第121話 初の本格的講義と霊量子の秘密?
「たまたま時間が取れたな。しかし、久しぶりに学生時代に戻ったかのようだ」
「親父の学生時代か……」
「大和さんと俺の親……勇気父さんは高校時代どんな関係だったのですか?」
「ああ、俺と勇気さんはサッカー部で知り合ってな、いつも二人でいいことも悪いこともしていたなあ。全く、勇気さんも」
大和は息子や響を見ながら、自分の高校時代についての思い出が脳内によみがえり、色々なことがあったなと思い返す。
翼は父の学生時代が気になり、響も自身の親である勇気と大和の関係が気になっていた。そこで大和は何があったのか、どんなことをしたのか2人に話をし、彼らは興味深そうに聞いていたのであった。
「やっとこうして、先生から色々ゆっくりと話を聞けるわ」
「だな彩音さん。まだ事務所がここじゃなかったときはなかなか聞けないこともあった」
「助けてもらって、それが縁で移りましたものね」
「亜里沙さんも本当に危なかったですよ」
彩音は響の方を見ながら、ようやく授業が受けられると嬉しそうにし、時枝も同じ意見だという。亜里沙は自身が助けられた縁で、ハーネイトたちもこうして活動できている点について話しつつ、自身が助けられた時のことを思い出しかすかに笑った。
「ったく、何やってんだ遅せえぞ」
「待っておこうぜ勝也」
「そうよ、少しは落ち着きなさいな狂犬さん」
「ああ?手前やる気かぁ?」
「全く、少しは落ち着いて待てないの?」
一方で五丈厳は態度が悪そうな感じで机に足を置き、まだかと待っていた。九龍と星奈はそれぞれ彼に指摘するが今日の彼は一段と不機嫌であった。
「来たぞ先生が」
「待ってたぜ兄貴!今日は質問攻めだ!」
「遅れて申し訳ない。今日は忙しい中、時間を割いて私の講義に出てくれてどうもありがとう。君たちが得た力の秘密と更なる可能性をこの授業で教えよう」
そうしてハーネイトは手にしていた資料を人数分各自の机に置き、ホワイトボードの前に立つと何枚か写真や図が載った紙を磁石で張り付けてから、授業を開始した。
「まず、霊量子とは何か、それから話をしよう。既に響と彩音は最初のころに話したと思うが、覚えているかな?」
「はい、霊量子とは、分子、原子よりもさらに小さい物質で、万能元素とも呼ばれるエネルギーの一種でもあります。それらを知覚し操れるのが俺たち霊量士、現霊士なのです」
「その通りだ。君たちが実際に呼び出す具現霊は全て、霊量子により形作られている」
彩音は正確に、自身らがどういう能力を今持っており、何ができるのかを答えた。
ハーネイトはよく勉強していると感心し、自身がさらに深く霊量子の説明を行っていく。
「この霊量子を直接利用し攻撃などに用いるのが霊量士。そんでその霊量子の扱いに慣れ、自身の持つ守護霊を呼び出し戦闘に利用するのが現霊士。ここまではいいかい?」
ハーネイトは2つの能力者の違いと共通する点に関して話をする。
そもそも基本的に霊量士(クォルタード)というのが基本であり、それをさらに応用する者たちもいる。
それを聞いた上で間城は疑問に思ったことを質問した。それはハーネイトの戦い方が自分たちと異なる物であったのを見ていたからであった。
「でも、先生はその霊量子をさらに別の方法で運用していませんか?」
「そうだな、確かに見ていておかしいと思ったことはある」
「もしかして、あの時の変身も関係があるのですかハーネイト様」
間城と時枝はその点についてさらに質問し、亜里沙は自身が見たハーネイトの悪魔の腕についてそれも関連があるのか立て続けに質問した。
「まてまて、まずは間城からだな。そうだ、良く気付いたな」
「私たちは知っているけどね」
「先生は、霊量子をもう一度組みなおして、あらゆる物質を生み出せるのさ。それで修理も治療も何でもできるんだよ。すごいよな」
「そうだが、全く。響の言うとおり、私は創金士という特殊な霊量士なのだ」
そう、ハーネイトこそ最も完成され極まった、霊量士の中でも特異かつ恐るべき存在、創金士(イジェネーター)である。
何故この能力を得たのか、それについてハーネイトは話をし、聞いた上で五丈厳を初めとしたほぼ全員がこの男が本当に人離れした存在なのだなと実感せざるを得なかった。
「それで、色々剣を作って飛ばしたり、マントで攻撃しているのか」
「そうだ時枝」
「いきなり姿形が変わったり、悪魔の腕に変えたのも、同じ原理ということですね?」
「亜里沙も分かっているな。あれを見れば、只者でないのはよく分かるでしょう。ただこの創金術はヴィダールの血を引く者、その中でも第3世代の神造兵器群以降の技術であるのだ。故に基本貴方たちは創金術を使用できません」
それでも時枝と亜里沙は好奇心の方が勝り、ハーネイトにいつも戦っている方法がすべてその創金術で成り立っているのかを確認した。
「ってことは、俺たちはそこまではできねえってのか」
「うーん、一時的に霊量子を物質化することは鍛錬次第でみんなできるようになる。Cデパイサーに組み込む新プログラムにも、その創金術を発現させられる技術を組み込んでいこうと計画しているのだ。それとそろそろ新たな技術を教えようと思うが、それにはその物質化が欠かせない」
翼はそれを聞いて、兄貴の様にはなれないのかとがっかりしていたが、似たようなことはできるとわかり嬉しそうに話の続きを聞いていた。
ハーネイトは今までの彼らの戦いぶりから、ある戦闘技術に関して伝授しようと考えていた。だがそれには、彼らがどこまで霊量子を制御できるのかもう一度確認する必要があった。
新たな技術の習得に誰もが興味を抱くなか、九龍と五丈厳は特に意欲が高いようで落ち着いていないように見えた。
「早くその新しい技習いたいぜ」
「けっ、やはり只者じゃねえな先公は」
「焦るなよ九龍。今度私と試合でもしてもらおうか。それでどこまで習得できたか分かる」
「先生、提案があります!」
「何だい彩音」
彩音が突然提案をしてきて驚いたハーネイトだが、彼女に何かいい案があるのだろうと思い話を聞くことにした。
「模擬戦しましょうよ!先生が審判して、私たちの今の実力を見ていただければ先生も楽でしょ?」
「彩音?何か別にやましいこと考えていないかい?」
彩音はとても嬉しそうに言いながら実力を見ていただく方法を提案したが、わずかな邪気を感じたハーネイトは牽制でそう言い彼女を動揺させようとする。
「え?ははは、そんなこと、ねえ」
「そうよあやちん、もしかして、先生との一日デート券を優勝者に……?」
「大胆だねえ、そこまでハーネイト先生のことが好きなのかい?」
「え、ええ!?そんな大和さん、私はその……ええと」
間城と大和は察して彩音に対しそう言う。すると彩音は顔を赤くしながらまごまごしていた。それを見たハーネイトはやれやれだといいそれでも彼女の提案を受け入れることにしたのであった。
「そういうことか間城。だが、いつも私の代わりに手伝ってもらっている以上君たちに別の褒美を用意しないととは思っていたが……それでいいのか?」
「はい!」
「まあ、俺も先生の話は色々聞きたいけどな」
元々何かの形で別に褒賞を用意すべきだとは思っていたハーネイトであったが、そういうものが望みだとは思わず驚くも、それでいいのならと確認した。響も彩音を見ながら自分も先生の話をもっと個人的に聞きたいと思っていた。
「全くな……私に妙な真似だけはしないでね。昔、色々あってね……いまだに恐怖ってのが拭えなくって」
「あはは……分かりました先生」
「ではみんなの都合がつくときにね」
彩音に1つ牽制するようにそう言い、ハーネイトは近いうちに模擬戦をやることを決めたのであった。
最も良い成績を残した人には、特別な褒賞を与えると聞いた高校生たちは特に盛り上がっていたのであった。
「父上にも話を通しておきましょうか?」
「その時は頼む、亜里沙さん」
「はい。今日のお話、聞いていて楽しかったですよ」
「ケッ、全く俺はあの事件と関係なしで偶然巻き込まれたのによ……」
「そうだな五丈厳。もっともな話だ。だが、君の具現霊はやる気満々だ。それに応えれば、さらなる高みを掴める」
亜里沙は今日の感想を述べ、微笑みながらまた受けたいといった。一方の五丈厳は複雑な顔をしていたが、事情を把握しているハーネイトは彼のやる気を出させるためにそういい、案の定彼はやるかという感じで彩音や響たちの方を見ていた。
「俺たちも精進しなきゃな!彩音、間城!」
「鮮那美は闘志むき出しね」
「間城、俺たちも連携の確認だ」
「彩音、翼、俺たちも負けていられねえ」
「うん!勿論よ響」
「へへへ、みんな燃えてきた感じだな!」
こうして初めての授業は無事に終わり、参考になる話をもとに自身らがどうすれば上の段階に進めるか考える機会となった。
霊量武器という技術を身に着けるためにどうするか、それが彼らの当面の課題であった。
ハーネイトは授業を終え、事務所に戻りソファーに座ると、一息ついてから伯爵とリリーと共に話をしていた。その時、予想外の来客者が部屋を訪れたのであった。
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