第2話

「湊先輩好きです。付き合ってください」


 昼休み。校舎裏。人気のないこの場所に、私は呼び出されて告白された。

 朱里ちゃんに告白されて私が思ったこと。

 使えると思ったんだ。


 私はモテる。それも同性に。

 この学校に入学して2年経つけど、告白された数は20を超えてからは数えるのをやめた。学年首席で生徒会長。顔もスタイルもよくて読者モデルをしたこともある。

 生徒からはもちろん、教師からの信頼も厚い。非の打ち所がない完璧な人間だと自負している。


「ごめん。返事は少し待ってもらっていいかな?」

「わかりました。忙しいのに呼び出してごめんなさい」


 そう言って朱里ちゃんは去っていった。

 白々しい。分かっちゃうんだ。

 朱里ちゃんは、私と同じタイプだ。自分が一番って思ってて、他は引き立て役としか思ってない。私と付き合いたいのも、箔をつけるため。


 放課後、優奈のことを生徒会室へ呼び出す。

 優奈は生徒会の後輩だ。朱里ちゃんに誘われたから生徒会に入ったらしい。

 私に近づきたくて生徒会に入ってくる子が多い中、優奈はとても変わっている。

 優奈は朱里ちゃんが好きらしく、朱里ちゃんに好意を抱かれている私に対して嫌悪感を抱いているようだった。


 生徒会室で10分ほど待っていると、少し不機嫌そうな顔の優奈が来た。

「何か用ですか」

「そんなところに居ないで座りなよ」


 入口の前で立ち止まったままの優奈に言うが、動こうとしない。

 しょうがないから、私から優奈に近づく。


「今日、昼休みに告白されたんだけど、誰からだと思う?」

「……知りませんよそんなの」


 優奈は泣きそうな顔で、吐き捨てるように言う。

 どうやら、知っているようだった。そう言う態度を取られるともっといじめたくなる。


「優奈が大好きな朱里ちゃんだよ。でも、まだ返事はしてない。明日に返事しようと思うけど、その返事は優奈の態度次第で変わる」


 私は優奈に壁ドンする。


「私のモノになりなさい、優奈」

「ふざけないで」


 優奈は私から離れようと暴れる。


「朱里ちゃん可哀想。私にフラれたら悲しむんじゃない?」


 すると今までの暴れようが嘘のように、ピタッと止まる。


「何で私なの?」

「優奈は、私のこと嫌いでしょ? だから。嫌ってる子を言いなりにするの、とてもゾクゾクする」

「変態」

「それが、優奈の答え?」

「誓って。絶対に、朱里を傷つけない。幸せにするって」

「いいよ。優奈が私のモノであり続ける限り……ね」

「分かった。湊先輩のモノになるよ」

「そんな言い方じゃダメ。そうだな……私は、湊先輩のモノになりますって言って、キスしたらいいよ。それ以外は、どうなるかわかるよね?」


「……私は、湊先輩のモノに……なり……ます」


 優奈はそう言って、涙を流しながら私にキスをした。

 今まで色々な子と、キスやそれ以上のことをやってきたけど、このキスはそれ以上に気持ちよかった。


 翌日、私は朱里ちゃんを生徒会室に呼び出した。

「朱里ちゃん。返事待たせちゃってごめん。一晩じっくり考えてみたよ。これからは恋人としてよろしくね」

「ダメかなって思ってたので、嬉しいです。あ、ありがとうございます! 湊先輩。これからよろしくお願いします」


 私を利用するつもりなら、それでもいいよ。私も君を利用するから。

 お互い様だよね。

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