第5話

私の初恋は、中一の時。

小さい頃からよく遊んでくれたお姉ちゃんだった。

一人っ子だったお姉ちゃんは、妹が欲しかったらしくて私をいっぱい甘やかしてくれてた。

私もそれに甘えていた。


ある日、お姉ちゃんから告白された。

お姉ちゃんのことは確かに好きだった。

でも、この気持ちは恋なのかそうじゃないのか。


当時は、恋ってよく分からなかった。友達とする恋ばなはいつも聞き役だった。だからこれで私にも恋がわかると思った。


付き合って半年くらい経った。もうその頃には、あやふやだった好きが恋になっていた。


お姉ちゃんは高校を卒業して、就職した。職場の近くに引っ越しちゃったし、仕事がとても忙しいらしく、なかなか逢えなかった。寂しかったけど、お姉ちゃんは頑張ってるんだからワガママ言わないように我慢していた。

でも、とうとう我慢できなくなった私は、お姉ちゃんに内緒で逢いに行った。

お姉ちゃんの家に着いたけど、留守だった為、玄関前で待っていた。お姉ちゃんが帰ってきたら何て言おうか考えながら。久しぶりに会えることを楽しみにしながら。


お姉ちゃんが帰ってきた。知らない男の人と腕を組みながら。


信じられなかった。

お姉ちゃんも私に気づいたのか驚いた顔をしていた。

私は、走って逃げた。ここから一刻でも早く離れたかったから。


家に帰ってきた私はスマホを確認した。

いっぱいの不在着信通知とメールが一件来ていた。

そのメールにはごめんねとだけ書かれていた。


私がお姉ちゃんと会うことはもうなくなった。


私は学んだ。

好きって気持ちだけじゃ、ずっと一緒に居られない。


何か別のきもちも必要だって。


-----------


「突然で申し訳ないですけど、別れてください」


優奈の家から帰る途中、湊先輩の家に寄った。善は急げ……というか、待ちに待った状況で私はうかれてた。


「本当に突然だね。理由を聞いてもいい?」

「優奈に酷いことをしているからです……っていうのは建前で、もう湊先輩と恋人する意味がないからです」


私は深々と頭を下げる。

協力してくれたことには、とてもとても感謝してるから。


「湊先輩の協力のお陰で、優奈とお付き合いすることになりました。ありがとうございます」

「協力? した覚えないんだけど」

「そんな謙遜しなくていいですよ。湊先輩が、私のに動いてくれたお陰なんですから」


「湊先輩は、どうすれば好きな人とずっと一緒にいれると思います?」


湊先輩は質問の意図が理解できなかったようで怪訝な顔をした。

先輩の答えを求めてた訳ではないので、気にせず話す。


「依存させればいいんですよ。優奈はとっても良い子。なのでいっぱい、いーっぱい私に罪悪感を――負い目を感じさせるのが、依存への近道だと考えました」


私の言いたいことが理解できたようで、湊先輩は唖然としていた。


「ちょっとした賭けでしたけどね。湊先輩が優奈に手を出すか。でも、高確率で手を出すと思ってましたよ。湊先輩、優奈のこと好きですもんね」


湊先輩の顔が真っ赤になる。

へぇーそんな顔もできたんだ。


「でも、優奈は私のことが好き。振り向かせることはできない。まあ、できないからこそ惹かれたんでしょうけど。なら、こんな絶好のチャンスをみすみす逃すはずないって」

「私を利用したの?」

「そんなの湊先輩も一緒じゃないですか。私を利用したから、優奈と関係を結べた。どうでした? 優奈とのキスは。エッチは」


ちょっとイライラしてきた。

優奈の初めては、私ではなく湊先輩なんだ。

私が仕向けたことだけど、それはそれ、これはこれだ。


「良い夢は見れました? どんなに良い夢でも長くは続きません。夢は必ず覚めるものです」


「協力ありがとうございました」


今度は頭を下げなかった。

湊先輩は振り絞るようにこう言った。


「君は悪魔だね」



湊先輩の家を出た。

さっき通った道を戻る。

向かう先は愛しい人が居る家。

今日は土曜日だし、泊めてもらおう。夜更かししても問題ない。

あ、でも日曜日にデートもしたい。


貴女としたいことがいっぱいだよ。

大丈夫。時間はたっぷりある。

何せこれからはずっと一緒に居れるんだから。



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秘密~私の秘密の三角関係~ 環すのこ @tamakisunoko

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