第77話 ハーネイトの経歴と謎の装置?
「そうだな、魔法学を主体にやってはいるが、子供たちに生活に役に立つ計算や言語などを教えたり、遺跡発掘で見つけた情報をもとに考古学も担当していた。魔法工学の授業なんか教室にとても入りきらないほどの生徒がいてね……フフフ」
「まあ何でもできるのよねハーネイト。だから多国間戦争を1人で止めたり、世界終焉級の化け物を倒しまくったり、各国の王に仕えたりすごいんだから」
ハーネイトは自身の活動や得意分野について話し、それをリリーが彼の活躍も交えた話をし場を盛り上げた。リリーもまた、彼に命を救われ共に魔法の研究をしており、ハーネイトたちの故郷である視点から見ると異世界人である彼女は初めて、魔法協会という魔法研究組織で冠名持ちの魔導師になった経緯がある。
「はぁ……出会ってすぐにホテルの経営や探偵業などをしているとは聞いていたが」
「手広くやりすぎじゃないか?」
「多くの人や国家のお偉いさんに信用され取り入るためなら、私は何でもしてきただけの話です。自分の本当の親が誰なのか、その時は分からなかったから旅をしつつ情報を集めていたのです」
宗次郎や大和、田村などがなぜそこまで様々な仕事をしていたのか理由を尋ねると、ハーネイトは過去の自分についての話をある程度話したのであった。
恩師を失った件で、唯一生き残った自分が怖くなり、自分を生み出したのは一体誰なのかとルーツを探るため長い旅を続け、その中で色々お金が入用になり、情報収集も兼ねて積極的に困っている人を助けたり仕事を引き受けたりしていたという。
そういった地道な活動の中で戦争を止めたり巨大な侵略者を単独で撃破したり、更には宇宙からの侵略者とも戦闘の果てに勝利したりと、彼の活躍と功績には枚挙に遑がない。
彼の故郷の星ではこの男を知らない者はほとんどいないほどの知名度があり、稼いだ金を慈善事業や研究者などにも投資、支援のために使うその姿勢は多くの仲間を引き寄せるほどのカリスマ性を獲得するほどであった。
他にも英雄と呼ばれる存在は彼の住む星には何人もいる。ハーネイトを筆頭に、彼の部下であるサイン、民間救助会社の社長ことゼペティックスなど11英雄と称される存在がいるが、その中でも最も多くの命を助け守護したという点で彼に並ぶものはないのである。
侵略者による被害を10年間で100分の1まで減らした功績により、彼は各国から守護神だの救世の英雄と呼ばれているという。しかし、そんな彼の人生は波乱万丈にして、過酷にもほどがあると言う。
「そ、そうなのね……」
「実の親が長らく分からず苦しんでいたうえに、やっとわかったのがとんでもない親だったのか」
「聞いてて、悲しくなってきたかも私」
「わしの息子が、ヴィダールの造物主をあの手この手で言いくるめて、彼女の気運と超科学を元に生み出したのが、最後にして最高の神造兵器第4世代。つまりこのハーネイトなのじゃ。その事実を知ったときには憤慨したわ。だからこそな、孫については最後まで傍にいようと決めたのじゃよ」
このミロクという忠実なハーネイトの部下は、純粋な古代バガルタ人。つまりヴィダールの手先である神造兵器の第3世代に該当する。彼もまた長らく護星の戦士と称され、伝説の3剣者という異名を持つ。
だからこそ、再び起きようとしていた最悪の事態を止めに行くため、世界を奔走し女神代行として戦い続けるハーネイトについて、ミロクは自身の若い頃の面影を見つつ、孤独な戦いをしてきた自身とは違い彼にはもっと共に戦う仲間が必要だと考えていた。
「そこで、偶然出会ったあの2人、響と彩音か。彼らの素質をハーネイト様は認めたうえで、特別に霊量子戦闘運用術を授けた」
ミロクは、ハーネイトが2人の高校生を助け自身の持つ技を伝授しようとしたのも以前からの活動による影響によるものであり、他の誰かに術を精力的に教える彼はまさしく教師であると同時に、無意識に誰かを守るという意思が彼をそう動かしているということを話すのであった。
「あのまま放っておけなかっただけですよ。響や彩音たちのことがね」
「本当に、あの2人との出会いは偶然というわけだったのか。しかし……おかげさまで、私と息子は命を救われたわけだ」
「聞いておるぞ。まあ孫も仕事以外ではかなり抜けておるところがあるが、いつも気を張っている分の反動と思ってくれるとありがたい。そもそも戦うことを嫌う性格でのう、それでも誰かのためにと心を割いて前に立つ、まさに王(モナーク)としてはかなり秀でた孫じゃ。優しすぎるのが少しあれだがな」
ミロクは今まで聞いたことを話したうえで、今自分たちがここにいるのもまた奇跡なのかと大和は感じていた。彼の話を聞いたミロクは優しい面持ちで2人に対しハーネイトに関してそういう面があることを教えた。
「別に、オフの時くらい好きに……」
「まあ儂はあまり言わんが、相変わらずミレイシアとサインには言われるだろう。仕事上プレッシャーが半端なくかかるのは分かるがな」
「あの2人も、もう少し指摘に手心加えて欲しいなあ」
「2人とも、若に対する期待が高すぎるかもしれん。彼らも、お前の中にある王の気質に触れかなりの期待をしているのじゃよ。まあ気負うことはないがの」
「そんなに凄い2人がいるのか……」
ハーネイトのボヤキを聞きミロクは、自身はともかく、うるさい部下2人には注意しろと促す。それを聞いた大和は、この英雄と称される男にも苦手な人がいるのだなと思いながら2人の会話を聞いていた。
「では、私は研究の方に戻るので後は好きにしていてください。宗次郎さんも何か新たな情報か、仕事をしてほしい時はご連絡を」
「分かった、こちらでも捜査の参考になりそうな資料は集めておこう。どれも、放置すれば人々の暮らしを破壊しかねん話じゃからな」
「全く、根詰めて倒れちゃ困るよ。いい仕事は、いい休憩と共にあるってね」
「はい、大和さん」
その後今日の話はこれまでと言い、ハーネイトは研究室に向かうため立ち上がると、服のしわを手で軽く撫でて整えてから事務所のドアを開け廊下に出たのであった。
「兄貴、研究ガンバだよ!早くあれ使いたいなあ」
「こら、その呼び方はやめるのだ文香殿。仮にも我が主はヴィダールの王に……」
「まあまあミロクさん。他にもそう呼ぶ子がいますし、大目に見ていただけません?うちの息子もまるで実の兄のように彼を慕っておりますが」
「むう、まあ主殿が気にしておられないのならば構わんが……」
文香はハーネイトを部屋から見送ってから今行っている研究がうまくいくといいなと願うが、ミロクはハーネイトに対する呼び方について指摘する。
だが大和の言葉を聞き彼は仕方ないという感じの顔を見せてから、外回りに出るかとソファーから立ち上がると急いで部屋の外に出て、地下駐車場からホテルの外に出たのであった。
「……ようやく、完成したぞ。皆の時間をあまり奪うわけにはいかないのでな。早速実験してみよう」
それからしばらくしてハーネイトは、ある研究室に置いてあった、円筒状の中に人が入れそうな黒い物体の前に立ち何かを確認していた。
仕事の間に彼はもう1つ、ある実験を行うためこの装置を作っていたのであった。それは、少しでも協力してくれる人たちの移動や時間に関する負担を軽減するために考案した装置であった。
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