第52話 行方不明事件の再発生
「これで教官と場所は揃った……あとは地下を拡張改造して、社員たちの滞在スペースを更に確保せねばな」
やっと仲間をここまで連れてくることができた。ここからどうするかハーネイトは考えていた矢先誰かが廊下の向こうから走ってきた。それは響と彩音であった。
「先生、失礼します……ってうわわわああ!誰ですか?」
「響と彩音、伯爵からまだここには来るな言われていなかったかい?」
「緊急の要件です!また神隠し、といいますか行方不明者が出ています。大学生2人と教員1名が現在行方不明とのことです」
酷く慌てている2人に話を聞いたところ、翼が部活中に突然亀裂が発生し、その付近に偶然居合わせた3名が異界化現象により姿を消し行方不明になっていると連絡があったという。
翼たちサッカー部が練習で使うサッカーコートが九条学園の施設内であり、大学施設付近にあったためすぐに気づいたという。
「ほう、翼が直接それを見ているのか」
「状況からみて、例の異界に飛ばされる罠が発動したのではないかと」
「分かった、至急案内してくれ」
「師匠、俺たちはどうする?俺はいつでもいけるが」
「すぐに動ける人たちはついてきてほしい」
ハーネイトは響と彩音の案内で九条大学に向かうことにした。リシェルの質問に対し今動ける人たちについてきてもらうように指示を出しつつ他のメンバーに急いで連絡する。
すると伯爵とリリーがパトロールを終え合流できると連絡してきた。
「まさかこんな時に緊急招集をかける羽目になるとは……んで九龍と五丈厳はともかく、翼には他の人たちを避難させるための指示役になってもらわないと。亀裂の影響が残っているなら、近づけさせるわけにはいかないぞ」
「ハーネイト先生、話は聞きました。こちらも援護します」
「私たちは校内にいるから、すぐに駆け付けるわ」
「間城と時枝か、では可能な限り早く来てくれ」
「私はどうしましょうかハーネイト様」
「亜里沙さんは、もし余力があるなら、ボガーたちを休憩室などに案内してからついてきてくれ」
「分かりましたわ、急いで呼んできますね」
3人は戸惑っていたが、少しでも早く戦いに慣れたいという気持ちは同じであった。その話を聞いて全員は2つ返事で今すぐ向かうと返事を返した。
ハーネイトたちはホテルを急いで出てから九条学園に向かう。道中で伯爵とリリー、更に遊びに行こうとしていた九龍と五丈厳に会う。連絡を聞かされていなかった2人だが慌てているハーネイトを見て事情を聴き、同行することになった。
そうして10分ほどで私立春花九条学園に到着し高等部の校舎付近で時枝と間城が合流する。
「ようやく来ましたか、ここを通り抜ければ現場近くまでほとんど人に見られずいけます」
「かたじけない、さあ行くぞ!」
時枝の案内で、可能な限り学内にいる人たちと顔を合わせないように地下道へ案内しようとしたその時、背後から声がする。全員振り向くと亜里沙がリシェルとブラッドバーンを連れて駆け付けた。
「三度の飯より戦闘大好き、そんな俺様が行かないわけねえよなあ」
「後方から援護します師匠。支援砲撃ならお任せを」
「このメンバーで行きましょう。あまり時間をかけては3名の被害者が危ないですわ」
「ああ、その通りだな」
慌ててきたようであるが2人は準備を済ませていた。ブラッドが近接戦闘のアタッカー、リシェルが遠方への攻撃を得意とするシューターであるため、ハーネイトはナイスだと思いながら事件発生現場まで全員を連れて移動していた。
すると学園内にて翼が、サッカー部のユニフォームを着たままでこちらに来いと指示を出した。
「ここがいきなりできた亀裂か、ふうむ」
「いきなり出てきてよ、近くにいた3人が突然消えたんだ。しかもその内の1人は、田村先生だ」
「本当に?翼のクラスの担任じゃない」
「ああ、確かに見たんだ。兄貴、俺はどうすればいいか?」
「九龍や五丈厳と共にここで待機し、他に周辺で異変がないか監視を頼む。何かあれば連絡だけよこしてほしい。何が出てきても深追いは厳禁だぞ」
行方不明者の1人が判明し、翼は指示を求める。ハーネイトは監視する仕事を任せ他に異変が近くで生じていないか、それと万が一の時のために外で待機してもらうことにした。
「来てもらってすぐで本当に済まない。手当を追加でつけておく」
「いいっすけどね。師匠のためならな!」
「俺は戦えることに喜びを感じる。それを与えてくれるだけで十分だ大将。おいお前ら、気合入れてけや!バーーーーーニング!!!」
そんな中ハーネイトに召集された2人は終始ノリノリであった。彼らを見た響はこの2人が何者なのか気になって声をかけた。
「あの、先生……ホテルにいた時から気になっていたのですがこの2人はもしかして、先生の仲間さんですか?」
「これから君たちの先生として、戦友として活動を共にしてもらう私の仲間だ」
「リシェルだ。主に遠距離攻撃を行うシューターだ、よろしくな!」
「ブラッドバーンだ。ブラッドでいい。アタッカーメインだ」
2人はそれぞれ自己紹介し、響たちはこのリシェルという男があの狙撃手なのだと理解し一礼した。ハーネイトは時々自身の仲間のことについて如何にすごいかを熱く語る時がある。
その中でもリシェルという、自分たちより少し年上の狙撃手についての話は何度も聞かされていたため、響や彩音は特にリシェルの顔を見ながら感心していたのであった。
また、ブラッドという人物に関してはハーネイトの持つ社員表から情報を得ていたが、ここまで戦闘に飢えた存在であることは知らず、戸惑いつつも響たちは、その高い実力に期待していたのであった。
「しかし、今更なんですが異世界から来た人って、感染症とかその辺は大丈夫なんでしょうか」
「伯爵がいる限り大丈夫だ響」
「そうですね、伯爵は微生物の王、ですからね。微生物を何でも支配する、王様なら確かに」
「ケヘへへ、そうだよ。俺がいる限りな、悪い何とかは寄せ付けねえよ!」
響の質問に対しそう答えたハーネイトと伯爵は、その後もう一度ざっとリリーと共に気配を張り巡らせることで現場周辺を確認し、亀裂の位置が幸い人目に付きづらい場所であることを把握してから全員に突撃準備を指示する。
これは時間との勝負だ、そう思いハーネイトは全員に声をかける。
「では、全員準備できたな?」
「早く助けに行くぞ」
「田村先生、大丈夫よね……」
「兄貴たち、先生らを頼んだぜ!!!」
そうして新たにできた亀裂の付近に、作戦に参加するメンバーが近づくと、罠が発動しその場からハーネイトたちが消えたのであった。
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