幼馴染との夜。その2

 シャワーを浴び、真彩から借りた服に着替えた俺は、真彩に連れられるようにリビングにやってきた。

 窓際の隅に置かれたテレビ、そしてその真ん前に二人がけソファーがあり、その反対側にはカウンターキッチンにそれにくっつけるように設置されているテーブル。冷蔵庫や電子レンジが置いてあり、洗面台には洗い物など残っておらず、隣の食器棚に綺麗に並べられている。

 真彩はソファーに仰向けに寝転がり、スマホをいじっていた。

「本当に服まで借りて良かったのか?」


「だから良いって言ってるでしょ、びしょ濡れの格好でいられても困るって」


「そう言うことなら。ありがとう」

 そう言って、俺はもう一度着ている服を見る。

 無地の白いシャツに紺色の半ズボン……ってこれ真彩が来ているやつと一緒じゃねーか。

 こいつ、部屋着これしか持ってないのか?まあ、別にどうでも良いか。

 それで、俺はどう過ごせば良いのやら……なんか気まずい。

「な、なあ、俺は何をすればいいんだ」


「ん?適当にくつろいで良いよ」

 それができたら苦労しないっつーの!例え、幼馴染と言ってもこいつの家に入ったの2、3回目くらいで、しかもそれはもう十年くらい前の話だから実質初めてみたいなところあるのに、適当にくつろげるわけがないだろ。

「両親は北海道だっけ?」

 俺は話題を作ろうと、真彩に話しかける。


「そうよ、よく知ってるわね。あんたに言ったっけ?」


「知ってるってことは言ったんじゃないか?俺もよくは覚えてない」


「ふーん。私も中学は北海道のとこに通ってたんだけどねー」


「そのまま、北海道に居てくれても良かったんですよ?」


「言ってくれるわねー。私だってあんたがいるって知ってたら帰ってこなかったわ」


「そうですか。そんなことより、お前って妹いなかったっけ?」


「いるよ。ってかなんで知ってるの?キモいんだけど。もしかしてストーカー?」


「んなわけないだろ。ってか俺が知っててもおかしくないだろ」


「まあ、それもそうね。ってか会ったことあるでしょ」


「そうだったっけか。よく覚えてないけど。んで、今何してんの?妹さんは北海道?」


「いや、妹は中学で寮生活。ぶっちゃけ私より何倍も頭いい」


「中学で寮生活か……すごいな」

 しかも真彩より頭が良いって、真彩も結構頭良かったはずだけど。

 そして、またもや沈黙。リビング中に気まずい空気が流れる。

 真彩は相変わらず、ソファーで寝転がってスマホをいじっている。

 どうやら、気まずさを感じてるのは俺だけらしい。

 もう良いや、俺もスマホで暇を潰そう。

 そう思い、俺はポケットからスマホを出す、さっきまでは雨でスマホも濡れていたけど、なんせ俺の携帯は防水機能がついているから大丈夫なのだ!もう一度言おう、防水機能が付いているから大丈夫なのだ!……って自慢できる時代でもないか。

 もう、ほとんどの携帯に防水機能が付いてるし……。

 スマホを見ると、そこには18時30分と表示されている。

 もう、こんな時間なのか。いやはや、時の流れは早いですな。

 ん?もう一つ何か通知が来ている。

 見てみると音山からメッセージが来ていた。

「天谷くん今日は色々とごめんね!雨強かったけど風邪ひいてない?ひいてたら看病に行くから教えてね!」

 謝るべきはこっちだろうに。本当音山は、根っからのお人好しなんだろうなあ。

 そんなことを思わせるようなメッセージだった。

 それに俺は、風邪は引いてないから大丈夫なことと、一つ謝罪の文を音山に送る。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る