第85話 調査準備の連絡
「皆さんへ、恐らくニュースか何かで知っている人がいるかもしれませんが、半月ほど前から隣街にてソロンの気運に侵された影響と思われる薬物中毒患者が出ています。そこで数日ここから離れて文治郎さんなどと協力し、街中を調査します。詳細は添付された資料を確認してください」
ハーネイトは文治郎と話をしたうえでそう結論を出し、少数精鋭で調査を行うため大人たちで全体調査を行い、Aミッションなどの発令時だけ来てもらうようにと考えた。
それは、自分たちは学生たちと比べ時間があるが故のやり方である。出来るだけ学生には、今の時期にしか学べないこと、体験して欲しいことがたくさんある。それをハーネイトは配慮していた。
すると屋上にいた彼はすぐにエレベーターで地下事務所に足を運ぶと、急いでPCでキーボードを叩き、尋常でない速度で資料とメール文を作りCデパイサーにそれを映し転送したのであった。
「母さん、そういえば昨日病院で1人そういう患者受け入れたって……」
「そうなの?それ大丈夫なのかしら。よりによって先生が調査しに行くし、行く前に何とかしないと」
「だよな……ぜってえ母さん碌なことしねえ」
「それはないでしょ響。おばさまもそこまで無茶は……」
「この前の病院のあれもそうだっただろ、母さんも結構向こう顧みずなところあるからさ」
「あははは……そ、そうだよね」
ハーネイトと文治郎が話している中、響たちはよく集まるハンバーガーショップで話をしていた。
響は母である京子の働く病院で、ハーネイトが送ったメールに書いてあったような症状を訴える患者を受け入れた話を彩音にもしたのであった。
もっとも2人にとって心配なことは、響の母である京子が連絡を受け強引に調査に向かわないかと言う事であった。
まだ能力が開花して日が浅い以上は下手なマネをしてもらっては困ると考えた響は、いざというときは何が何でも止めてやると思っていたのであった。
「ともかく、うちの学園でそのような危険な代物を使っているやつがいないことを祈るか」
「そもそも隣街だからね。少し前から子供は行きづらい場所だけどね」
「まさに桃京の歌蕪貴街さながらの夜の歓楽街。何も起こらない保証はない」
時枝と間城はメールの内容を見て、今抱えているのと関連がありそうなまた妙な事件が起きているなと思いつつ、他に被害者が増えないといいのにと思っていた。
メールに添付された資料には、その回収した薬にはソロンの気運、つまり今異界空間内で起きているあの汚染の素が微量に入っており、それを摂取すると、以前ゼノンたち霊騎士が話したような廃人となり暴走する危険があるかもしれないと記載されていたのであった。
また、それ以外にも危険な物が混ざっていることについても説明があり、薬に触れるなという通達が各自届いていた。
「っとみんな集まってんな。恋バナとかしてるか?」
「ちげーよ翼。なんでも……。それより先生からのメール見たか?」
「兄貴のだろ?見たぜ、ありゃやべえな」
遅れてやってきた翼がそう言い彩音たちを困惑させる。一応メールの中身は見た上で翼も話に加わりこれからどうするか話をする。
「親父も言っていたな。ああ、そりゃ兄貴たちの出番だよな」
「ソロンの気運を感じたって先生が言うなら、Aミッション来そうだね翼君」
「そんときゃばりばりやるぜ。それまで更なるパワーアップを図るまで」
「いいこと言うじゃねえか。聞いたぜ」
「ったく兄貴も大変だな。まあ、そのお仲間さんも相当だけど」
翼の言葉に五丈厳が乗り、九龍は少し笑いながらハーネイトとその仲間のすごさに辟易していた。
「先生からはその間、幾つか見つかった亀裂内の調査を行っていいと。皆確認しただろ?」
「おう、ようやく認めたってわけか?ハハハ」
「ただしパーティー組んで、だろ響」
「そうだよな、1人だと何かあると帰れないぞ」
ハーネイトがなぜ昼間に調査をしていたかと言うと、響たちにも現場での経験を積ませるために、異界内調査を代行してもらおうと、調査してもらいたい場所の選定をしていたからであった。
1チーム4人でパーティーを組み、異界空間内において怪しいところがないかの探索や、CP、宝魔石などの回収などを行って欲しいという指令を出したところ、全員がそれに協力すると意思を示した。
「何か先生と出会ってから、今まで以上に結束が固まってるね私たち」
「そうだな彩音。俺もそう思う」
「大事にしていきたいな。しかし、全員紅き流星を見ることができるってのも、何だか運命を感じねえか響」
「ああ、あの流星の謎も、星々が消えていく原因も突き止めよう!」
「そうね響君。私もネットワークを駆使して情報をたくさん集めるわ」
「変わった人ばかりだけど、話していて楽しいわ。もっと、多くの話を聞いて学びたい」
「俺も同じだぜ彩音」
先生に会う以前と比べ、今はよりみんなと話して結びつきが強くなったなと彩音は思いそう言い、響たちも同じだと言っていた。
「まあ、もう1つの問題はテスト期間中は余り作戦に参加できないわね」
「っ、いやな話を持ち出してくるなおい」
「まあまあ、そこんところは兄貴がどうにかしてくれるだろうし、勉強時間もできるだけ確保してもらってるわけじゃん」
「先生って、そこんところまで気を配れるのがすごいよね彩音。異世界の人?だからこちらの事情とか分からないことも多いと思っていたんだけどね」
「兄貴も元々先生として、後輩たちに色々教えてたんだとさ。それだから俺たちのことも理解して配慮してくれるんだろ」
学校のテスト期間中の話について、ハーネイトは響たちの話を聞き活動などについて配慮した形で指示を出していた。それについて間城は、自分たちを気遣っているハーネイトたちの手際の良さに若干の恐怖も覚えつつ、深く感謝していた。
「仕事はできるけど、オフはどこか残念な先生、だよね」
「まあいいんじゃねえの?俺たちのために気を使っている感じだしな」
「取り合えず、先生に返信して了承の返事返さないとね」
「俺たちも先生たちの負担を減らすためにやるぞ」
「いいぜ、暴れてやるよ」
全員はそう決断し、早く成長できるように各員勉学と共に基礎鍛錬をみっちり行い続けることを誓ったのであった。
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