第58話 教官たちの自己紹介
新組織の設立にあたってハーネイトと伯爵、リリーは響たち現霊士、また候補生に対してこれから行ってもらう、目指してもらうことについて話をする。
「まず皆さんにはAミッションと呼ばれる除染浄化解放作戦術式に参加できるように、霊量士及び現霊士としての能力を高めてもらいます」
「んで、何人かでチームを組んで、各地で戦いながら事態の解決にあたるわけだ」
「質問だが、そのハーネイト先生は残りの神々ってのをある場所に案内するのが仕事の1つと言っていたが」
「大体その通りだがな。それがどうした時枝」
「その、ヴィダールの神柱って後何体いるのですか?」
時枝は疑問に思っていたことを質問する。どうもヴィダールもコズモズも多神的な存在であり、彼の任務についても合わせどれだけ仕事が残っているのか確認した。
「24柱、と言いたいところなのだが……どうも過去の記録を見たところ、100柱近く存在するかもしれない」
「それはどういうこと、ですか。全体を把握できていないと」
「殆どのヴィダールという生命体は、私を生み出した存在から逃れるため散り散りになっている。そのため正確な数の把握などがほとんどできない状況なのだ」
現ヴィダールの最高存在、ソラの魔の手から逃れるため別世界まで逃亡した神柱を探しているハーネイトだが、表向きは女神代行としてそれらを連れてくることとしている。
しかし実のところ、彼はその神柱たちから力を貸してもらい、今度こそ生みの親であるソラを倒すと画策していたのであった。
「非常に面倒なことが起きているのだな。全く、迷惑な髪とやらもいるものだな」
「それと、やはりその逃れた神柱の1体が魔界で永い眠りについていたのは間違いない。気運汚染の原因も、眠りから覚ますための生贄を用意するためかもしれない。対応する特定の気運に染まった生物、だ」
気運で汚染された場所を通過する、対策を取っていない存在はほぼ100%気運に体を汚染されて徐々に生命力を奪われる。
その奪った生命力や、気運に染まった肉体を更に利用し、搾りかすまで利用し神柱に注げば再び目覚める。それを犯人たちはどこかで知り実践しているのだろうとハーネイトたちは考えていた。
「なんだか滅茶苦茶恐ろしいことしてませんかね敵さんは」
「そうだな……だが神柱を目覚めさせるために犯人たちは動いている。全てを知っているわけでないが、そこまでする事情は魔界復興同盟を調査すればはっきり分かる。そもそも、眠っているのを叩き起こすとか失礼だろうに……」
ヴィダールの神柱は1体だけでも世界に様々な影響を及ぼすほどに強力であるが、その力を利用しようとし目覚めさせる集団がいる。
それが恐らく死霊騎士となったザイハムの言葉にあった、魔界復興同盟。この調査が一つのカギを握るとハーネイトは自身の考えを述べる。
「改めて、事情はよく分かったハーネイト君。君たちの存在が桁違いに恐ろしいということもだ……極秘でやるしかないという理由も分かる。だが、君たちの力なしに怪事件を解決できる力がこちらにはない」
「ええ、最初は……ここまでなるとは思いませんでした。それでも、皆さんは私たちを見て話を聞き、共に行動してくれている。ここまで素性を明かしたのは、信頼を置いているからだという事だけは分かってほしい」
宗次郎はどうにか話についてきたうえで、改めて娘の恩人が桁違いな存在で失礼な扱いをしていなかったか相当焦っていた。けれどハーネイトは優しく微笑み、逆に良く自分たちのような存在の話を信じ手助けしてくれたことに感謝した。
しかし、彼はまだ響たちに話すべき、大切な話をしようという気にはまだなれずそれについては胸の内に秘めていたのであった。
「話を元に戻しますが。Aミッションの他にも事件捜査や聞き込み、異界空間内の探索などを行う場合もあります。どちらにしろ能力をある程度まで高めてもらう必要があるので、貴方たちの成長をサポートする講師陣をまず7名呼んできました。皆プロジェクターの前に」
彼がそう指示を出すと、壁際にいた人たちがハーネイトの傍に来る。まず最初にリリエットから自己紹介を行った。
「私たちはあなた方の先生として、これから任務にあたるのでよろしくね。私はリリエット。モモノ・リリエット・ファルフィーレンよ」
「俺はヴァラフィア・ハイスヴァルヘン・ブラッドバーンだ。ブラッドで呼んでくれ。まあ先日一緒に戦った仲ならわかるだろうが、俺は戦うのが大好きなんでな、よろしく!」
「俺ぁボガーノード・シュヴェルアイディック・イローデッドだ。名前長すぎるからボガーでいいぜ。Aミッションではサポーター寄りのアタッカーだ。長武器を使う奴は俺と戦闘訓練するのをお勧めするぜ」
この3人は全員歴戦の霊量士であり、全員具現霊を持つ勇敢で強力な戦士たちである。だがその他に教師向けの技能を持ち、多くの霊量士を導いてきたことで有名であった。
ただ、ハーネイトによると本来ブラッドはまだ呼ぼうとは思っていなかったが、本来来るはずのシノブレードという人物が別の仕事を依頼されていたため急遽代打で来たという。
「シャックス・ファイオイネン・ヴァリエットと申します。シューターとして主に活動しておりますが、広範囲の索敵も得意です。ボガーとは幼馴染であり、長らく共に行動してきました。後、一応ヴィダールの神柱の1人です」
「ヴァン・プラフォード・レーゲン、だ。自然を守るレンジャーであり精霊と心を交わして災害を抑えることができる。俺は先生としては少しあれなので基本ハーネイトの下で動くが、戦闘訓練には積極的に付き合う」
「俺の名はリシェル。リシェル・トラヴァコス・アーテンアイフェルトだぜ。ハーネイト師匠とはだいぶ付き合いの長い古参兵だ。Aミッションではもっぱらシューター:(スナイプ型)だが、トラッパーとしても戦える。ってまだクラス説明してないよな……」
「私はミカエル。ドロシー・ステア・ミカエルよ。ミカ御姉様と呼んでくれていいわよフフ。なんでも霊量子で大魔法を再現したいって?難しいこと言ってくれるわね、ということで急遽私に白羽の矢が立ったわけ。そこのリリーちゃんと同じく、魔法特化だけど使い魔も得意よ」
シャックスとヴァンもまた、歴戦の霊量士であり、彼らは共に遠距離からの支援攻撃を得意とする。これはある事態を想定したうえでの判断であった。
最後にリシェルとミカエルがそれぞれ自己紹介し何者かを教える。彼らも霊量子を扱えるがかなり特殊な存在でありリシェルは魔銃士、ミカエルは魔女である。
魔銃士とは、魔粒子を魔法として利用せず単純にエネルギーとして収束し撃つ技術に特化した集団であり、魔女とは「魔女の森」出身者である、魔法こと魔粒子運用法術を戦闘よりは日常生活などで利用することを主軸を置く集団を表す言葉である。
「すげえ……全員只ならぬ闘気を溢れ出させている」
「確かに色々と頼りがいのありそうな先生方だ。是非ともよろしくお願いします」
「この人たちが、私たちの先生かあ、何か少し不安……でも、先生が信頼を置く人たちならきっと大丈夫、だよね」
全員が彼らのポテンシャルの高さを感じ委縮する人たちもいた。それを見たハーネイトは彼らを安心させることを言い落ち着かせた。そうすると響がAミッションについて質問をした。
「そういえば先生、そのAミッションのクラスって……」
「ああ、役割のことだな。全員何かしら得意と不得意なところがあるのでね。それについては私の授業で教えることにしよう。では早速ですが、地下一階にある練習部屋まで皆さんついてきてください」
ハーネイトは全員についてくるように指示し、会議室を出てからある部屋に向かうのであった。
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