第109話 アメリカから来た留学生・ジェニファー
「おはようみんな」
「おはよう彩音っち!」
「おはよう、彩音さん、響君」
「ふああ、みんな朝強いな……」
あくびをしながら教室に入った響は、部屋の雰囲気が違うことに気づく。いつもより騒がしいのはなぜかと思い彩音と響は、すでに1限の授業の準備を整えていた亜里沙に質問をした。
「そういえば皆さん、今日からこのクラスに留学生が編入すると」
「本当なの亜里沙さん?」
「ええ、アメリカから留学しに来たとまでは父から聞いております」
一応学長である宗次郎から話を聞いた亜里沙は、今日からこのクラスで共に勉強することになる留学生について知っていることを話した。すると副担任が教室に入ってきて話を始めたのであった。
「では皆さん、今日からこのクラスに新しい仲間が加わります。皆さん、仲良くしてくださいね?」
そう言うと、教室のドアが開き、1人の制服を着た金髪ポニテの少女が入ってきた。
恐る恐る席に座る響たちを見ながら、一呼吸おいて緊張した面持ちで彼女は自己紹介を行う。
「わ、私はアメリカのフィラデルフィアから来ました、ジェニファーと言います……。皆さん、今日から、このクラスで、よろしくお願いします」
少し気弱だが、可愛らしい女の子が来たと響や時枝は思い、彩音と間城は彼女を見て綺麗でかわいいなと思い互いに何か怪しい思考を巡らせていた。そしてクラスの全員が彼女を快く迎え入れたのであった。
「これから日本で多くのことを学んで、皆さんと共に良い生活を送りたいと思い、ます」
「まだジェニファーさんは日本語に不慣れなところもありますが、それでも毎日よく勉強しているとのことです」
「よ、よろしくお願いいたします」
ジェニファーは先生の案内で、開いていた彩音の隣の席に座り、彼女に挨拶をした。
「よろしく、お願いします、ね」
「ええ、よろしくねジェニファーさん。私は如月彩音。一緒に勉強しましょうね?」
「は、はい……!」
そうして午前中の授業が終わり、昼休みに彩音は早速ジェニファーと話をしていた。
彩音は持ち前の明るく分け隔てない性格のおかげで友人が多い。ジェニファーに対しても自然体で接して相手のペースに合わせ話をしていく。
「チアリーディングしてたの?いいわね、この学園にもチアリーディング部あるわね」
「そう、なの?だったら入ろうかな、えへへ」
「可愛いねジェニファーちゃん。分からないことがあったらどんどん聞いてね」
「あ、ありがとうです」
ジェニファーが故郷でそういうことをしていたことを聞き、彩音がその活動ができる部活があると紹介する。
「皆さん、すごいです……」
「大丈夫?」
「はい、みんな元気がいいなって。こんなに質問されたの、初めて……ね」
「おい彩音、今日は部活の後先生のところに寄るのか?俺母さんが夜勤だから、ホテルのレストランに行こうかと」
2人が話しているところに響がやってきて、学校が終わった後どうするか質問する。
すると今日は部活をした後にホテルに寄って、韋車やスカーファたちとスパークリングや霊量士の訓練をしてから夕食をレストランでとることを彼女に告げた。
「うーん、私もそうしようかな?初音姉さんも桃京に今戻っているし、うん、行こう!」
「ホテル……?食事ができるところがあるの?」
「ああ、ジェニファーさんか。こっちの話だから気にしないでくれ」
「ええ?でも……っ、何だか楽しそうで気になるな」
響の話が気になるジェニファーは、2人の様子を見ていた。何かこの人たちは秘密を持っているのかなと思いつつ、様子をうかがうとドアを思いっきり開き翼が入ってきた。
「オー、この人が留学生か、かわいいな」
「貴方は?このクラスの人ではない?」
「ああ、俺は体育コースの鬼塚翼だぜ。んでこいつが結月響」
「ったく、自己紹介は自分でするって」
元気よく翼はそう自己紹介し、響は少しむっとした顔でそう言いながら二人で話し始めた。
「へへ、そういや新しいレストランのメニュー出たって兄貴から聞いたぜ」
「そうなのか、気になるな」
「早いわねえ。料理長と先生のコラボ、いいわねえ。魔獣料理研究会の代表ってのが先生の気になるところだけど」
「先生が高級食材の味をほとんど理解できないのが、魔獣の肉の食べ過ぎってボガー兄貴から聞いたぜ響」
「あの、ホテルと、その先生と兄貴って……誰?」
ジェニファーは話に加わりながらそれが何かを聞こうとし、翼は快く答えようとする。
「ああ、俺たちの上司が……って何だよ響」
「翼、俺たちのやっていることは秘匿事項だろうが」
「ちょっとぐらいいいじゃねえかよ」
「ええ、何だか……聞いてはいけないこと聞いた?おばあちゃん……私妙なことに巻き込まれてる?」
2人の掛け合いを見て、彼女は少し不安になり、死んだ祖母のことを思い出しながら自身の立ち位置についてそう思っていた。
「ジェニファーちゃん?どうしたの?」
「うん……半年前に亡くなった祖母のことが……」
「ええ?どういうことよジェニファーちゃん」
「うん、あれは……」
様子が少しおかしい彩音が声をかけ、ジェニファーは祖母のことと故郷で起きている事件に関して彼女に話した。
「何?それって本当なのか?」
「まさか、外国でもあの事件が?」
「こりゃ兄貴に相談した方が……このジェニファーってのも、俺の予感だけど力を身に着けそうだぜ」
彼女を話を聞いた三人は、ひそひそと話し合いながら、この留学生が故郷で自分たちと似たような目にあっていること、翼はこのジェニファーも、力を身につけそうな予感がすると言いどうするべきか考えていたのであった。
「皆、隠し事しているの?」
「ジェニファーちゃん、その話、あとで聞かせたい人がいるのだけど話してくれる?」
「そ、それは……うん。でも、信じてくれるかなあ」
「駅の近くにある、ホテル・ザ・ハルバナの地下に特殊な案件を扱う探偵社があるのよ。霊的な物への対応もしている、凄腕の探偵と変な人たちがいるんだけど、そこに行けば分かることがあるかもね」
ジェニファーは今の話を聞いたことでようやくこの3人が何をしているのかある程度理解できた。
この3人は、どういう経緯で関係があるのか分からないが、その特殊な案件を引き受ける探偵事務所と何か関わりがあり、その事務所があるホテルの地下にあること、だから事務所に寄るついでにホテルで食事を摂ろうとしていたのだなと、ジェニファーは納得した表情を見せながら理解した。
「そのホテルで、皆さん食事を?何か怪しいけど……でも、行きたいわ。案内、してほしい」
「分かった、俺から先生に連絡を入れておく」
「あ、ありがとう響君……っ」
「いいってことよジェニファーさん。先生は真摯に話を聞いてくれるはずだぜ」
「んじゃあ部活の終わる7時に校門前で集まろうぜ」
「後さ、ジェニファーさんは紅い流星ってのは知ってる?」
「うん、あの夜空に見えるあれ、だよね。見えるよ」
「俺たちも見えるんだ。今俺たちはその星を調べてるんだよ」
「そ、そうなんだね。私も、気になっているから、調べたいな」
「探偵さんの所長さんもよく見えるって」
「そうなんだね彩音さん。では、後で校門前で会いましょうね」
そうして打ち合わせをした4人は、学校が終わり部活も済ませた後学校の南門前に集まり、例のホテルに向かうことにした。
彩音が先にハーネイトに連絡をして、ホテルのフロント近くにあるエレベーターで地下に降り、ハーネイトのいる事務所のドアをノックしたのであった。
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