番外編の構想
市場に行って関係者から直接話を聞く、というのは妙案である。早速カエルムは賛成の意を示したが、下男は嫌そうに口を開いた。
「本気で言ってますか。いつ行く気です? 他の人に任せては」
「いやね、なんでそんなに反対なの」
形の良い眉を少し釣り上げた王女は口を尖らせる。下男は王女が空いた椅子に置いていた網籠を指さした。
「あれ、市場の新製品でしょう。ていうことは今日も行ったんでしょう。止めずに
「私でしょう?」
「とばっちりが来るんです。俺に。この状況をあの人に知ってもらってからにしてください」
王女はカエルムの方を上目遣いで見た。紅葉色の瞳にはっきりと、代わりに大臣に頼んでくれ、と書いてある。この城で彼女が苦手なものの一つが大臣の小言なのだ。何かことが起こった時に事の経緯を耳に入れておくのとおかないのでは事情が違う。ついでにカエルムの了承があれば、いつものように小煩くは言われないはずだ。
手にした妙な本(内容はざっとしか見ていなので、そもそもこの本が良本か悪本かよく分からない)を卓に置き、それぞれ別の意味でこちらに嘆願の眼差しを向ける両者を眺めた。近しいものからの無言の主張は、時に絶大な力を発揮する。
「では、大臣のところに向かうか……」
ぱっと眼を輝かせた王女に対し、下男は口の端をさらに下げた。この御転婆にやめろと言って欲しかったのだろうが、カエルムの方も止める理由は無い。
身分が違えば姫ももっと自由に動けたろうに。ふと、姫に似ていると言われた城仕えの隣国の少女を思い出すカエルムだった。テハイザの三日月湾ではそろそろ漁火漁に出る船が増える頃のはずだ。
「あ、テハイザといえば来国者の入国回数がシレアを超えたそうです。観光客の評判も上回ってます」
「お兄様、シレアの観光業、もう少し頑張るべき?」
尋ねる王女だが、あまり危機感はない。シレアの方も伸びてはいるのだ。
「シレアの冬は厳しいからどうだろうな。来てもらうなら嬉しい事この上ないが……諸外国からの目が厳しかったテハイザには良いことじゃないか」
***
こんばんは。一週間が過ぎますね。本編終了から四日目。数十話を一気読みしてくださっている方が多く、嬉しいです。ありがとうございます。
今回は番外編計画のお知らせだけ書きたかったのですけれど、その話を書くために前半を考えていたらこんな長さになりました。あうー。
番外編は本編で割と好いていただいたスピカに焦点を当てたお話を書くつもり。前からずっと書きたかったのですよ。うずうず。仕事が詰まってるのでいつになるか。コンテスト期間後かな。
こういう軽い文章ならささっと書きやすいんですけど。
ただし番外編、完璧に姉妹編のネタバレになるのです。もう究極的なネタバレもいいところ。でも書きたい。
今週、書き終わってから例の如く車内とかで読む方に回っています。
溜まっていた長編も読み進め中。コメントが狂っていてごめんなさい。はまりすぎるほどコメントが崩壊します。失礼だったらご指摘ください。
新たにレビューを書いた作品は詩一@シーチ様の作品。
本とみみたぶ、あとラブソング/詩一@シーチ
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892705618/reviews/1177354054893531168
登場人物の中に入って世界を見ている気がします。
兄編のPVとお星様の数が姉妹編を上回りまして、2000PVを超えました。姉妹編の方もPVが伸びていて。嬉しいです。野々ちえさんからいただいたレビューに、姉妹編も合わせて読むとテンション上がるとおっしゃっていただけて、わお! と喜んでいます。
新たにフォローしてくださった方もいまして。ありがとうございます。すっごく嬉しいんですよ。姉妹編、やっぱり自分の中の思い入れが強過ぎちゃうんです。いかんいかん。
そんな感じで(だからどんな感じ)、スピカが寂しくなくなるお話を書く予定です。
前置きの前半も、そろそろ執務室から出ましょうかね。
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