第111話 レストランでの会話


「おかえり伯爵、リリー」


「おうよ。てか客人か……ほうほう」


「あら、可愛い女の子ね。この人も貴方の仲間なのですか?」


「私の弟子だ。滅茶苦茶強いぞ」


「貴女も可愛いわねえ。もしかして他の国からきたのかな?」


「ええ、アメリカから来たの」


 リリーとジェニファーは互いにそう言いながら話をする。リリーも同年代の同性の人ともっと友達になりたいらしく、積極的に話をしていた。


「そうなんだねえ、まあゆっくりしていってね!」


「ハハハ、ジェニファーと言ったか。今響たちは俺たちの下で修業しているのさ」


「修行?」


 伯爵は話の続きをして、響たちが今何をしているかを話す。もう数ヶ月になるが、今では彼らも立派に戦士として活躍している。


 ハーネイトはもちろん伯爵とリリーも、彼らの成長を見届けることを楽しみにしていたのであった。


「化け物を倒すための戦士として、な」


「……てことは、ハーネイトさんも貴方も?」


「そうだ」


 やはり只者ではない、ジェニファーは一目見て思っていたが、響や彩音がこの男たちの下で修業しているということを聞いて更にそう思っていた。


 ただそこで疑問を抱いたのは、伯爵はともかくハーネイトは戦士としての風格があまり感じず、戦うのに向いてなさそうな性格だと思っていたことであった。


「っと、俺は伯爵、んでこいつがリリーだ」


「よろしくね!」


「はい、よろしくおねがいします。伯爵さんとリリーさん」


「さんはいらねえ、伯爵でいいぜ!」


 自己紹介を互いに済ませ、そのあとは響や彩音たちに何があったのかを話し、それを聞いたジェニファーはこの3人がすごい存在であると認識した。


 それと、彼らは彩音や響、翼の命の恩人であり、様々な怪事件を追って調査しているという点にすごく興味を惹かれていたのであった。


「お腹空いて来ただろう、レストランに行かないか?」


「あ、あの……」


 伯爵とリリーも交え話を暫くした後、ハーネイトはジェニファーにレストランで食事を楽しんできなさいという。ある程度情報が手に入ったのと、彼女の負担を減らすために提案した。しかし彼女はもじもじしながら、何かを言おうとしていた。


「どうした?」


「今日はありがとうございました。また、来てもいいですか?」


「ええ、いつでもどうぞ。つらいことがあったら相談するとよい」


「俺たちも相談に乗るぜ、へへへ」


 ハーネイトはそう言い彼女を安心させ、エレベーターまで送りレストランに向かうように促した。


 その後すぐにレストランに向かったジェニファーは、食事をしていた3人と合流する。翼が彼女が手にしていた券をギャルソンに渡せばいいと指示し、近くにいた若い男に声をかけて券を渡した。料理が運ばれるのを待っている間に、彼女は3人と話をする。


「ジェニファーさん、どうだった?」


「貴方たちの先生、とてもいい人ね」


「でしょ?この食事も安く食べられるのよ」


「気は聞くし、俺たちのことを大切にしてくれる、兄貴はすげえ」


 ジェニファーもハーネイトのことを気に入った旨の話をし、それに翼が話に乗る。


 気配り上手で自分たちにできるだけ負荷がかからないように立ち振る舞いすごい技術を開発しまくるハーネイトは、翼にとっては自慢のお兄さんのような存在であった。たまに奇妙な行動を取るのはあれだが、それでも頼れる存在でもあった。


 翼は一人っ子だが、もし兄弟がいるなら頼れる兄貴がいいなと前々から思っていたようで、ハーネイトを先生呼びではなく兄貴呼びする理由はそこにあった。


 最も当の本人はそう呼ばれるのが少し苦手であり、あくまで先生呼びがいいのであるが翼や九龍、文香などは癖でそう呼んでしまうという。


「ええ、貴方たちもいい先生に巡り合えたようね」


「ああ、変わってるところはたくさんあるし何かずれてるところもあるけど、立派な人だよ」


「へへ、兄貴は所々抜けてるっぽいが、戦う時の兄貴はすげえんだぜ?山みたいな大きい化け物でも涼しい顔で倒してしまうんだ」


「ジェニファーさん、私たちも貴女と同じ、大切な存在を奪われた者よ。一緒に修行して、強くなりましょ?」


 今までどのような戦いに参加し、何を見てきたかを響と翼は話し、ジェニファーも興味津々で聞いていた。彩音は友達として、一緒に修行したいということを伝えた。


 そうすると料理が運ばれてきた。今日のメニューは白魚のハーブソテーとカボチャのポタージュ、それにガーリックフランスパンと生ハムのサラダで、それを見たジェニファーは盛り付けの美しさに驚いていた。


「わああ、すごいわ!」


「このレストラン、いいシェフがいるみたいよ。食べながら話の続きしましょ?」


「天王寺さんって言う料理長と、ハーネイト先生はよく新メニューの開発を共同でしているんだとさ」


「それがまた利用者に好評なんだよ。すごいよな」


 彩音は、ここで提供される料理のメニューなどは料理長やシェフ、ハーネイトらが会議をして決めることが多いと彼女に説明する。


 ジェニファーはあの探偵であるハーネイトが、それ以外の分野でも活躍している人なんだと思いながら話し、食事を堪能し、自分もみんなの様に一緒に活動したいなと思っていたのであった。


「そういや近いうちに初めての講義があったな。やっと本格的にいろいろ勉強できるな」


「私も、それ気になる」


「特に制限はないみたいだし、私から言っておくね」


「うん、みんな、ありがとう」


 食事を済ませジェニファーは、響と彩音、翼と共にホテルを出て、それぞれの自宅に帰宅し明日に備えていたのであった。

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