」
「お主がか」
「は、はい。俺は、もっと強くなりたいんです」
八紋堀はソファーからゆっくり立ち上がり、響の前に来ると静かに見つめ、彼の目に潜みし意志を確認した。そしてある言葉を投げかけた。
「強くなって、その先に何を求めるというんじゃ?」
「先生の様に、みんなを守れる男になりたい」
「ほう、ハーネイトの幼い時とどこか重なるな……。ふふ、はは、よかろう。儂が、責任をもって育てようではないか」
「よ、よろしくおねがいします」
どうやら響は彼の目に叶ったようで、八紋堀は自身の剣術を継いでくれる者が現れたと素直にうれしそうな顔をしていた。
自身の流派を、異世界の人間が継ぐとは彼は全く思ってもいなかったからであり、これは気を引き締めていかねばなと思い、意気込むのであった。
そうこうしているうちに、スカーファがジャージ姿で事務所に入り、若干申し訳なさそうな顔をしつつ目線をどこか逸らしながら、ハーネイトに報告をしてきたのであった。
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