第63話 Aミッション2回目発令
「てことで亀裂の中に入ったわけだが……これ異世界浸食も始まってないか?」
「確かにな。これはもう完全にあれだ」
ハーネイトは入るな否やすぐに全員で周囲を確認する。しかしその違和感に思わず勝手に彼は刀を鞘から抜き構えた。
そう、前回のような電子空間ではなく……完全に別世界が広がっていた。
見渡す限りの砂地と荒れた廃墟の街。風はほぼ無風で、空気自体はとても澄んでいた。思わずハーネイトは深呼吸した。すると気が引き締まり頭がよく回る感覚を覚えた。
呼吸に関しては問題ない、むしろわずかに酸素が多いのが気になると分析しつつ、全員に大丈夫だと指示を出す。
「むにゃむにゃ……これは、そうですね。砂漠に近い荒れ地、所々に古い石の家が点在……果たしてどこでしょうか」
「空気自体は、殆ど地球の物と差がない。ごくわずかに酸素、窒素と二酸化炭素の比率が多いが誤差の範囲だ」
「魔法使えるといいのだけど。そうでないと私できることがあまりないわ」
シャックスは寝ぼけ眼をこすりながら分析し、ミカエルは大気中の魔粒子を観測した。すると彼女の表情が曇る。
魔粒子だけでは中級以上の魔法が不安定になる。そうなると本当に霊量子で組む方法を実行しないといけない。そう考えていた。
「とりあえず空気や温度に関しては普通に生命体が生存できる状態だ。それはいいが、もはや電子空間ですらないとはたまげた」
「勝手にたまげとけ、なんつってな。相棒、こいつぁ異界化浸蝕現象だよなあ」
「勿論だ、こんな真似をする輩は排除しないといけない。大世界も含めた世界バランスが壊れる。というか世界柱への影響が怖い」
ハーネイトと伯爵は改めて、ここまでひどい異界化浸蝕に驚きながらも今は救出が先だと言いリリエットたちに指示を出す。
「ハーネイト、奥に行こうにも、話に聞いた気運で汚染された場所が行く手を……」
「とにかく突破するしかない。死霊騎士と文香を追跡するんだ。私はここから観測し逐次情報を伝える」
「んで、あの大和という男は?」
「彼らには亀裂入り口で連絡係だ。響たちが分かりやすいようにな」
「わかったわ、私たちでまずできるところまでやるわよ。ナビゲートお願いね!」
「ああ、一八だがこれを使ってみるか。来い、シグゴースト!」
ハーネイトは今回もナビゲーターとして、全員を指揮することを決め全員を進軍させる。彼は早速紫色の円状の門を作り出し、そこから大型のドローンを4機召喚し空に飛ばす。
これは索敵及び攻撃機能が付いており、他の人を乗せての支援も容易な彼自身が開発した無人戦闘偵察機「シグゴースト」と言う名前がついている。
彼はシグゴースト4機を霊量子操作で高く飛ばし、陣形を組ませ巡行させながら、異界化浸蝕現象の影響範囲と文香たちのいる場所を瞬きせずCデパイサーを通じて確認していた。
「無人飛行機、あれなら、ああ。お前ら、向こうから敵だ!」
「小型のばかりだが、数がいる」
「ならばまとめてやるのみだ、相棒!俺は左側から攻めに行く!醸せ、菌幻自在!!!」
「魔法衝撃弾ならどうかしら?」
ユミロとシャックス、伯爵とリリーはタッグコネクト、つまりペアを組み連携して気運汚染を除去し安全に通れる道を作り出す。
伯爵は眷属の力を使い気運を薙ぎ払う形で削り、リリーは手にした杖の先から当たると爆発する魔法弾を無数に飛ばし爆撃していく。
「私とユミロは右から回り込んでいきます」
「そちらは任せた2人とも!」
「了解ですよ、フルンディンガー起動!神弓技・イチイヴァル!!!」
シャックスは空に向かって矢を数十本放ち、雨の様に降り注がせ隠れていた魂食獣を遮蔽から追い出す。それに合わせリリエットが強烈な一撃を繰り出した。
「私とミカエルは正面から行くわ、桃色之刃衝(ロザード・エスパーディア)!」
「ぬぉおおお!超衝撃ぃ!」
彼女の得意戦技が追い打ちをかけ、さらにユミロも前方を破壊する一撃を繰り出し、強引に前の風景が見やすいように壁を破壊したのであった。
「前が見えてきたが、あれは結界……!あれを壊さないと向こうにいけないか」
ハーネイトらは結界を確認したその時、背後から響たちの声が聞こえてきた。
「先生!俺たち全員来ました!」
「ああ、よく来てくれた。この先に少なくとも4つの結界石があることが分かった。あの偵察機の観測結果だが、砂に埋もれているようだ。とりあえず先に進んでくれ。場所のデータを今からCデパイサーに転送する」
後ろから追ってきた響たちに現状を報告し、彼らにもデータリンクを接続し残りの障害となる結界石の座標を示す。
「行くわよ!」
「文香、待ってろよ!」
彩音と九龍はそう叫び、一目散に突撃し一番近い石を連携し破壊する。
「っせえ!一撃でぶっ壊す!」
「勝也、後ろだ!」
「わかってらあ!」
イノシシ型の魂食獣に襲われながらも五丈厳はスサノオの力を借りて周囲をぶん殴り続け石を破壊していく。更にその余波で汚染された気運をまとめて消し、道を作っていく。
「間城、翼、あちらに石がある。今だ!」
「燃え盛れ俺の脚!行くぜロナウ!」
「おうよ、バニシングフレア!」
「うなれミチザネ!天雷!」
五丈厳たちが突撃していく間に、時枝は後方に回り指示を出し、翼に突撃させる。そして地面ごと破壊するほどの威力を持つ焔玉で結界石の1つを消し飛ばし、周囲に存在する獣に対し時枝はミチザネの落雷攻撃で吹き飛ばした。
「間城、上からくるぞ!」
「ええ、行くわよアイアス!」
「行くぜ姉さん!」
間城は時枝の言葉に応じアイアスの力を引き出す。そして強烈な防御壁を展開し一撃を防ぎ、カウンターで近くにいた獣に対し手にした剣で斬撃する。
「っ!みんな退くんだ!」
「口からエネルギー弾っ!」
「今度は私が守ります、碧風壁!」
亜里沙は遠く離れていたトラ型の魂食獣が放つ一撃を碧銀孔雀が発動した風の結界で防いで見せ、かまいたちを手にした巨大扇子から幾つも放ち獣の体を引き裂いた。
「助かったよ亜里沙さん。こちらは全てあれを破壊できたよ」
「全結界石破壊できたが結界までの道をお掃除だ!」
「マスター行くぞ!」
「任せて先生!」
響たちの途中参戦のおかげで思っていた以上に早く道を遮る結界が消滅し、残りの妨害である気運を全員であっという間に除染して先のエリアに進む一行はある光景を目の当たりにしていた。
「まだ間に合うけど、あれは……!」
「げっ、文香なにしてんだおい!」
「あれは、具現霊!?」
ハーネイトたちが見た光景、それはフラフラになりながらも文香が具現霊を呼び出し、死霊騎士と渡り合っているというものであった。
彼女は死を意識した時、ようやく幻霊を乗り越え安定化し、なんと4人の具現霊を目の前に召喚したのであった。それを見た霊量士(クォルタード)たちは驚きを隠せなかった。4人も具現霊を操る存在など、見たことがなかったからである。
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