ゴールデンウィーク最終日
ピピピと部屋中に、目覚まし時計の音が鳴り響く。
俺は、それにつられるように目を覚まし、目覚まし時計を止める。
ふわぁ〜と大きなあくびをしながら、体を伸ばす。
今日は、ゴールデンウィークの最終日だ。
おっと、なんでいきなり最終日まで来たんだ!って言いたい人もいるみたいなので……いるのか?ま、まあそんな事を気にしてたら何も始まらない。
なんで急にゴールデンウィーク最終日まで来てしまったかというと、俺は、昨日まで思いっきり風邪を引いて寝込んでいた。
ショッピングモールに行った日の大雨と、あの中二病女を探すために走り回った事が原因だと俺は勝手に思っている。
まあ、病院に行ってないから詳しい原因というのは分かんないだけど。
熱を引いている間は誰とも連絡はとらず、正直ほとんどスマホを触っていない。
音山とかに知られると、色々と面倒なことになりそうだし。
風邪ひいてたり体がきつい時は、一人が一番楽だ。
というか、正直スマホも見れないほどのキツさであり、本気で死ぬかと思った。
まあ、そんな訳で、ゴールデンウィーク最終日。
ようやく熱も引き、体調万全で臨むゴールデンウィーク最終日の俺の予定はというと。
ご察しの通り何もない。
まあ、それもそのはず。ここ最近全くスマホを見ていないし、誰とも連絡をとってないわけであって、でももしかしたら今スマホを見ると、何かのお誘いのメッセージが来ているかもしれない。一応確認してみるか。
俺は恐らくそこら辺にあるであろうスマホを、手探りで探す。
なんとかスマホを見つけ、画面を見るとそこには多数の通知が表示されている。
ってかほとんどが真彩からじゃねーか。
そして、真彩からのメッセージを見ると、そこには音山と真彩と一ノ瀬が三人写った写真が無数に送られてきていた。
一つのパフェに三人が顔を寄せている写真や、タピオカドリンクを持った三人の写真など、JKオーラの強い写真がたくさん送られてきている。
そして、最後の方に「風邪ひいて寝込んでる人はこの美女三人組を見て癒されてなさい!」と一言。
いや、真彩に風邪ひいたって俺言ってないんだけど。
なに、なんか怖いんだけど。なんで知ってるの?え、もしかして俺、監視されてる?
そんなことも思ってしまうが、これは真彩なりの気遣いなんだろう。
多分あいつは、俺の性格を知ってるから、俺が風邪をひいてることに気付いても、無理にお見舞いになどこなかったのだろう。
いや、ただ単純にお見舞いに行く気がなかったとも取れるが。
気遣いでお見舞いに来なかったと思いたい。
そして、俺は自称美女三人組の写真をじっと眺める。
それにしてもめっちゃ写真あるな、どんだけスクロールすればいいんだ。
ただ、スクロールするたびに見える、この三人の笑顔の写真に俺は少し、微笑んでしまう。
それは、可愛い女の子がたくさん写ってる写真を見て、ニヤニヤしているわけではない。決して。断じて違う。
この写真を見ていると、なんだか心が安らぐ。なんだか、俺にも帰る場所があるみたいで。
ただ、いや、やっぱりと言うべきだろうか。どの写真を見ても、一ノ瀬静音の目は笑っていなかった。
* * * * * *
久々のしっかりと食べる朝ごはんを堪能し、俺はリビングのソファーに座り、のんびりと寛いでいた。
正直、寝たっきりの生活が続いてたので今は座っていたい。
「いくら治ったと言っても、無理はするんじゃないよ」
そう、姉貴の声がする。
姉貴の方を見ると、台所でさっき食べた朝ご飯の食器を洗っている。
「別に、今日はなんの予定もないし、無理したくてもできないよ」
「ふーん。ならいいけど」
姉貴は食器を洗い終わり、キッチンから出てきながら言う。
そして、リビングから出ようと扉まで向かい、ドアノブに手が掛かったところで一旦止まる。
「でも」
「でも?」
「あんたはどっちかって言うと、無理をしたくなくても無理をしちゃう人だと思うけどね」
そう言い、姉貴はリビングから出て行く。
直後だった。まるで、姉貴がいなくなるタイミングを見計らっていたかのように、ポケットの中のスマホの着信音がなる。
俺は、急な爆音に少し驚きながらも、電話に出る。スマホには一ノ瀬静音と表示されていた。
「もしもし」
「おお、出た出た。えっとー……、天谷翔だったよな?」
「そうだけど?」
名前ちゃんと覚えてなかったんかい。
まあ、それも仕方ないか、いくらメッセージのグループがあったところで俺と一ノ瀬にそこまでの絡みはない。
「良かったー。間違ってたらどうしようかと」
一ノ瀬は安心したと、ホッと一息つく。
「それで、用件は?」
「ん?ああ、用件か。じゃあ聞くが、今日は暇か?」
暇か?ってなんだよそれ、お前はバイト先の女子か!暇かどうかは相手の用件次第で決まるんですけど?
「暇じゃないかもしれない」
俺は、もしもの時の保険用として答えを曖昧にしておく。
まあ、一ノ瀬はバイト先の友達とかではないので明日のシフト変わってーとか言われる事はないけど、もしかしたら変な面倒ごとを押しつけられる可能性がなきにしもあらずだからな。
「おお!暇なのか!じゃあ、今日午後一時に駅前に来てくれないか?ちょっと、付き合って欲しいところがあんだよ!」
おいおい、ちょっと待て俺は暇かどうかを曖昧にしたつもりだったんだけど、もう俺が暇ってことが確定してしまいました。
「ちょ、ちょっと待て……」
「それじゃあ、私待ってるからな!遅れるなよ!」
俺の言葉を待つとせず、電話は切れる。
これはもう、行かなくてはならないのか。
正直、あんな元気のいい声で誘われたら、断るにも断りづらい。
まあ、今回は病明けのリハビリがてら、少し日差しにあたりに行くのもいいかもしれない。
それに一ノ瀬とも、もう少し仲良くなれるチャンスだし。
そして、俺のゴールデンウィーク最終日は、一ノ瀬と過ごすことが決まった。
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