第3話

 湊先輩の家から、帰ってきた。

 私はすぐにお風呂場へ直行してシャワーを浴びる。湊先輩としたことを流したくて。


 長めのシャワーを終え、自分の部屋へ向かう途中、お母さんに声をかけられた。


「優ちゃん。おかえり。ご飯は? いる?」


 朝帰りした娘に対する第一声がそれって親としてどうなんだろうって思うけど、私としてはありがたかった。


「いらない。寝るから、起こさないでね」


 これ以上話しかけられないように、急いで部屋へ入った。ベッドに横になると私はすぐに眠ってしまった。


 目が覚めた私は、スマホで時間の確認をする。もう13時か……結構寝たのにまだ体が怠かった。このまま二度寝をしようか悩んだけど、小腹も空いたからご飯を食べたらもう一度寝ようと決めた私は、居間へ向かった。


 居間に入ると、そこには何故か朱里が居た。しかもご飯を食べていた。


「おばさんの料理はおいしいから、何度でも食べたくなっちゃうよ」

「ありがとう。なら、朱里ちゃんも娘になる?」

「いいの? ママー」

「あらあら。二人目の娘は、随分甘えん坊さんね」


 朱里はお母さんに抱きついた。


「朱里、何で居るの?」

「……ちょっとね」


 快活な朱里にしては珍しく煮え切らない返事。チラッとお母さんの方を見た。

 お母さんがいる所で、あまり触れられたくなかったのか、わざとらしく話題を変えようとする。

「それより、おはよう優奈。休みだからってこんな時間に起きたら駄目だよ。夜更かし?」

「……ちょっとね」


 私も敢えて朱里と同じ返しをする。

 朱里が何も言うつもりないんだったら、私も何も言わないよっていうアピールだ。いや、私の夜更かしの原因は正直に言えないけど。私のアピールに気付いたのか朱里はムッとする。


「優奈の部屋に行ってもいい?」

「いいよ」


 ご飯食べたかったんだけどな……。

 私は、朱里と一緒に部屋へ戻ってきた。私たちは並んでベッドに座る。

 朱里は視線をキョロキョロさせ落ち着きがなくなっていた。

 どうしたんだろう。こんな朱里は初めて見た。


 ……いや、初めてじゃない。前にも一度あった。


「あのね。こんなこと優奈にしか相談できないの」


 言葉も一緒だ。そして、震える小さな手で私の手をギュッと握るのも。

 そう、あの時は


 湊先輩が好きだって


 相談されたんだ。


「湊先輩、浮気してるかもしれないんだ」


 相談内容は全然違うけど、前の相談の時と思ったことは一緒だった。


 聞かなきゃよかった。

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