星空
「ただいま」
俺は1日の疲れが一気に押し寄せてきた気の抜けた感じで言う。
「おかえりー」
これまた気の抜けた声でそう言ったのが俺の姉貴の
リビングへ行くと、姉貴はソファーにぐてーと横になってスマホをいじっている。
その様は、半袖短パンのとても無防備な格好も相まって、とてもだらしない。
ただ、普段の姉貴はとてもシャキッとして、かっこいい。というか少し怖い。
真彩が言動ヤンキーなら、姉貴は見た目がヤンキーだ。
それも、腰の方まで伸びている金髪やその男勝りな見た目を象徴しているつり目が大きな要因だろう。
ただ、姉貴がヤンキーなのは見た目だけで、性格はとても優しく町全体の人気者だ。
姉貴は、今大学一年生なので去年の間は俺と姉貴は同じ高校に通っていた。
その高校の中でも、姉貴は生徒会長をやっていたということもあり三年生の中の中心でありリーダー的ポジションに君臨していた。
それ程までに姉貴は重大なカリスマ性を持っているのかもしれない。
そして、ここで俺と姉貴の間にある大きな事実をここで開示しよう。
俺と姉貴は血が繋がっていない。
そう、血が繋がっていない。これがなにを意味するかというと、本当の姉弟ではないということである。
まあ、正直それがどうしたんだって話なんだが。
いくら、血が繋がってなかろうと本当の姉弟ではなかろうと姉貴は俺の姉貴である。
それに変わりはない。
* * * * * *
窓の外はすっかり暗くなり、綺麗な星が見えはじめる夜。
俺は夕食を終えて、自分の部屋のベッドに寝転んでいた。
ちなみに俺の家は二階建てであり、俺の部屋は2階にある。
姉貴の部屋はあるにはあるんだが、ほとんど使っておらず家にいる時の大半はリビングで過ごしている。
それにしても、いいねこの夜の静けさと窓から見える星空。それ即ち最高。
俺はその綺麗な星空に招かれるようにベランダへと出る。
まあ、ベランダと言ってもそこまで大きくはなく、外に出れると言っても一歩だけである。
それでも、たった一歩だけでも外に出てみる星空は部屋の中からみるよりも何倍も綺麗で美しかった。
「何回見てもすごいよなー」
ついつい心の声が漏れてしまう。
本当にいつ見ても綺麗なんだよなーこの星空。曇りの日は置いておいて。
ただ、こんな綺麗な星空を見ているとつい考えてしまう。
例えば、振られた女の子に対して言う慰めの言葉として男は星の数ほどいるよーと言っている人を見たことがある。
まあ、確かに男なんて世界中全体で見れば星の数ほどいると思う。
けれど、星には手が届かない。
手を伸ばしても届かないし呼びかけてみてもこっちには来てくれない。
星は綺麗なだけで、人間には絶対届かない場所にある。
こう考えると、この慰めの言葉も若干皮肉に聞こえてきてしまう。
ほんと、女は怖いよ。
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