再会。
綺麗な星空に見惚れていた俺はベランダに突っ立ってボケーっと空を眺めていた。
上を向いている顔を正面まで持っていくと、そこには隣の家のベランダが見える。
っていうかめっちゃ近くにあるし、頑張れば多分移動できる。
ただ、隣の家にはまだ誰も住んでいない。
姉貴によれば近頃誰か引っ越してくるとかなんとか言ってたらしい。
まあ、らしいってだけで絶対に引っ越してくるってわけじゃないけど。
「翔ー」
下から姉貴の声が聞こえる。
普通なら無視でもしたいところだが、後々なんか怖そうなので俺は素直に下に降りることにした。
「なに?」
俺はダラダラと階段を一段ずつ降りながら姉貴に用件を聞く。
「ごめんけど、ちょっと明日の朝ごはん作れそうにないからコンビニで買っといて」
姉貴は両手を合わせ、申し訳なさそうにしながら言う。
「いや、別に俺朝ごはんなくてもいいけど」
「それはダメ。朝ごはんは食べる。これが天谷家の掟だから」
「なんだよ掟って、初めて聞いたんだけど」
「そりゃまあ初めて言ったからね」
「っていうか別に今買いに行かなくてもいいだろ、明日学校行くときに買うよ」
「それもダメ。朝ごはんは起きてすぐ食べるって言うのが天谷家の掟だから」
「掟何個あるんだよ」
「場合によっては無限にある。っていうか作る」
「作るなよ」
「はいはい、分かりましたよ。買ってきますよ」
「それでよし」
そう言って姉貴は俺の方をポンと叩く、そしてすぐにお休みと言ってリビングに戻っていった。
お休みって言ってリビングに行くのもどうかと思うが。
というかまだ9時だぞ!?大学生ってそんなに早く寝ないとやっていけないの!?
今時の小学一年生だって9時には寝ないよ。
大学生になりたくなくなったな。
卒業したら就職するか。
* * * * * *
家から歩いて3分ほど、俺は家から一番近いコンビニへと着いた。
急な外出だったので、服装はジャージのズボンに寒いので真っ黒のパーカーを着て行った。
コンビニ方に近づくにつれ段々と色々なお店が見えてきて、店の灯りが重なって季節外れのイルミネーションのように見えてくる。
ほんと、これも一種のアートだよなー。そんなことを思いながら俺はコンビニの入り口の前に立つ。
コンビニにの入り口から見える中には数人ぐらい人がいて、立ち読みしている人や酒を買っている人やお菓子を選んでいる人など様々。
すると、俺とすれ違うようにコンビニを出て行ったと人と目があった。
「あ」
俺は思わず声が出てしまう。
この反応を見ると、まるで友達とたまたまあったように見えなくもないが、俺が目があったのは友達でもなければ知り合いでもなく、今日たまたま一言くらい会話した程度の人物だった。
ただ、俺は思わず声が出るほど反応してしまった。
「え」
俺の反応に驚いたのか一ノ瀬静音は少し間の抜けた声で言う。
気がつくと、俺と一ノ瀬は数秒ほど見つめあっていた。
その瞬間はまるで時間が止まったかのように長く、不思議な感覚に覆われた。
ただ、その感覚は決して悪いものではなかった。
「あんたは……放課後の時の」
一ノ瀬は俺のことを思い出したらしく、真顔で俺に言う。
「お前は一ノ瀬静音だっけ?」
「そうだけど」
「そうか、俺は天谷翔」
気がついたら俺は自己紹介をしていた。
いや、なんか名前を教えろよみたいな雰囲気だったからつい。
「知ってる」
いや、知ってるんかい。なんか恥ずかしいんだけど。
っていうかなんで知ってるんだよ。名乗った覚えないけど。
「それじゃあ、私帰るから」
そう言い一ノ瀬はくるっと振り返りる。
「え、ああうん。じゃあな」
俺の返事に一ノ瀬は振り返ることなく、帰っていった。
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